他動的ROMexを毎日丁寧に続けても、すでにある拘縮は改善しないケースが9割以上あります。 pt-ot-st(https://www.pt-ot-st.net/index.php/bbs/detail/4245)

関節可動域訓練(ROM exercise:ROMex)は、関節に可動域制限がある、あるいは制限が生じるリスクがある患者に対して実施する訓練の総称です。 目的は拘縮の予防・改善、筋萎縮の抑制、循環促進、疼痛軽減など多岐にわたります。 co-medical.mynavi(https://co-medical.mynavi.jp/contents/therapistplus/career/useful/23452/)
ROMexは大きく以下の3種類に分類されます。 co-medical.mynavi(https://co-medical.mynavi.jp/contents/therapistplus/career/useful/23452/)
- 自動関節可動域訓練(AROMex):患者が自力で関節を動かす。MMT3以上が目安
- 自動介助関節可動域訓練(AAROMex):セラピストが補助しながら患者自身も動かす。MMT3未満が主な対象
- 他動的関節可動域訓練(PROMex):セラピストや看護師が関節を動かす。自発的な運動が不可能な場合に使用
これが基本の3分類です。
それぞれの違いを整理すると、患者の「能動的な参加度」が異なります。自動運動(AROMex)は患者が主体であり、筋収縮の促通・維持にも寄与します。 自動介助(AAROMex)は補助量を徐々に減らせるため、回復段階に合わせた段階的な介入が可能です。 stroke-lab(https://www.stroke-lab.com/news/21091)
| 種類 | 主な対象(MMT目安) | 筋収縮への効果 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| AROMex(自動) | MMT3以上 | あり | 患者が自力で実施。筋力維持にも有効 |
| AAROMex(自動介助) | MMT3未満 | あり(補助付き) | 回復段階に応じた補助量の調整が可能 |
| PROMex(他動) | 自動運動が不可 | なし | 拘縮予防・循環改善が主目的 |
処方があるからといって、無条件にROMexを実施してよいわけではありません。 禁忌を見落とすと、炎症の悪化や骨折、CRPS(複合性局所疼痛症候群)を引き起こすリスクがあります。 physioapproach(https://physioapproach.com/blog-entry-520.html)
ROMexの主な適応:
- 🧠 脳卒中後の麻痺(関節拘縮の予防・改善)
- 🦴 骨折・術後リハビリ(関節の硬直予防)
- 🔴 関節リウマチ・変形性関節症(柔軟性の維持)
- 🛏️ 長期臥床による廃用症候群(筋萎縮・拘縮の防止)
ROMexの主な禁忌:
- 急性炎症期の関節(化膿性関節炎、関節リウマチ急性期など)
- 骨折直後・骨脆弱状態(重度骨粗鬆症)
- 急性期の深部静脈血栓症(血栓塞栓リスク)
- 強い疼痛を伴う状態(CRPS誘発リスク)
禁忌への注意が原則です。
粗暴なROMexは繰り返す痛み刺激となり、末梢神経から中枢神経系まで変化をきたしてCRPSを発症させる可能性があることが指摘されています。 疼痛は「止めるサイン」であり、「頑張れば治る」という考えは危険です。強い痛みがある状態での強制的なROMexは禁忌に準ずると考えましょう。 physioapproach(https://physioapproach.com/blog-entry-520.html)
「毎日丁寧に他動運動をすれば拘縮は防げる・改善できる」と思っていませんか?これは要注意です。
オーストラリアの無作為化比較試験では、ICU患者の体の半分にだけ1日2回・最大4週間のROMexを実施した結果、足首・手首の伸展可動域は「ROMexをしなかった側」と有意差がなく、拘縮・疼痛にも改善差がなかったと報告されています。 つまり、他動的ROMexが拘縮の予防・改善に効果を発揮するというエビデンスは、現時点で必ずしも強くありません。 rishou(https://www.rishou.org/activity/evidence-20240113)
参考:ICU患者へのROMexエビデンスに関する解説
【ROMは効果がない!?】Dr中西の離床面白エビデンス|日本離床学会
