甘草が入っている漢方薬を2種類以上併用すると、偽アルドステロン症の発生率が11%以上に跳ね上がります。
ツムラ二陳湯エキス顆粒(医療用)は、品番81番として知られる漢方製剤です。 宋代の医学書「和剤局方」を原典とし、処方の使用歴は約910年に及びます。 日本で市販・処方される漢方エキス製剤の中でも、歴史の長い処方の一つです。medical.tsumura+1
製品1g当たりの薬価は14.9円で、1日の標準使用量は7.5gのため、薬剤費として試算すると1日約112円程度です。 比較的安価に継続処方できることは、長期的な体質改善目的での使用にも向きます。これは使えそうです。
参考)医療用医薬品 : 二陳湯 (ツムラ二陳湯エキス顆粒(医療用)…
製剤の識別コードは「ツムラ/81」で、顆粒剤として500gボトルと分包品(2.5g×42包、2.5g×189包)が流通しています。 食前または食間(食後2〜3時間)に経口投与するのが基本です。 服用タイミングが「食間」と表記される場合、食後2〜3時間を指すという点は、患者への服薬指導でも繰り返し確認が必要です。halph.gr+1
ツムラ二陳湯は5種類の生薬で構成されています。 それぞれの役割を正しく理解しておくと、類似処方との使い分けや副作用予測に役立ちます。
参考)ツムラ 二陳湯 エキス顆粒(医療用) 81 効能効果・弁証論…
| 生薬名 | 用量(7.5g中) | 主な薬効 |
|---|---|---|
| 半夏(ハンゲ) | 5.0g | 鎮吐・痰の産生抑制 |
| 茯苓(ブクリョウ) | 5.0g | 水分代謝促進・胃腸機能改善 |
| 陳皮(チンピ) | 4.0g | 健胃・鎮咳・去痰 |
| 生姜(ショウキョウ) | 3.0g | 鎮吐・温胃 |
| 甘草(カンゾウ) | 1.0g | 緩和・調和・胃腸補助 |
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半夏と生姜が組み合わさることで、急性の吐き気・嘔吐への即効性を発揮します。 陳皮と茯苓は慢性的な水分代謝の低下(湿痰)を改善し、症状の根本に働きかけます。 処方名の「二陳」は、半夏と陳皮は「陳旧なもの(古いもの)ほどよい」という考え方から命名されています。 意外ですね。rheumatology+2
添付文書上の効能は「悪心、嘔吐」のみと非常にシンプルです。 ただし実臨床では、適応症はそれだけではありません。
参考)https://medical.tsumura.co.jp/products/081/pdf/081-tenbun.pdf
漢方的には以下の症状が二陳湯の適応として挙げられます。halph.gr+1
体力は「中等度前後」の患者が目安です。 体力が明らかに低下した患者には、六君子湯など補気作用の強い処方を優先する場合があります。
二陳湯と小半夏加茯苓湯は生薬構成がほぼ重複していますが、小半夏加茯苓湯は急性症状向き、二陳湯はやや慢性化した状態に向く、という使い分けが基本です。 どちらを選ぶかは病態の経過で判断します。
代表的な副作用は偽アルドステロン症とミオパチーです。 いずれも甘草(カンゾウ)に含まれるグリチルリチン酸が原因で引き起こされます。
参考)二陳湯の効能・効果
甘草の1日摂取量が複数の漢方製剤の重複処方により増加した場合、リスクは急激に上がります。 例えば加味逍遙散(甘草1.5〜2g/日)+葛根湯(甘草2g/日)+小青竜湯(甘草3g/日)を同時に処方すると、1日甘草量は6.5〜7gとなり、偽アルドステロン症の発生率は11%以上の高リスクゾーンに入ります。 これは厳しいところですね。
二陳湯の甘草含有量は1.0g/日と比較的少量ですが、他の甘草含有製剤との重複には注意が必要です。 具体的な症状として、四肢脱力・ふらつき・歩行困難・筋肉痛・頭重感・吐き気などが現れます。 吐き気が主訴で処方を続けたのに、服用中に吐き気が悪化した場合は偽アルドステロン症を疑う必要があります。kamitsure-pharmacy+1
高リスク患者として以下を特に警戒してください。
定期的な血清カリウム値・血圧のモニタリングが有効な対策です。 薬剤師が甘草含有製剤の重複を確認した場合は、担当医への情報提供と処方見直しの提案を迷わず行うことが重要です。
参考:甘草含有漢方製剤による低カリウム血症・偽アルドステロン症の実例・薬剤師の介入事例
日本病院薬剤師会 副作用防止事例「漢方製剤による低カリウム血症,偽アルドステロン症」(PDF)
妊婦または妊娠の可能性がある女性への投与は、「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する」とされています。 つわり(妊娠悪阻)に対して使用される場面があることと矛盾するように見えますが、処方の際は適応と安全性のバランスを必ず評価してください。
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/drugdetails.aspx?code=5343
半夏は妊婦への使用に注意が必要とされる生薬です。 つわりへの有効性を期待して処方する場合でも、添付文書の記載を念頭に置き、必要最小限の期間・用量にとどめることが原則です。
漢方処方では「病名処方」に陥りやすい点が医療現場での課題です。 二陳湯の場合でいえば、「悪心・嘔吐=二陳湯」と直感的に処方するだけでなく、患者の腹診(振水音の有無)・舌診(白膩苔の有無)・体力の評価を加えると、有効率が大きく変わります。 腹部を触れることなく、問診だけで漢方を処方しているケースは少なくない実情があります。患者の体格・体質に合った弁証論治が、漢方本来の効果を引き出す鍵です。ngskclinic+1
参考:ツムラ二陳湯の弁証論治・舌診・腹診に関する詳細情報
二陳湯 ツムラ81番 効能効果・弁証論治・舌診(halph.gr.jp)