フィッシャー比とは 肝硬変 分岐鎖アミノ酸 芳香族アミノ酸 予後

フィッシャー比は肝硬変で低下しやすい栄養指標ですが、なぜ下がり、どこまでが危険域で、BCAA補充や評価のコツは何なのでしょうか?

フィッシャー比とは 肝硬変

フィッシャー比とは 肝硬変:臨床で迷わない要点
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定義は「BCAA/AAA」

分岐鎖アミノ酸(BCAA)と芳香族アミノ酸(AAA)のモル比で、肝不全で低値になりやすい指標です。

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目安は「1.8未満」

肝炎・肝硬変・肝性脳症などで低下し、1.8を下回ると治療が施されることがある、と整理されます。

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栄養と治療に直結

BCAA補充(経口・経腸・静脈)がアミノ酸バランス是正に用いられ、評価は単一指標で完結しません。

フィッシャー比とは 肝硬変での定義と基準値(BCAA/AAA)


フィッシャー比は、分岐鎖アミノ酸(BCAA:イソロイシン・ロイシン・バリン)と芳香族アミノ酸(AAA:チロシン・フェニルアラニン)のモル比(BCAA/AAA)です。血中アミノ酸プロファイルを一つの数値に圧縮した「アミノ酸インバランスの温度計」と捉えると現場で説明しやすくなります。


健常者ではフィッシャー比は概ね3〜4(別資料では約3.5)で比較的一定とされます。つまり、健康な状態ではBCAAが相対的に優位で、筋肉や臓器がエネルギー・蛋白合成に使える“余力”がある構図です。


一方、肝硬変では(特に非代償期で)1.0以下を示すことがある、と栄養学の解説でも整理されています。また、肝不全(肝炎・肝硬変・肝性脳症など)では低値を示し、1.8を下回ると治療が施される、という目安が薬学用語の解説として明記されています。


ここで重要なのは、フィッシャー比は「病名の診断」そのものというより、肝機能低下に伴う代謝の偏り(何が不足し、何が溜まっているか)を示す指標だという点です。肝硬変の診療では、腹水・脳症・出血傾向など“症候”が前面に出ますが、フィッシャー比はその土台にある栄養・代謝の破綻を数値で見える化する役割を担います。


臨床でありがちな誤解は「フィッシャー比が低い=即、肝性脳症」と短絡することです。実際には、脳症の有無は意識状態、羽ばたき振戦、誘因(感染・便秘・消化管出血・脱水・過量の利尿薬など)、アンモニア、電解質など複数因子で決まります。フィッシャー比は“背景因子の一つ”として読み、他の所見と束ねて判断するのが安全です。


用語の使い分けも整理しておくと、患者説明や他職種連携がスムーズになります。


・BCAA:バリン、ロイシン、イソロイシン
・AAA:フェニルアラニン、チロシン(文献によっては遊離トリプトファン等も言及されますが、比の定義としては上記2つが核です)
・フィッシャー比:BCAA/AAA(モル比)
さらに、検査実務としてはフィッシャー比ではなくBTR(総分岐鎖アミノ酸/チロシンモル比)が測定されることが多く、臨床的意義は同等と考えられている、とされています。現場で「フィッシャー比を見たい」と言われた場合、実際に返ってくる数値がBTRであるケースもあるため、検査名と計算式を確認しておくと混乱が減ります。


参考:フィッシャー比の定義、健常値、1.8未満の目安、BTRがよく使われる点(用語解説)
https://www.pharm.or.jp/words/word00950.html

フィッシャー比とは 肝硬変で低下する機序(芳香族アミノ酸・分岐鎖アミノ酸)

肝硬変でフィッシャー比が下がる本質は、「AAAが上がりやすい」ことと「BCAAが消費されやすい」ことが同時に起きる点です。分母(AAA)が増え、分子(BCAA)が減る方向に働くので、比は構造的に低下します。


薬学用語の解説では、肝機能低下により肝臓のアミノ酸代謝異常が起こり、チロシンやフェニルアラニンの血中への供給量が増えること、そして筋肉や心臓でBCAAが分解されることがフィッシャー比低下につながる、と説明されています。これは「肝がさばけないAAAが血中に滞りやすい」+「末梢組織でBCAAが使われてしまう」という二重の構図です。


栄養学の解説でも、肝硬変非代償期では肝機能低下に伴うタンパク質・アミノ酸代謝異常が出現し、フィッシャー比が1.0以下になることがある、とされています。非代償期では食欲低下、吸収不良、炎症、感染、反復する入退院などが重なりやすく、結果として筋肉量低下(サルコペニア)→BCAAの“貯金箱”が小さくなる、という臨床像とも整合します。


