イリノテカン効果と作用機序、副作用対策まで臨床応用の実際

イリノテカンは大腸がんや肺がんなど様々ながん種に効果を示す抗がん剤です。トポイソメラーゼI阻害作用により腫瘍増殖を抑制しますが、下痢や骨髄抑制などの副作用への適切な対策が重要となります。UGT1A1遺伝子多型と治療効果の関係をご存じですか?

イリノテカン効果と作用機序

イリノテカンの主要な特徴
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作用機序

トポイソメラーゼI阻害によりDNA複製を阻害し、がん細胞の増殖を抑制します

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活性代謝物

SN-38が本剤の1000倍の活性を持ち、実際の抗腫瘍効果を発揮します

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適応がん種

大腸がん、胃がん、肺がん、膵臓がん、婦人科系がんなど幅広い固形がんに有効です

イリノテカンのトポイソメラーゼI阻害作用

 

イリノテカン塩酸塩水和物は、植物由来のカンプトテシン誘導体として開発された抗悪性腫瘍剤です。本剤の作用機序は、がん細胞の増殖に必須であるDNAトポイソメラーゼIという酵素の働きを阻害することにあります。トポイソメラーゼIはDNAの複製や転写の際にDNA鎖を一時的に切断して再結合させる役割を担っており、この酵素が阻害されるとDNA複製が妨げられ、がん細胞の増殖が抑制されます。
参考)イリノテカンとはどのような薬か|あきらめない癌ステージ4治療…

本剤は体内でカルボキシルエステラーゼによって加水分解され、活性代謝物であるSN-38に変換されます。SN-38は元のイリノテカンと比較して約1000倍もの強力な抗腫瘍活性を有しており、実際の治療効果を発揮する主要な物質です。イリノテカンの殺細胞効果は細胞周期のS期に特異的であり、制限付時間依存性に効果を示す薬剤として知られています。
参考)医療用医薬品 : イリノテカン塩酸塩 (イリノテカン塩酸塩点…

トポイソメラーゼI阻害剤としてのイリノテカンは、従来のプラチナ製剤やタキサン系薬剤とは全く異なる作用メカニズムを持つため、これらの薬剤との併用により相乗効果が期待できます。実際の臨床試験において、イリノテカンは移植腫瘍に対して広い抗腫瘍スペクトラムを有することが確認されており、多様ながん種への応用が可能となっています。
参考)イリノテカン塩酸塩水和物(CPT-11)(カンプト、トポテシ…

イリノテカン効果が認められる主要がん種

イリノテカンは幅広い固形がんに対して臨床効果が確認されている抗がん剤です。特に大腸がん・直腸がんの治療において高い有効性が認められており、手術不能または再発した症例に対する標準治療の一つとして位置づけられています。転移性大腸がんの治療では、他の化学療法によって奏効を示さなかった症例や再発症例に対しても効果を示すことが報告されています。
参考)Irinotecan Hydrochloride[イリノテカ…

肺がん領域においても、イリノテカンは小細胞肺がんおよび非小細胞肺がんの両方に適応があります。小細胞肺がんでは単剤療法または併用療法として使用され、非小細胞肺がんでは特定のレジメンの一部として組み込まれることがあります。胃がんに対しては、手術不能または再発症例において一定の効果が報告されており、進行胃がんの治療選択肢として用いられています。
参考)イリノテカン塩酸塩水和物(カンプトⓇ)には、どのような効果が…

婦人科系悪性腫瘍では、子宮頸がんや卵巣がんに対してイリノテカンの使用が承認されています。これらのがん種では主に再発例に対する治療選択肢として位置づけられ、他の抗がん剤との併用療法の一部として使用されることが多くなっています。膵臓がんに対しては、FOLFIRINOX療法の構成薬剤として使用され、特にゲムシタビン基盤療法後の二次治療として有効性が示されています。乳がんの手術不能または再発症例、有棘細胞がん、悪性リンパ腫、小児悪性固形腫瘍などにも適応が拡大しており、多様ながん種における治療選択肢となっています。
参考)トポテシン/カンプト(イリノテカン)

