漢方薬を「安全だから」と複数処方すると、甘草の重複で偽アルドステロン症が11%以上の高確率で起きます。
ツムラ升麻葛根湯エキス顆粒(医療用)は、ツムラの漢方製剤ラインナップの中では比較的知名度が低い部類に入ります。 しかし、その歴史は長く、明代の医書『万病回春』(1587年)を出典とする約430年以上の使用実績を持つ処方です。halph.gr+1
添付文書で定められた効能・効果は「感冒の初期、皮膚炎」の2つのみです。 成分は5種類の生薬(升麻・葛根・芍薬・甘草・生姜)で構成されており、主薬の升麻と葛根の名前がそのまま処方名に採用されています。medical.tsumura+1
用法・用量は成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前または食間に経口投与するのが標準です。 年齢・体重・症状により適宜増減できます。
参考)ツムラ升麻葛根湯エキス顆粒(医療用)の基本情報・添付文書情報…
薬価は6.7円/g(1日量7.5gで約50円/日)と、漢方製剤の中では標準的なコスト感です。
参考)医療用医薬品 : 升麻葛根湯 (ツムラ升麻葛根湯エキス顆粒(…
升麻葛根湯の最大の特徴は、「風寒」ではなく「風熱」への対応という点にあります。 悪寒よりも発熱が顕著で、皮膚・粘膜に赤い発疹が出るタイプの感染症初期が典型的な適応です。
参考)升麻葛根湯(ツムラ101番):ショウマカッコントウの効果、適…
適応が期待できる主な疾患は次のとおりです。
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これが条件です。「発疹が不分明な時期」に服用し、発疹を出し切ることで早期回復を図る、という考え方が本処方の根幹にあります。
よく混同される葛根湯(ツムラ1番)との違いを整理すると、葛根湯は麻黄・桂枝を含む「風寒」対応の処方で強い発汗作用を持ちます。 升麻葛根湯は麻黄が含まれないため作用が穏やかで、寒気よりも熱感・発疹が目立つ場合に適しています。 証を誤って葛根湯を投与しても、升麻葛根湯の代わりにはなりません。
升麻葛根湯を漢方として「安全」と決めつけると、大きなリスクを見落とします。
参考)漢方薬101「升麻葛根湯(ショウマカッコントウ)」 - 巣鴨…
重大な副作用として公式に報告されているのが、偽アルドステロン症とミオパチーの2つです。 偽アルドステロン症は、甘草に含まれるグリチルリチン酸が原因で高血圧・低カリウム血症・代謝性アルカローシスを引き起こします。 自覚症状は四肢脱力・ふらつき・歩行困難・筋肉痛などで、原因薬剤開始から3ヶ月以内に40%が発症しますが、長期使用後に突然発症するケースもあります。meiekisakomentalclinic+1
ここで医療現場で特に問題になるのが、漢方薬の複数処方による甘草の重複摂取です。 医療用漢方製剤148品目のうち、甘草を含有する処方は109処方にのぼります。
甘草1日摂取量別の偽アルドステロン症発症率は以下のとおりです。
| 甘草1日量 | 発症率 |
|---|---|
| 1g | 約1.0% |
| 2g | 約1.7% |
| 4g | 約3.3% |
| 6g以上 | 約11.1% |
升麻葛根湯に含まれる甘草量は少量ですが、他の漢方と組み合わせると総量が危険域に達することがあります。 例えば、加味逍遙散(甘草1.5〜2g/日)+ 葛根湯(2g/日)+ 小青竜湯(3g/日)を同時投与すると、1日の甘草摂取量は6.5〜7gになります。 痩せ型・高齢者・既存の低カリウム血症がある患者への処方時は、甘草総量の確認が必須です。
漢方薬の同時処方時は添付文書記載の甘草含有量を必ず確認する、というのが原則です。
ツムラ公式の偽アルドステロン症に関する情報はこちらで参照できます。甘草含有量の処方別一覧も掲載されており、重複リスクの確認に役立ちます。
慎重投与が必要な患者群を正確に把握しておく必要があります。
まず、小児への安全性は未確立です。 添付文書には「使用経験が少ないため小児に対する安全性は確立していない」と明記されており、投与する場合は医師の指示に従い用量を適切に調整する必要があります。
注目すべき点として、升麻葛根湯の添付文書には「湿疹・皮膚炎が悪化することがある」という記載があります。 皮膚炎が効能として挙げられているにもかかわらず、悪化リスクもあるという二面性は見落とされやすいポイントです。
陰虚(ほてり・乾燥が強いタイプ)の患者に投与すると、发汗によって口渇やのぼせがかえって増悪する恐れがあります。 証に合わない使用では症状悪化につながります。 これは問題ありません、とは言えないケースです。
その他、降圧薬・強心薬(特にジギタリス製剤)との併用時は、利尿促進による循環動態の変化と低カリウムによるジギタリス作用増強に注意が必要です。
特定患者への主な注意ポイントをまとめると。
医療現場では葛根湯・麻黄湯の知名度に押されて升麻葛根湯の出番が少ないのが実情ですが、実はこれが適応を誤らせる原因になります。 处方選択の観点から整理すると、3つの感冒期漢方は明確に役割が異なります。
| 処方名(番号) | 対象の証 | 特徴 |
|---|---|---|
| 葛根湯(TJ-1) | 風寒・悪寒強い・無汗 | 麻黄+桂枝で強力発汗 |
| 麻黄湯(TJ-27) | 風寒・体力充実・高熱 | 発汗作用が非常に強い |
| 升麻葛根湯(TJ-101) | 風熱・発熱強い・発疹あり | 麻黄なし・穏やかな発散 |
麻黄を含まないという点が升麻葛根湯の大きな特徴です。 高血圧・心疾患・糖尿病などの基礎疾患を持ち、麻黄含有漢方が使いにくい患者に対して、発熱+発疹の初期であれば升麻葛根湯が相対的に適しているケースがあります。
また処方期間の観点でも注意が必要です。 感冒の初期に使う薬であるため、症状が改善したら早期に投与を中止するのが原則です。 漫然と継続すると証との乖離が生じ、消化器症状(食欲不振・吐き気・下痢)などが現れることがあります。tsumura.co+1
処方選択に迷う場合、ツムラ公式の製品情報ページでは证・生薬・作用機序の詳細が参照できます。
ツムラ公式:升麻葛根湯(ショウマカッコントウ)製品情報
さらに、医療用として添付文書原文を確認したい場合はこちらが参照先です。処方の選択根拠として記録に残しておくことを推奨します。
ツムラ升麻葛根湯エキス顆粒(医療用)添付文書(ツムラ公式PDF)