ここで押さえたいのは「筋肉=代謝臓器」という視点です。肝硬変では肝臓の代謝余力が落ちるため、筋肉側が窒素代謝やエネルギー代謝を肩代わりする局面が増えます。その結果、BCAAは筋で消費されやすく、血中では相対的に低下しやすくなります。つまりフィッシャー比の低下は、肝臓単体の問題というより、肝臓と骨格筋の“役割分担の破綻”のサインとして読むと理解が深まります。


臨床での説明例(スタッフ向けの共有に便利)。
・肝硬変でAAAが増える:肝で処理しきれない(分母↑)
・肝硬変でBCAAが減る:末梢で使われやすい(分子↓)
・結果:フィッシャー比が下がり、アミノ酸インバランスが進む
意外と見落とされるのは、同じ「肝硬変」でも病勢や合併症で比の“動き方”が違う点です。例えば感染や消化管出血などのストレスイベントでは、筋分解が進みBCAAの需給が急に悪化することがあります。数値の単発評価よりも、イベント前後での変化(トレンド)を追うほうが臨床的に示唆が出る場面があります。


参考:肝機能低下でAAA増加・BCAA分解が進みフィッシャー比が低下する点(用語解説)
https://www.pharm.or.jp/words/word00950.html
参考:フィッシャー比=BCAA/AAA、健常約3.5、非代償期に1.0以下になりうる点(栄養学の解説)
https://www.nutri.co.jp/nutrition/keywords/ch2-3/keyword4/

フィッシャー比とは 肝硬変と肝性脳症・予後の読み方(1.8未満)

フィッシャー比は肝不全で低下し、肝炎・肝硬変・劇症肝炎・肝性脳症などで低値になりやすい指標とされています。特に1.8を下回ると治療が施されることがある、という具体的な閾値が示されている点は、医療従事者向けに説明する際の“共通言語”になり得ます。


ただし、1.8という数字は「この値なら必ず症状が出る」ではなく、「代謝の偏りが治療介入の検討域に入った」くらいの意味合いで捉えるほうが安全です。肝性脳症の評価は、意識レベルや神経学的所見、誘因の有無、アンモニア値、電解質、便通状況など多面的です。


臨床で役立つ読み方を、あえて“目的別”に分けると整理しやすくなります。


・栄養評価:蛋白摂取の質(BCAAの相対不足)を示唆し、介入の方向性をつくる
・治療選択:BCAA補充(経口・経腸・静脈)を考える材料の一つになる
・リスク把握:脳症、低栄養、筋量低下が重なっていないかを疑う入口になる
また、フィッシャー比は“予後そのものを単独で決める指標”ではありませんが、栄養状態や合併症の連鎖に関わるため、結果として予後に影響しうる領域を反映します。例えば、低栄養→低アルブミン→腹水・浮腫→活動性低下→筋量低下→さらにBCAA不足、というループの中で、フィッシャー比は早い段階で歪みが見えることがあります。


現場で共有しやすい注意点(ヒヤリ対策)。
・フィッシャー比が低い患者に急な絶食や蛋白制限が入ると、筋分解が進みやすい(※蛋白制限の是非は病態に依存)
・利尿薬増量、下痢、脱水で電解質が崩れると、脳症リスクが上がることがあるため、数値だけでなく経過をセットで見る
・入院中の食事摂取量低下は数日で筋量に影響しうるため、早めに栄養介入の相談につなぐ
フィッシャー比という“代謝の地図”を持っておくと、脳症の治療(ラクツロース等)だけに視野が狭くならず、栄養・筋肉・肝機能をつないで診る動機づけになります。医療者間コミュニケーションでも「アミノ酸インバランスが強い」ことを、短いフレーズで共有できるメリットがあります。


参考:肝不全で低値、1.8未満で治療が施されることがある点(用語解説)
https://www.pharm.or.jp/words/word00950.html

フィッシャー比とは 肝硬変の栄養療法:BCAA製剤・経腸栄養・静脈内投与

フィッシャー比の是正のために、BCAAを主とした特殊組成アミノ酸製剤を用い、静脈内投与によってアミノ酸バランスを補正する、とされています。つまりフィッシャー比は「測って終わり」ではなく、治療選択(少なくとも考え方)に接続されている指標です。