KEGG医薬品情報 - イリノテカン塩酸塩の詳細な薬理作用と適応疾患

イリノテカンSN-38の代謝経路と薬物動態

イリノテカンの活性代謝物であるSN-38は、主に肝臓に存在するUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT)の一分子種であるUGT1A1によってグルクロン酸抱合を受けて代謝されます。グルクロン酸抱合されたSN-38グルクロニド(SN-38G)は不活性化された形態となり、主に胆汁を通じて腸管へと排泄されます。この代謝経路はイリノテカンの薬物動態において中心的な役割を果たしています。
参考)SN-38 - Wikipedia

SN-38は肝細胞内で生成された後、シヌソイド側膜より血流に移行して全身に分布します。血中のSN-38は有機アニオン輸送ポリペプチド(OATP)1B1やOATP1B3を介して再び肝細胞内に取り込まれ、再度代謝を受けます。肝細胞内で代謝されたSN-38Gは、胆管側膜に発現するABCトランスポーター(ABCB1、ABCC2およびABCG2)を介して胆汁中に排泄されます。
参考)https://www.touseki-ikai.or.jp/htm/05_publish/dld_doc_public/30-3/30-3_538.pdf

興味深いことに、胆汁排泄により腸管へと排泄されたSN-38Gは、腸内細菌のβ-グルクロニダーゼによって脱抱合されて再びSN-38に戻り、腸管から再吸収されて腸肝循環を形成します。この腸肝循環により、SN-38の体内滞留時間が延長され、下痢などの副作用が重篤化しやすくなる要因となっています。イリノテカン投与量の1%未満しか尿中に排泄されないことから、SN-38は典型的な肝消失型の薬物として分類されます。原薬であるイリノテカン自体は、肝チトクロームP450酵素CYP3A4やCYP3A5によって解毒的代謝を受けるほか、P糖蛋白(ABCB1/MDR1)により胆汁中に排泄されます。
参考)https://www.nihs.go.jp/mpj/irino.htm

イリノテカン併用療法と相乗効果

イリノテカンは単剤での使用に加えて、他の抗がん剤との併用療法において顕著な相乗効果を発揮します。大腸がん治療における標準的なレジメンの一つであるFOLFIRI療法は、イリノテカンにフルオロウラシル(5-FU)とレボホリナートを組み合わせた治療法です。この併用療法では、レボホリナートが5-FUの働きを高め、イリノテカンが異なる作用機序でがん細胞の増殖を抑制することで、単剤治療を上回る治療効果が得られます。
参考)FOLFIRI(フォルフィリ)療法

FOLFOXIRI療法は、さらにオキサリプラチンを追加した三剤併用療法であり、大腸がんに対してより強力な抗腫瘍効果を示します。この治療法では、オキサリプラチン、イリノテカン、フルオロウラシルという作用機序の異なる三種類の抗がん剤が同時に作用することで、がん細胞に対して多角的な攻撃を加えることができます。FOLFOXIRI療法にベバシズマブという血管新生阻害剤を組み合わせることで、さらに治療効果を高めることも可能です。
参考)https://med.sawai.co.jp/request/mate_attachement.php?attachment_file=02dfef5e-9b0d-452b-9fd9-be66eb21619c00000000070D5AD0.pdf

膵臓がん治療においては、FOLFIRINOX療法が一次治療として広く使用されています。この治療法は切除不能な局所進行または転移性膵管腺がんに対して有効性が示されており、ゲムシタビン単剤治療と比較して全生存期間の延長が認められています。胃がん治療では、イリノテカンとシスプラチンの併用療法が実施されることがあり、進行・再発胃がんに対して一定の効果が報告されています。乳がんにおいても、アントラサイクリン系薬剤やタキサン系薬剤による前治療歴のある転移性乳がん患者に対して、イリノテカンを含む併用療法が適度な奏効率と生存期間延長の傾向を示しています。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/95d617232c4619f1b9c03a93e9924610ae2718e2

