
人工呼吸には大きく分けて3つの役割があります 。第一に酸素化の改善で、これはPaO2やSO2を改善させることです。第二に換気の改善であり、人工呼吸器の世界で換気といえばPaCO2の改善(適正化)を指します 。第三に呼吸仕事量の軽減で、何らかの原因で呼吸不全になり呼吸筋の疲労が生じている場合、または呼吸に対して患者が非常に努力を要する状態を軽減させる目的で使用されます 。
人工呼吸器は呼吸不全の原因疾患を治療する際に、呼吸の保助を目的とした人工呼吸療法で用いられます 。しかし、重要な点は人工呼吸器自体がARDSや肺炎を直接的に治療するわけではないということです 。私たちは息を吸う際、呼吸筋を使って肺の周りの空間を押し広げ、肺に陰圧を作り出していますが、人工呼吸器は気道に陽圧をかけることで空気を送り込む仕組みです 。
参考)https://knowledge.nurse-senka.jp/225918/
人工呼吸器は大きく**IPPV(侵襲的陽圧換気)とNPPV(非侵襲的陽圧換気)**に分類されます 。IPPVは気管挿管チューブなどの人工気道を留置して換気を行う方法で、一般的に「人工呼吸器」というときはこの侵襲的陽圧換気を指します 。挿管や気管切開などにより人工気道に接続するものがあります 。
参考)https://jaca2021.or.jp/news/artificial-respiration/
NPPVは気管挿管や気管切開といった侵襲的な気道確保を行わずに、鼻マスクや顔マスクを介して陽圧換気を行う治療法です 。NPPVのメリットとして侵襲度が低い、人工呼吸器関連肺炎(VAP)や肺の圧損傷といった合併症が少ないことが挙げられます 。一方、デメリットとしては呼吸の改善効果が確実ではない、気道と食道が分離できない(気道確保ができない)点があります 。
NPPVのモードには、自発呼吸を感知して作動するSモード、自発呼吸とは無関係に作動するTモード、ベースはSモードで自発呼吸に合わせて作動するが呼吸を感知しなくなるとTモードに切り替わるS/Tモードなどがあります 。
人工呼吸器の仕組みを理解するには、まず正常な呼吸運動との違いを知ることが重要です 。私たちの肺は自分自身を膨らませることはできず、肺が収まっている胸郭を広げることによって肺を膨らませています 。人間の呼吸では呼吸筋を使って肺の周りの空間を押し広げ、肺に陰圧を作り出し、空気は圧の低い方向に移動するため大気から肺に空気が流れ込みます 。
参考)https://www.imimed.co.jp/int/spot/medica_202306/
これに対して人工呼吸器は「陽圧で空気を押し込む」仕組みで動作します 。人工呼吸器自体が高い圧をつくって肺に空気を押し込んでいるのが特徴で、この陽圧換気こそが人工呼吸器の最大の特徴であり、人間の呼吸にない作用をもたらします 。
人工呼吸器は呼気回路と吸気回路に分かれており、吸気回路では機械から送られてきた空気を加温加湿器を通し、加湿された状態で患者に送ります 。酸素化はFiO2とPEEP、二酸化炭素濃度は一回換気量と換気回数によって規定されます 。
一般的な人工呼吸器の開始基準として、以下の3点が挙げられます 。①十分な酸素療法下でPaO2が60Torr未満、②換気量の低下(急性呼吸性アシドーシス)、③意識レベルの低下、奇異呼吸、呼吸困難です 。厚生省特定疾患呼吸不全調査研究班による診断基準では、室内気吸入時の動脈血O2分圧が60mmHg以下となる呼吸障害またはそれに相当する呼吸障害を呼吸不全としています 。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)増悪の場合、以下の1項目以上が該当すればNPPVの適応となります 。①呼吸性アシドーシス(動脈血pH≦7.35またはPaCO2≧45Torr)、②呼吸補助筋の使用、腹部の奇異呼吸、肋間陥没など、呼吸筋疲労または呼吸仕事量の増加が示唆される臨床徴候を伴う重度の呼吸困難です 。
参考)https://www.kango-roo.com/learning/3186/
気管挿管下人工呼吸の適応には、NPPVが受け入れられない、または失敗した場合、呼吸停止または心停止、意識低下またはあえぎ呼吸を伴う呼吸停止、大量の誤嚥、気管分泌物を除去できない場合などがあります 。
人工呼吸器からの離脱、つまり器械による強制換気から自発呼吸(自然呼吸、呼吸筋のトレーニング)に慣れさせる訓練をウィーニングといいます 。ウィーニングは大きく3段階に分けられます:①鎮静からの離脱、②人工呼吸器によるサポートからの離脱、③人工気道からの離脱です 。
参考)https://knowledge.nurse-senka.jp/203703/
従来は換気モードをA/C(強制換気)からSIMV+PS、SIMVに切り替えて換気回数を減少させていましたが、最近ではウィーニング期間が延びることを防ぐために、SIMV+PS、SIMVを省き、A/CからCPAPへと変更することが多くなっています 。3週間以上の長期人工呼吸器装着患者に対しては、徐々に離脱時間を延長していくよう計画的に離脱訓練を進めていきます 。
自発覚醒トライアル(SAT)/自発呼吸トライアル(SBT)プロトコルを運用し、抜管が可能かどうか毎日評価することが重要です 。人工呼吸が長期化すると離脱も困難になるため、できるだけ早く離脱することが重要とされています 。
参考)https://www.imimed.co.jp/int/spot/medica_202308/
人工呼吸器関連肺炎(VAP)は肺内に細菌を流入させてしまうことによって起こる医原性の肺炎です 。VAP予防は、肺内に細菌を流入させないよう感染対策を充実させることや、早期抜管を目指すことが重要です 。
基本的な予防策として、手指衛生の徹底が感染対策の基本となります 。肺への細菌流入予防として、カフ上部吸引付き気管チューブの使用、適切なカフ圧の維持(20~30cmH2O)、口腔ケアによるバイオフィルムの機械的除去、30~45°の頭部挙上の維持が推奨されています 。
気管切開による合併症には、術中・早期・晩期の合併症があります 。出血、気管切開部位の感染、肺炎、気管切開チューブの事故抜去、気管狭窄などが主な合併症として挙げられます 。特に出血、気道閉塞、事故抜去に注意が必要で、出血予防は気管切開チューブ入れ替え時のケア、気道閉塞予防はケアに伴うずれ、事故抜去予防は確実な固定がポイントです 。
参考)https://www.mera.co.jp/column/9767/
人工呼吸器回路の管理では、明らかな汚染や機械的損傷がない場合は7日以内の定期的な交換をしないこと、結露液の排出時は手袋を着用し回路内の汚染が最小限にとどまるよう注意することが重要です 。