栄養療法としてのBCAAは、いわゆる“筋肉の材料”というより、肝硬変では「代謝の穴を埋める燃料・基質」としての意味合いが前に出ます。臨床では、食事だけで不足を埋めるのが難しい局面(食欲不振、蛋白摂取が進まない、脳症で食事調整が必要など)で、BCAA補充が選択肢になります。


実装上のポイントを、現場の動きに寄せてまとめます。


・経口:飲める患者では継続性が高く、退院後の管理にもつなげやすい
・経腸:経口摂取が不十分なときに、必要量を確保しやすい
・静脈:急性増悪や経口・経腸が難しい局面で、短期的に代謝バランス補正を狙える
また、検査としてはBTRが用いられることが多い、とされている点も実務的に重要です。施設によっては「フィッシャー比は測れないがBTRは出せる」など運用が分かれるため、栄養介入の前後でどの指標を追うかを統一しておくと、カンファレンスでの解釈が揃います。


意外な落とし穴として、BCAA補充は“入れればOK”ではなく、患者の全体像(腎機能、電解質、血糖、摂取エネルギー、便通、感染、活動量)とセットで効果が出やすい点があります。例えば、エネルギー不足のまま蛋白・アミノ酸だけを上乗せすると、体はそれを「燃やす」方向に回してしまい、狙い通りに合成へ向かわないことがあります。数値改善と臨床改善がズレたときは、摂取エネルギーと炎症イベント(感染など)を見直すとヒントが出やすいです。


ケアの観点では、患者教育も重要です。


・「蛋白=悪」ではなく、病態に合わせて“質と量”を調整する
・BCAAは“サプリ”というより治療の一部で、自己判断で中断しない
・食事摂取量が落ちたら早めに相談する(筋量低下が進む前に介入)
参考:BCAA主体の特殊組成アミノ酸製剤、静脈内投与で補正、BTRが測定されやすい点(用語解説)
https://www.pharm.or.jp/words/word00950.html

フィッシャー比とは 肝硬変での独自視点:BTRを“筋肉量”の間接サインとして扱うコツ

このセクションは検索上位で定型化しがちな「定義→低下→BCAA」の流れから一歩進め、チーム医療で使える“運用の工夫”を独自視点として整理します。ポイントは、フィッシャー比(またはBTR)を「肝機能だけの指標」としてではなく、「筋肉量・摂取量・炎症イベントを映す鏡」として扱うことです。


栄養学の解説では、BCAAは肝臓で利用できないため全身組織へ運ばれ、筋肉が取り込み・代謝を行う、と説明されています。つまりBCAAの需給は、肝機能だけではなく“筋肉がどれだけ残っているか、どれだけ動いているか”にも影響されやすい、という前提が成り立ちます。


ここから臨床の工夫として、次のような読み替えができます。


・BTR(またはフィッシャー比)が急に下がった:肝機能悪化だけでなく、食事摂取低下、感染、消化管出血、入院による廃用など「筋肉が削られるイベント」を疑う
・BCAA補充しても比が上がりにくい:投与量の問題に加え、エネルギー不足・炎症持続・活動性低下がないか確認する
・比が改善してもADLが落ちる:数値の改善と筋機能の改善は別物なので、リハビリ介入や蛋白・エネルギー全体設計が必要
“意外な情報”として強調したいのは、フィッシャー比の議論はアミノ酸の話に見えて、実は「肝臓と筋肉の分業」をどう支えるか、という全身管理の話だという点です。肝硬変診療は臓器別に見える一方で、入院を繰り返す患者では筋量低下が予後やQOLに直結し、結果として代謝指標も悪化しやすい、という循環が起きます。フィッシャー比(BTR)をその循環の“早期警報”として使えると、検査の価値が一段上がります。


現場での具体例(チームで共有しやすいテンプレ)。
・「BTR低下+食事摂取↓」→栄養介入を前倒し(必要量の再設計)
・「BTR低下+感染徴候」→感染評価と同時に、蛋白・エネルギーの確保策を検討
・「BTR低下+歩行量↓」→廃用の可能性、早期離床・リハビリ相談
最後に、検査依頼・結果説明の言葉づかいも整えると説得力が増します。


・患者向け:『体のたんぱく質の材料のバランスが崩れていないかを見る検査です』
・スタッフ向け:『アミノ酸インバランス(BCAA/AAA)が進んでいるので、栄養と筋肉を含めて介入を考えたいです』
参考:BCAAは肝で利用されにくく全身(筋肉)へ運ばれ代謝される点、フィッシャー比=BCAA/AAA、非代償期で低下しうる点(栄養学の解説)
https://www.nutri.co.jp/nutrition/keywords/ch2-3/keyword4/




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