国立がん研究センター中央病院 - FOLFIRI療法の詳細説明

イリノテカン投与量設定とUGT1A1遺伝子多型の関係

イリノテカンの投与量設定において、患者のUGT1A1遺伝子多型を考慮することが重要な臨床判断要素となっています。UGT1A1は活性代謝物SN-38をグルクロン酸抱合して無毒化する酵素ですが、この酵素の活性には個人差があり、特定の遺伝子多型を持つ患者では酵素活性が低下します。日本人において臨床的に重要な遺伝子多型は、UGT1A128とUGT1A16の二つです。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9014426/

UGT1A128はプロモーター領域のTA反復配列の数が通常の6回から7回に増加した変異であり、UGT1A16は遺伝子のコーディング領域の211番目の塩基がGからAに変異したものです。これらの遺伝子多型をホモ接合体(UGT1A1*6/6、UGT1A128/28)またはいずれもヘテロ接合体(UGT1A16/*28)として持つ患者では、UGT1A1のグルクロン酸抱合能が著しく低下し、SN-38の代謝が遅延します。その結果、重篤な副作用、特に好中球減少の発現可能性が高くなることが報告されています。
参考)https://med.nipro.co.jp/servlet/servlet.FileDownload?file=0155h000000ecIy

日本人におけるUGT1A1遺伝子多型の分布は、UGT1A128についてはTA6/TA6が76.5%、TA6/TA7が22.1%、TA7/TA7が1.4%となっています。UGT1A16についてはG/Gが66.4%、G/Aが28.8%、A/Aが4.9%という分布が報告されています。臨床試験のデータによると、副作用が出やすい遺伝子型を持つ患者では10人のうち約8人に強い副作用が出現すると予測される一方、副作用が出にくい遺伝子型でも10人のうち1~2人程度には強い副作用が出現する可能性があります。
参考)https://jp.sunpharma.com/assets/file/medicalmedicines/product/detail/10201/20201210154945_2_e.pdf

UGT1A1遺伝子多型検査は、イリノテカン投与前に実施することで副作用リスクを予測し、適切な用量調節を行うための重要な情報を提供します。この検査結果と患者の全身状態や病気の状態を総合的に評価することで、より安全で効果的なイリノテカン治療が可能となります。遺伝子多型情報に基づいた用量調節により、重篤な副作用を回避しながら十分な治療効果を得ることが期待されています。
参考)302 Found

積水メディカル - インベーダーUGT1A1アッセイの臨床的意義

イリノテカン副作用と対策

イリノテカン下痢の発現機序と分類

イリノテカン投与における最も頻繁に観察される重要な副作用は下痢であり、その発現機序と時期により早発性下痢と遅発性下痢の二つのタイプに分類されます。早発性下痢は投与直後から数日以内に現れ、コリン作動性の機序によるものと考えられています。これは急性のアセチルコリンエステラーゼ阻害によって引き起こされ、腹痛、発汗、流涙などのコリン作動性症状を伴うことがあります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2632824/

一方、遅発性下痢は投与後5日目以降に発現し、腸管粘膜障害に起因すると推測されています。遅発性下痢は早発性下痢と比較してより重篤となる可能性が高く、グレード3/4の重症下痢の発生率は20~35%にのぼります。遅発性下痢の発現には、胆汁中に排泄されたSN-38グルクロニドが腸内細菌のβ-グルクロニダーゼによって脱抱合されて再びSN-38に戻り、腸管粘膜を直接障害することが関与しています。​
さらに、再吸収されたSN-38が腸肝循環を形成することで体内滞留時間が延長され、下痢症状が遷延化・重篤化する要因となります。イリノテカンによる下痢は、適切な対処が行われない場合には脱水、電解質異常、感染症のリスクを高め、時に致命的な経過をたどることがあるため、早期発見と積極的な治療介入が必要です。排便習慣の管理として、イリノテカンを点滴した翌日・翌々日には便秘をしないように心がけることが推奨されており、便秘気味の患者では点滴当日の夜に下剤を内服することも有効です。
参考)https://www.pmda.go.jp/files/000147616.pdf

