肝細胞と機能から構造まで詳細解説

肝細胞の構造と機能

肝細胞の基本構造と配列

 

肝細胞は肝臓の実質細胞として、肝臓の機能の大部分を担っています 。肝細胞の数は約2,500億個にのぼり、この膨大な細胞集団が直径1～2mmの六角柱構造である肝小葉を形成しています 。
参考）https://www.ri.jihs.go.jp/ri009/aboutus/010/index010.html

 

肝小葉内において、肝細胞は肝細胞索と呼ばれる板状の構造を作り、放射状に配列しています 。この配列により、肝細胞は門脈と中心静脈を両端とする軸に沿って整然と並び、細胞間には類洞と呼ばれる毛細血管が網目状に走行しています 。

 

参考）http://leading.lifesciencedb.jp/2-e007

 

肝細胞間には毛細胆管という特殊な構造が形成されており、肝細胞が産生した胆汁がこの毛細胆管を通って肝内胆管に集められ、最終的に十二指腸へと排出されます 。この構造は肝細胞の重要な機能の一つである胆汁生成・分泌に不可欠です。

 

肝細胞の主要な代謝機能

肝細胞は代謝の中心として、糖・脂質・タンパク質の複雑な代謝反応を担っています 。糖代謝では、血糖値の調節のためにグルコースの貯蔵と放出を行い、必要に応じてグリコーゲンの合成・分解を調節します 。

 

参考）https://kankinou.net/kanntann/hataraki.html

 

タンパク質代謝においては、血清アルブミン、凝固因子、酵素など多くの重要なタンパク質を合成しています 。これらの合成能力は肝機能の指標として臨床的に重要な意味を持ちます。脂質代謝では、コレステロール代謝の調節を行うとともに、脂肪酸の合成・分解を担当しています 。

 

参考）https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/02-%E8%82%9D%E8%83%86%E9%81%93%E7%96%BE%E6%82%A3/%E8%82%9D%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%82%92%E6%9C%89%E3%81%99%E3%82%8B%E6%82%A3%E8%80%85%E3%81%B8%E3%81%AE%E3%82%A2%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%81/%E8%82%9D%E8%87%93%E3%81%AE%E6%A7%8B%E9%80%A0%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E6%A9%9F%E8%83%BD

 

ビリルビン代謝も肝細胞の重要な機能の一つで、老化した赤血球から生じるビリルビンを処理し、胆汁として排泄します 。この機能の低下は黄疸の原因となり、肝機能異常の重要な指標となります。
参考）https://www.kango-roo.com/learning/3684/

 

肝細胞の解毒・排泄機能

肝細胞は体内に入った有害物質の解毒において中心的な役割を果たしています 。アルコール、薬物、老廃物などの有害物質を酵素によって化学的に分解し、体に影響を及ぼさないよう無毒化します 。

 

参考）https://www.aska-pharma.co.jp/kansikkan/basic/02.html

 

この解毒過程では、類洞内に存在するクッパー細胞との連携により、貪食作用と化学的分解の両方のメカニズムが働きます 。特に薬物代謝においては、肝細胞内のチトクロームP450などの酵素系が重要な役割を担っています 。

 

参考）https://www.kanto.co.jp/dcms_media/other/ChemTime_275_C.pdf

 

肝細胞は鉄の貯蔵・再利用も行っており、これは鉄代謝として知られています 。また、血液凝固物質であるフィブリノゲンやプロトロンビンなどの生成も肝細胞の重要な機能です 。

 

肝細胞の再生機構と分化

肝細胞の最も特徴的な能力の一つが優れた再生能力です 。部分肝切除などによる肝障害が起こると、肝細胞は「眠りから覚めるように」瞬時に増殖を開始し、失われた肝組織を効率的に再生します 。

 

参考）https://www.bioreg.kyushu-u.ac.jp/mib/topics/pressrelease/2011-06-20-2.pdf

 

この再生過程では、GSK-3依存的なSnailの分解が重要な役割を果たしています 。成体の肝細胞は通常、Snailによって増殖が抑制されていますが、肝障害時にはこの抑制が解除され、サイトカインや増殖因子、胆汁酸などの液性因子の刺激によって増殖が活性化されます 。

 

肝細胞は発生段階に応じて3つのタイプに分類されます 。タイプI細胞（MH-I）は高い増殖能力を持つ前駆細胞、タイプII細胞（MH-II）は分裂回数が制限された細胞、タイプIII細胞（MH-III）は細胞分裂能力を失った最終分化細胞です 。年齢とともにタイプI細胞は減少し、タイプIII細胞が増加する傾向があります。

 

参考）https://hepato.umin.jp/master/master10.html

 

肝細胞の疾患との関連性

肝細胞は肝炎ウイルス感染、アルコール、肥満による脂肪肝などによって傷害を受けやすく、これらの損傷が蓄積すると肝線維化が進行し、最終的に肝硬変に至ります 。肝硬変状態では肝細胞の正常な構造が破壊され、本来の機能が著しく低下します。

 

参考）https://pathology.or.jp/ippan/pdf/nishikawa45.pdf

 

肝細胞がんは、主に慢性肝疾患を背景として発生します 。B型・C型肝炎ウイルスの持続感染により、約80％以上の肝細胞がんが慢性肝炎または肝硬変を合併しています 。C型肝炎からの肝硬変では、年率7～8％の確率で肝細胞がんが発生し、肝硬変になって10年経つと70～80％の人ががんを発症するとされています 。
参考）https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/kochi/20140325001/20140514001.pdf

 

肝細胞がんは**「沈黙の臓器」**と呼ばれる肝臓の特性により、早期段階ではほとんど症状を示しません 。進行した場合には黄疸、腹水、意識障害、出血傾向などの症状が現れますが、この段階では治療が困難になる場合があります 。そのため、定期的な検査による早期発見が極めて重要です 。

 

参考）https://80thbook.tokushima-hosp.jp/specialfeature7/article-48/

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