医療現場で「甘草一日量上限」を考えるとき、まず押さえるべきなのは“上限が常に一つに固定された数字として存在するわけではない”という点です。
実際、厚生省(当時)の通知「薬発第一五八号」では、一般用医薬品(経口剤)に対し、グリチルリチン酸は一日最大配合量200mg、甘草は一日最大配合量5gという基準が示されていました。さらに、複数成分を同時配合する場合は、各成分の「配合量÷一日最大配合量」の合計が1を超えないこと、という計算ルールまで明記されています。
一方で、同通知は医療用医薬品側について「一日最大配合量がグリチルリチン酸として100mg以上、または甘草として2.5g以上」など、いわば“リスク層別”として使用上の注意(禁忌・副作用・相互作用)を追加記載する枠組みを示しています。
つまり、現場実務での「上限」は、単に5g・200mgを丸暗記するよりも、添付文書や注意喚起に出てくる境界値(甘草2.5g、グリチルリチン酸100mg・40mgなど)をトリガーとして、より慎重なモニタリングに移る“運用の上限”として理解した方が安全です。
加えて同通知の「副作用情報の概要」には、偽アルドステロン症はグリチルリチン酸等の投与中止後に緩解している例が多いことも書かれています。これは医療従事者にとって重要で、早期発見できれば重篤化を避けられる可能性がある、というメッセージとして読み取れます。
根拠(上限・閾値・禁忌・相互作用・副作用の追加記載の原文を確認できます)
厚生労働省通知:薬発第一五八号「グリチルリチルリチン酸等を含有する医薬品の取扱いについて」
「甘草一日量上限」が問題になる臨床上の理由は、最終的に偽アルドステロン症(低カリウム血症を含む)を起こし得る点にあります。通知の使用上の注意事項では、電解質代謝として低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加などが列挙され、神経・筋肉として脱力感、四肢痙れん・麻痺などにも言及されています。
医療者としては「患者が“足がつる・だるい”と訴えた」程度の情報でも、甘草・グリチルリチン系の曝露があるなら、血清カリウム(K)を早めに当てにいく判断が必要です。症状が曖昧でも、K低下は見逃すと不整脈リスクや転倒リスクに直結します。
メカニズムは教科書的には、甘草成分由来のグリチルレチン酸(GA)などが腎尿細管の11β-HSD2を阻害し、コルチゾールが鉱質コルチコイド受容体に作用してしまう、という理解が広く共有されています。能勢らの解説では、この機序が整理されており、さらに肝機能障害などで代謝物(3MGA等)が関わる可能性にも触れつつ、基本はGAが原因化合物と考えられている、という現実的なまとめ方をしています。
重要なのは「上限に達したら必ず発症する」ではなく、「曝露量・期間・患者背景で発症しやすさが変わる」ことです。通知でも、長期(1か月以上)使用での報告があること、さらに高用量が多いが半量程度でも発現例がある、と書かれており、単純な用量だけで安全が保証されないことが示唆されます。
目安として患者説明に使える症状チェック(外来・病棟での拾い上げ向け)
“上限管理”を実務に落とし込むなら、禁忌と相互作用のチェックが最も効果的です。薬発第一五八号の「別添1」では、甘草2.5g以上またはグリチルリチン酸100mg以上の医療用医薬品について、アルドステロン症、ミオパチー、低カリウム血症の患者には投与しないこと(禁忌)を追加記載する、と明確に示されています。
つまり、患者がもともと低K傾向(食事摂取不良、下痢、利尿薬、慢性心不全、腎疾患など)を持っている場合、甘草含有製剤を“普通に出す”こと自体がリスクになります。
相互作用についても、同通知ではフロセミド、エタクリン酸、チアジド系利尿薬との併用で血清カリウム値低下が起こりやすくなる、と記載されています。現場では利尿薬の種類が変わるだけでなく、ステロイド、下剤乱用、β刺激薬の使用、インスリン導入など、Kが動く場面が多いので、「甘草が入っている」だけで処方全体のK変動耐性が下がる、と捉えるのが安全です。
チェックのコツ(処方監査・疑義照会の観点)
医療用漢方の添付文書で頻出する「甘草2.5g以上」というラインは、単なる数字ではなく、注意事項の“書き分けの境界”として機能しています。薬発第一五八号の別添1では、医療用医薬品について、甘草2.5g以上(またはグリチルリチン酸100mg以上)では禁忌や相互作用を含めて強い注意喚起を付し、1g以上2.5g未満(または40~100mg未満)では「長期連用により…偽アルドステロン症があらわれることがある」といった形で注意喚起の強度が変わる構造になっています。
この構造を理解していると、添付文書を読むときに「この製剤は“高リスク側の書式”で書かれているか?」を一瞬で判定でき、監査の優先順位付けがやりやすくなります。
また、現場で起きがちな落とし穴は「患者が“甘草=漢方”と思っていない」ことです。通知の副作用情報の概要にも、甘草成分は漢方だけでなく抗アレルギー剤、肝疾患用剤、胃腸薬、鎮咳去痰薬など幅広い領域で用いられ、矯味剤としても使われる、と整理されています。つまり、患者が別の診療科や市販薬で摂っている甘草・グリチルリチンが“見えない形で積み上がる”可能性があります。
そのため、甘草一日量上限の運用は「処方内のg計算」だけで完結させず、患者のOTC利用、のど飴・健康食品、複数医療機関受診なども含めた曝露の全体像を確認するのが、医療従事者向け記事としての実用性につながります。
検索上位の多くは「甘草○gが危ない」「グリチルリチン○mgが目安」と、量の話に集中しがちですが、現場で“意外に効く”のは「同じ甘草量でも、処方(=煎じ液の条件)でグリチルリチン(GL)含量が変動し得る」という視点です。
能勢らの解説では、甘草配合漢方処方におけるGL含量は概ね甘草量に比例する一方、小青竜湯では五味子の影響で煎じ液pHが低下し、GLの抽出効率が大きく下がることが示されています。さらに、GL含量の予測には、甘草配合量だけでなくpH(インタビューフォームに記載され得る)などの情報が有用になり得る、という提案まで含まれています。
この話は「甘草g換算で一律に安全・危険を断定しない」ことの根拠にもなりますし、逆に言えば「甘草量が少ないから安心」と早合点しない姿勢にもつながります(個体差、腸内細菌、代謝、併用薬、肝機能など、揺れを作る要素は多い)。
実務への落とし込み例(病棟カンファでそのまま使える言い回し)
参考:処方間でGL抽出効率が変わる背景(pH、五味子など)を確認できます
解説PDF:漢方エキス製剤の安全使用について ~甘草配合処方について考える~(能勢充彦)
⚙️現場向け:甘草一日量上限の“運用フロー”ミニ版(外来・調剤・病棟共通)
🧾メモ(患者指導で誤解が起きやすい点)

カンゾウ甘草片 甘草 厳格な手摘み 旬の時期に収穫 無添加 甘草片 甘茶 甘草茶 甘草湯 カンゾウ 理の甘味料として 中国茶 花茶 漢方 養生茶 花草茶(100 g*2缶)