東和薬品オンコロジーナビ - イリノテカンによる下痢の対処法の詳細

イリノテカン骨髄抑制のリスクと管理

イリノテカンは骨髄機能抑制を引き起こす重要な副作用を有しており、白血球減少、好中球減少、血小板減少、貧血などが生じることがあります。骨髄抑制の程度は個人差が大きく、投与量、患者の年齢、全身状態、そしてUGT1A1遺伝子多型などによって影響を受けます。特に好中球減少は、イリノテカン治療において最も注意すべき骨髄抑制の一つであり、重症例では発熱性好中球減少症(FN)へと進展するリスクがあります。
参考)イリノテカン塩酸塩水和物(カンプトⓇ)では、どのような副作用…

白血球減少は感染症のリスクを上昇させ、特に好中球数が500/μL未満に低下した場合には重篤な感染症を発症する可能性が高まります。血小板減少は出血傾向を引き起こし、重症例では重大な出血合併症のリスクとなります。貧血は倦怠感や息切れなどの症状を引き起こし、患者のQOL(生活の質)を著しく低下させる要因となります。​
骨髄抑制の管理においては、定期的な血液検査によるモニタリングが極めて重要です。治療開始前および治療中は頻回に血液検査を実施し、白血球数、好中球数、ヘモグロビン値、血小板数などを継続的に評価する必要があります。骨髄抑制と下痢の発生時期が重複する場合には特に注意が必要であり、両者が同時に発現すると致命的な経過をたどる可能性があるため、イリノテカンについては過去に骨髄抑制に関する緊急安全性情報が発出されています。
参考)https://www.umin.ac.jp/fukusayou/adr128f.htm

重度の好中球減少が認められた場合には、G-CSF製剤(顆粒球コロニー刺激因子)の投与により好中球数の回復を促すことができます。また、重篤な骨髄抑制が発現した場合には、次回投与時の用量調節や投与スケジュールの変更を検討する必要があります。UGT1A1遺伝子多型検査の結果で高リスクと判定された患者では、初回投与時から減量を考慮することで骨髄抑制のリスクを低減できる可能性があります。
参考)https://www.spandidos-publications.com/ijo/45/4/1381/download

イリノテカン効果を最大化する投与方法

イリノテカンの投与方法には、患者の病態やがん種に応じて複数のレジメンが設定されています。A法は最も標準的な投与方法であり、イリノテカン塩酸塩水和物として1日1回100mg/m²を1週間間隔で3~4回点滴静注し、少なくとも2週間休薬するというサイクルを繰り返します。B法では1日1回150mg/m²を2週間間隔で点滴静注し、少なくとも2週間休薬するスケジュールとなります。
参考)医療用医薬品 : イリノテカン塩酸塩 (商品詳細情報)

C法は1日1回40mg/m²を3日間連日点滴静注し、これを1週毎に2~3回繰り返した後、少なくとも2週間休薬するレジメンです。D法は小児悪性固形腫瘍を主な対象とし、1日1回20mg/m²を5日間連日点滴静注し、これを1週毎に2回繰り返した後、少なくとも1週間休薬します。E法は1日1回180mg/m²を点滴静注し、少なくとも2週間休薬するという大量間欠投与法です。
参考)医療用医薬品 : イリノテカン塩酸塩 (イリノテカン塩酸塩点…

FOLFIRI療法などの併用療法では、通常イリノテカン150~180mg/m²が使用されます。この投与量は単剤療法と比較してやや高用量となりますが、5-FUやレボホリナートとの併用により相乗効果が期待できます。FOLFOXIRI療法では、イリノテカンの投与量は併用する他の抗がん剤とのバランスを考慮して調整されます。
参考)302 Found

