嚥下困難加算 廃止と自家製剤加算

嚥下困難加算 廃止で薬局の算定と現場対応はどう変わるのか、背景と代替の自家製剤加算、患者安全まで整理し、明日からの運用に落とし込める内容になっていますが、あなたの薬局では説明と記録をどう設計しますか?

嚥下困難加算 廃止と自家製剤加算

嚥下困難加算 廃止の要点
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何が廃止され、何に一本化されたか

「嚥下困難者用製剤加算」は廃止され、飲みやすくするための製剤上の調製の評価は「自家製剤加算」に一本化された。

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現場で増えるのは“調製の質”と“記録の質”

粉砕・脱カプセル・簡易懸濁などは手技だけでなく、適否判断(剤形設計、相互作用、安定性)と服薬支援の説明・記録が重要になる。

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独自視点:事故予防は「加算」より「情報設計」

嚥下困難の背景は脳血管障害・認知症・フレイルなど多様で、誤嚥リスクや投与経路変更の事故は情報の断絶で起きやすい。薬局内・多職種間の共有設計が安全性を左右する。

嚥下困難加算 廃止の改定ポイントと背景

令和6年度の調剤報酬改定では、「薬剤調製料における薬剤調製行為の評価を整理する観点から、嚥下困難者用製剤加算を廃止し、飲みやすくするための製剤上の調製を行った場合の評価を自家製剤加算での評価に一本化」する方針が示されています。
この一文は、現場感覚では「嚥下困難の患者が減ったから」ではなく、「同じような調製行為を複数の枠で評価していた構造を整理する」という制度側の都合が大きい、と読み解くのが自然です。
つまり“嚥下困難”という患者課題自体は残り続ける一方で、算定の入口が変わっただけなので、薬局業務としては服薬支援の必要性が下がるわけではありません。
ここで注意したいのは、現場で「嚥下困難加算が廃止=嚥下困難対応は評価されない」と短絡しやすい点です。


参考)https://www.semanticscholar.org/paper/f12705f8104e03d158f015e88cb6e4a7a12c4a50

実際は、飲みやすくするための製剤上の調製の評価が“自家製剤加算側に集約された”という整理であり、適切な調製と安全管理が前提になります。

改定資料が繰り返し「概要資料なので詳細は告示・通知で確認」と注意書きしている点も、現場は必ず一次情報(告示・通知・疑義解釈)に当たり、ローカル運用を作る必要がある、というメッセージです。

嚥下困難加算 廃止後の自家製剤加算の考え方(粉砕・脱カプセル・簡易懸濁)

嚥下困難者用製剤加算が廃止された後は、「飲みやすくするための製剤上の調製」を行った場合の評価が自家製剤加算に一本化されます。
そのため、粉砕や脱カプセル、散剤化、簡易懸濁など、患者の服用を成立させるための“剤形の再設計”は、基本的に自家製剤加算の枠で整理して考えることになります。
ただし算定だけを目的に手技を選ぶと、嚥下困難患者で最も起こしやすい事故(誤嚥、詰まり、薬効の過不足、相互作用の顕在化)を増やします。
医療従事者向けに実務へ落とすなら、「自家製剤加算=粉砕してOK」ではなく、次の観点で“適否判断→説明→記録→フォロー”まで一体化させるのが安全です。


  • ✅製剤学的に可能か:徐放性・腸溶性など、粉砕で薬物動態が崩れる設計は要注意(代替薬提案の余地)。
  • 投与経路は何か:経口(とろみ、ゼリー)なのか、経管(胃ろう・経鼻)なのかで最適解が変わる。
  • ✅介助者のスキル:家族・施設職員が扱える手順か、調製後の保管や分包は安全か。
  • ✅服薬後フォロー:むせ、残薬、眠気、転倒など“生活の中の副作用”を拾える設計か。

なお、制度資料上は「供給不足によりやむを得ず錠剤を粉砕等する場合でも加算が算定できるよう見直し」とも記載があり、嚥下困難“だけ”が理由ではない調製も制度上整理されていることが分かります。

この点は意外に見落とされがちで、今後は「嚥下困難」と「供給不足」「規格統一」「服薬アドヒアランス改善」などが同じ“調製評価”の枠に入ってくるため、薬局内で理由分類と記録テンプレを整備しておくと監査対応が楽になります。

嚥下困難加算 廃止後に必要な服薬指導と薬歴の書き方(独自視点:定型文を避ける)

