胃がんにおける抗がん剤治療は、病期や患者の全身状態に応じて段階的にアプローチする必要があります。根治切除不能な進行・再発胃がんに対しては、生存期間の延長と症状緩和を主目的とした薬物療法が標準的治療となります。
💊 主要な薬物カテゴリー
一次化学療法における薬剤選択は、腫瘍の分子学的特徴を基盤とした個別化医療が重要です。HER2蛋白の発現状況は治療選択における最も重要なバイオマーカーの一つとして位置づけられています。
🔬 HER2検査に基づく治療選択
SP療法(S-1+シスプラチン)は、切除不能胃がんに対する標準的なファーストライン治療として確立されており、奏効率約50%、生存期間中央値13カ月の治療成績を示しています。しかし、シスプラチンによる腎機能障害や消化器症状への注意深い管理が必要です。
二次化学療法以降では、一次治療の薬剤耐性を考慮した治療薬の変更が重要になります。MSI検査(マイクロサテライト不安定性)の結果に基づく治療選択も推奨されています。
📊 治療ライン別戦略
国立がん研究センターのがん種別化学療法ガイドラインでは、各治療ラインでの薬剤選択基準が詳細に記載されています。
抗がん剤治療における副作用管理は、治療継続性と患者のQOL維持に直結する重要な要素です。特に胃がん患者では、消化器症状の管理が治療成功の鍵となります。
⚠️ 主要副作用とその対策
シスプラチンによる吃逆は、胃がん化学療法において特徴的な副作用であり、難治性となることが多いため、早期からの対症療法開始が推奨されます。
胃がん患者の抗がん剤治療では、消化器症状による栄養状態の悪化が治療効果や予後に大きく影響します。この視点は一般的な化学療法ガイドラインではあまり詳しく扱われていない、実臨床で重要な独自の観点です。
🍽️ 栄養管理のポイント
抗がん剤治療中の胃がん患者では、味覚異常や口内炎により食事摂取量が著しく減少することがあります。管理栄養士との連携による個別化栄養指導と、必要に応じた経腸栄養剤の併用が、治療完遂率向上に寄与します。
胃がんの抗がん剤治療における最新の動向として、免疫チェックポイント阻害薬の併用療法や新規分子標的薬の臨床応用が進んでいます。特に、FGFR2やCLDN18.2を標的とした新しい分子標的薬は、従来の治療に抵抗性を示す症例に対する新たな治療選択肢として期待されています。
医療従事者としては、これらの最新治療法の理解と共に、患者個々の病状や価値観に応じた治療選択を行うことが重要です。また、チーム医療の一員として、薬剤師、管理栄養士、看護師との連携を密にし、包括的な患者ケアを提供することが求められます。