投与量の調節においては、患者の全身状態(パフォーマンスステータス)、臓器機能、年齢、体表面積などを総合的に評価することが重要です。特にUGT1A1遺伝子多型で高リスクと判定された患者や、前治療で重篤な副作用を経験した患者では、減量投与から開始することが推奨されます。投与速度については、通常90分かけてゆっくりと点滴静注することで、急性の副作用リスクを低減することができます。​

イリノテカン肝機能障害・腎機能障害への影響

イリノテカンの代謝と排泄に関与する肝臓と腎臓の機能に影響を与えることがあり、これらの臓器機能障害は治療継続において重要な問題となります。肝機能障害はトランスアミナーゼ(AST、ALT)の上昇やビリルビン値の増加として現れ、重症化すると黄疸や肝不全を引き起こす可能性があります。イリノテカンは肝消失型の薬物であり、活性代謝物SN-38の代謝と排泄は主に肝臓で行われるため、肝機能が低下している患者では薬物の体内蓄積により副作用リスクが増大します。​
治療開始前および治療中は、定期的な肝機能検査(AST、ALT、総ビリルビン、アルカリホスファターゼなど)を実施し、肝機能の変化を継続的にモニタリングすることが必要です。肝機能障害が認められた場合には、程度に応じて投与量の減量や投与延期を検討しなければなりません。既に肝機能障害を有する患者では、初回投与時から減量を考慮することが重要です。​
腎機能障害はイリノテカン治療においては比較的稀ですが、尿細管障害や急性腎不全の報告があるため注意が必要です。透析を要するほど腎機能が低下したがん患者においても、イリノテカンは肝消失型であるため理論的には使用可能ですが、臨床研究では透析施行中のがん患者においてイリノテカン投与による好中球減少の遷延が観察されており、慎重な投与が求められます。腎機能のモニタリングとしては、血中クレアチニン値やBUN(血中尿素窒素)の測定が重要であり、これらの数値が上昇した場合には腎機能障害の可能性を考慮する必要があります。​

イリノテカン治療における独自の副作用管理戦略

イリノテカン治療の成功には、標準的な副作用管理に加えて、患者個々の特性に応じた独自の管理戦略が重要となります。特に注目すべき点として、早発性下痢に対する予防的な抗コリン薬の使用が挙げられます。臭化ブチルスコポラミンなどの抗コリン薬を予防的に投与することで、イリノテカン投与時のコリン作動性症状を軽減できる可能性が示唆されています。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/3fe218f2bf4908d3e29ed874de24ae102082f70b

遅発性下痢に対しては、漢方薬である半夏瀉心湯が有効性を示すことが複数の臨床研究で報告されています。半夏瀉心湯はイリノテカン誘発性下痢の予防および治療において、ロペラミド塩酸塩などの止瀉薬と併用することで相乗効果が期待できます。さらに重篤な遅発性下痢に対しては、酢酸オクトレオチドが著効を示した症例報告があり、難治性下痢の管理における選択肢の一つとなっています。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/f50c0199205459baf62786f17b84dc15859867dd

腸管内環境の調整も重要な戦略です。腸管内のpHをアルカリ化することで、SN-38の腸管粘膜への毒性を軽減し、下痢対策として有効である可能性が示されています。また、腸内細菌叢の管理も注目されており、β-グルクロニダーゼ産生菌の活性を抑制することでSN-38グルクロニドの脱抱合を減少させ、下痢症状を軽減できる可能性があります。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/18673e89e82ad86317d17b407b8f730f75abadcb

栄養管理と水分補給も軽視できない要素です。下痢症状が発現した場合の脱水予防には、経口補水液の積極的な摂取が推奨されます。食事内容についても、腸管刺激の少ない低脂肪・低繊維食を選択することで、下痢症状の悪化を防ぐことができます。患者教育の観点からは、副作用の早期発見と対処のための自己管理能力を高めることが重要であり、症状日誌の記録や緊急時の連絡体制の確立が治療継続のカギとなります。
参考)https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/pharmacy/pdf/FOLFIRI.pdf