改定資料では、薬剤服用歴(薬歴)の記載について「定型文を用いて画一的に記載するのではなく、指導等を行った保険薬剤師が必要事項を判断して記載すること」と明確に示されています。
嚥下困難対応は、まさに“個別性が高い”領域なので、テンプレ貼り付けだけだと、事故時に「判断の根拠が残っていない」状態になりやすいです。
ここはAI検出云々よりも、純粋に医療安全と監査耐性の両面で、具体性のある記録が強いです。
薬歴の最小構成(例)は、次のように「なぜ」「どうした」「どう伝えた」「どう追うか」を1セットで残すのが実務的です。


  • 📝患者背景:嚥下の困りごと(錠剤が喉に貼り付く、むせる、食後に咳が増える等)、食形態(とろみ有無)、介助者の有無。
  • 🧾調製内容:粉砕/脱カプセル/一包化/簡易懸濁のどれか、対象薬剤、同時に避けたこと(徐放錠は変更提案など)。
  • 📣説明内容:服用手順(ゼリー使用、先に水分、投与順)、保管、誤嚥時の対応(中止し受診など)。
  • 🔁フォロー計画:次回来局・電話で確認する項目(むせ、残薬、眠気、ふらつき、便秘、効果不足など)。

特に嚥下困難では「体調変化(副作用が疑われる症状など)」「残薬の状況」「生活像」の把握が薬学管理として重要項目であることが、薬学管理料の通則に整理されています。

嚥下しづらい患者ほど“飲めていない”ことを本人が言語化できないケースがあるため、残薬・服用手順・介助状況をセットで確認するのが事故予防として効きます。

嚥下困難加算 廃止と多職種連携(医療DX・介護支援専門員への情報提供)

嚥下困難の患者は、医師・歯科・ST・栄養・看護・介護が絡むことが多く、薬局からの情報提供が治療成績と安全性を左右します。
令和6年度改定では、薬局側でも医療DX推進体制整備加算など、オンライン資格確認等で得た情報を閲覧・活用して調剤する体制整備が評価対象として整理されています。
この流れは、嚥下困難のように“薬を飲めるかどうかがアウトカムを決める”領域で特に相性が良いです。
また、介護支援専門員への情報提供についても評価が新設され、薬学的評価シートの活用など参照先が提示されています。

嚥下困難では「薬の飲ませ方」だけでなく、「眠気で食事が進まない」「抗コリン負荷で口渇が悪化し嚥下がつらい」「ふらつきで食事姿勢が保てない」など、生活に出る問題が連鎖しやすいので、ケアプラン側へ“観察ポイント”を渡す意義が大きいです。

薬局からの情報提供は、単なる服薬状況報告ではなく、「嚥下の障害がある人が薬を飲める環境を作る」提案(服薬カレンダー、剤形変更提案、分包設計)として伝えると、多職種の動きが変わります。

嚥下困難加算 廃止で見落としやすい意外な論点(供給不足と“調製の理由”の二重化)

意外に現場で混ざりやすいのが、「嚥下困難への配慮で粉砕するケース」と、「供給不足や規格都合でやむを得ず粉砕・変更するケース」です。
改定資料には、嚥下困難者用製剤加算の廃止と一本化だけでなく、「供給不足によりやむを得ず錠剤を粉砕等する場合でも加算が算定できるよう見直し」という趣旨も記載されており、調製評価が“理由の違うケース”を包含する方向に動いています。
この結果、薬局内のオペレーションとしては「調製の理由(嚥下困難/経管投与/供給不足/アドヒアランス改善など)」「調製の内容(粉砕/脱カプセル/懸濁等)」「代替提案の有無(処方医照会の要否)」を分けて整理しないと、説明も記録もブレます。
実務の工夫としては、受付〜調製〜鑑査〜交付のどこかで、次の“チェック欄”を一行で残すだけでも、後日の説明可能性が上がります。


  • 🧩理由:嚥下困難/経管/供給不足/その他
  • 🧩リスク:徐放・腸溶・刺激性・苦味・光/湿気不安定の有無
  • 🧩対応:処方医照会(済/未)、代替薬(提案/不採用理由)
  • 🧩介助者:家族/施設/本人、手順書交付(有/無)

制度は「一本化」でシンプルになった一方、患者の嚥下課題は複雑なので、薬局側は“情報のタグ付け”で事故と監査を同時に防ぐ、という方向に進むのが現実的です。

嚥下困難者用製剤加算の廃止・自家製剤加算への一本化(一次資料・厚労省資料の該当箇所)
厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】」(嚥下困難者用製剤加算の廃止と自家製剤加算への一本化)
薬歴(薬剤服用歴)記載で「定型文を避ける」等の考え方(該当箇所)
厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】」(薬剤服用歴の記載:定型文で画一化しない旨)