さらに、ストレッチのみを長期継続しても「拘縮の可動域改善には結びつかない」という研究報告もあります。 他動運動で動かしているとき、患者は筋で制御していない状態です。 そのため、可能なかぎり自動介助運動へ移行することが、機能回復の観点からも推奨されます。これは大きな視点の転換です。 noutosekizui(https://noutosekizui.com/stretch-effect/)
自動介助運動(AAROMex)は、単に「少し動ける患者向けの他動」ではありません。 他動運動とは明確に異なる治療的意義があります。 kanaeru-reha(https://kanaeru-reha.com/archives/533)
① 可動域改善と疼痛軽減の同時達成
② 拮抗筋の防御収縮を抑える神経学的効果
同研究(active CKC)では、膝屈曲を阻害する大腿直筋・内側広筋の筋活動が有意に低下し(p<0.01)、屈筋である半腱様筋の活動が有意に増加した(p<0.01)と示されています。 他動運動では生まれないこの神経学的変化が、可動域拡大の鍵です。 cir.nii.ac(https://cir.nii.ac.jp/crid/1390001205576483840)
③ 自己効力感と心理面への好影響
「自分で動かせた」という成功体験は患者のモチベーションを高め、痛みへの恐怖感を和らげます。 特にTKA後など疼痛に敏感な時期には、心理的回復も含めた包括的な効果が期待できます。 note(https://note.com/jun_pt_/n/nf833f961c307)
自動介助運動への早期移行が条件です。
ROMexの実施方法は種類によって異なりますが、共通して「痛みのサインを確認しながら、最終可動域までゆっくりと動かす」ことが基本です。 力任せに動かすことは厳禁です。 co-medical.mynavi(https://co-medical.mynavi.jp/contents/therapistplus/career/useful/23452/)
他動的ROMex(肩関節屈曲を例に):
1. 上腕近位部を一方の手で支持
2. 反対の手で前腕を保持
3. 疼痛を確認しながら最終可動域までゆっくり動かす
自動介助ROMex(AAROMex):
1. 患者に動かしたい方向を伝え、意図的な収縮を促す
2. セラピストはその動きを誘導・補助する(ただし「一緒に動かすだけ」は不十分)
3. 補助量を徐々に減らして自動運動への移行を図る
「楽にしてください」の声かけだけでは不十分ということですね。 cir.nii.ac(https://cir.nii.ac.jp/crid/1390001205576483840)
参考:ROMexの実施方法を動画で確認できる看護技術サイト
関節可動域訓練(他動運動・自動運動) | 動画でわかる看護技術 | 看護roo!
ROMexの種類を選ぶとき、多くのセラピストは「今の筋力」だけを基準にしています。しかし、もう一つ重要な視点があります。それは「この運動がADLに繋がっているか」という問いです。 lts-seminar(https://lts-seminar.jp/2019/07/05/ohtsuka-188/)
他動運動→自動介助運動→自動運動という段階は、単なる「難易度の段階」ではありません。「意識的な関節制御」から「無意識的な日常動作への応用」に向かうプロセスです。 たとえば股関節の他動屈曲・伸展を訓練したあと、自動介助での起立・着座動作訓練を経て、「自分でトイレに行く」動作につなげる流れが理想的です。 lts-seminar(https://lts-seminar.jp/2019/07/05/ohtsuka-188/)
参考:ROMexをADLに結び付ける方法の解説
患者様の生活とROM練習を結び付けられない|LTS Seminar
種類の選択はゴール設定とセットが原則です。「何のために、いつまでに、どの動作ができるようにするか」を設定したうえでROMexの種類を選ぶと、漫然とした他動運動に費やす時間を減らし、患者の回復を加速できます。厚生労働省のリハビリ期限が年々厳しくなるなかで、このアプローチの重要性はますます高まっています。意外ですね。 lts-seminar(https://lts-seminar.jp/2019/07/05/ohtsuka-188/)
参考:関節可動域の標準的な測定基準(日本整形外科学会)
関節可動域表示ならびに測定法|日本リハビリテーション医学会