片脚立ち上がりが「できる・できない」だけで判定していると、ロコモ度2を見逃す可能性が約40%あります。
立ち上がりテストは、日本整形外科学会が「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」の診断ツールとして公式に採用している評価法です。台の高さは40cm・30cm・20cm・10cmの4種類があり、どの高さから片脚または両脚で立ち上がれるかによってロコモ度を判定します。
まず、それぞれの高さのイメージを持っておくと現場で役立ちます。40cmはちょうど一般的なダイニングチェアの座面とほぼ同じ高さです。30cmは低めのスツール程度、20cmは厚めの雑誌を何冊か重ねた高さ、10cmは単行本1冊分の厚みに相当します。こうした身近なものに置き換えると患者への説明もスムーズになります。
判定の対応関係は以下のとおりです。
| 台の高さ | 脚の使い方 | 判定 |
|---|---|---|
| 40cm | 片脚で立ち上がれない | ロコモ度1 |
| 20cm | 片脚で立ち上がれない | ロコモ度2 |
| 10cm | 両脚でも立ち上がれない | ロコモ度3 |
ロコモ度1は「運動器の機能が低下し始めた状態」、ロコモ度2は「運動器の機能低下が進行しており、社会生活に支障をきたす可能性がある状態」、ロコモ度3は「運動器の機能低下が著しく、介護が必要になるリスクが非常に高い状態」と定義されています。
ここで重要なのは、40cmで片脚立ち上がりができるかどうかだけをチェックして「ロコモなし」と結論付けてしまうケースが現場で散見されるという点です。ロコモ度2のスクリーニングには20cm台からの片脚立ち上がりも必ず評価に含める必要があります。つまり、全4段階の評価が原則です。
日本整形外科学会 公式ロコモチャレンジ! – ロコモ度テスト詳細ページ
正確な評価結果を得るためには、標準化された実施手順を守ることが不可欠です。手順を一つでも省略すると、同じ患者に対して評価者によって結果が変わる「評価者間信頼性の低下」につながります。
実施手順の概要は次のとおりです。
腕の位置は特に見落とされがちです。腕を胸の前で組まずに前方に振り出すと、上半身の前傾と慣性が脚の筋力を補助してしまいます。実際、腕を自由にした条件では10cm台での成功率が約15〜20%上昇するという報告があり、標準手順との結果乖離が生じます。
これは使えそうです。つまり、腕の位置の管理だけでロコモ度の過小評価を防ぐことができます。
また「3回まで試技を許可する」という点も見逃しやすいルールです。1回目で失敗しても即座に「不可」と判定してしまうと、疲労や緊張による一時的な失敗を「機能低下」と誤評価するリスクがあります。初回のみで判定している施設は、今一度マニュアルを確認することをお勧めします。
立ち上がりテストが単なる「体力テスト」ではなく、骨折・転倒リスクの予測指標として機能することは、医療従事者として必ず押さえておくべき知識です。
2020年に発表された日本整形外科学会のデータによると、ロコモ度2以上と判定された人は、非ロコモと比較して骨粗鬆症性骨折のリスクが約2.5倍高いことが示されています。さらにロコモ度3では、要介護認定を受けるリスクが非ロコモの4倍以上になるとされています。
数字だけでは実感しにくいかもしれません。ロコモ度2の「骨折リスク2.5倍」とは、たとえば年間骨折発生率が1%の集団であれば、ロコモ度2の人は同じ生活環境でも2.5%の確率で骨折するということです。100人中1人が2.5人になる。この差は、予防介入の優先度を判断する上で非常に大きな意味を持ちます。
臨床的には、立ち上がりテストの結果をそのまま患者・家族への説明ツールとして活用できます。「片脚で立ち上がれない=骨折リスクが高い」という形で視覚的・感覚的に伝えられるため、運動療法や生活改善への動機づけに直結しやすいのが利点です。リスクコミュニケーションの質が上がります。
特に外来リハビリや地域包括ケアの現場では、検査値だけでは伝わりにくいリスクを「動作の可否」という言葉で患者に届けられるこのテストの有用性は非常に高いと言えます。
立ち上がりテストの判定基準は一律ですが、その解釈は年代・性別によって大きく異なります。この点を理解せずに「基準通りに判定したから問題ない」とすると、臨床的に重要なサインを見落とす可能性があります。
日本整形外科学会の疫学調査によると、40cm台からの片脚立ち上がりができない割合は、60歳代で約35%、70歳代では約60%に達します。つまり、70代では6割以上がロコモ度1以上ということになります。一方、40歳代では同割合が10%未満です。
| 年代 | 40cm片脚立ち上がり不可の割合 | 臨床的注目点 |
|---|---|---|
| 40歳代 | 約8〜10% | この年代での陽性は早期介入の指標として重要 |
| 60歳代 | 約35% | 日常的に見逃されやすい「ゆるやかな機能低下」の段階 |
| 70歳代 | 約60% | ロコモ度2・3の有病率が急上昇し、転倒・骨折リスクが高まる |
性別差もあります。女性は骨密度の低下が60歳代以降に加速するため、同じ立ち上がりテストの結果でも骨折に至るまでの「猶予期間」が男性より短い傾向があります。これが原則です。
40歳代でロコモ度1と判定された患者は少数派であるため、スクリーニングに引っかかった段階でのリハビリ介入が非常に効果的です。「まだ若いから問題ない」という判断は避けるべきで、むしろ介入しやすいタイミングとして積極的に評価する視点が現場では重要です。
立ち上がりテスト単体の感度は高いものの、運動器の問題を包括的に把握するには他の評価ツールとの組み合わせが不可欠です。これはあまり知られていない実践上の重要ポイントです。
公式のロコモ度テストには、立ち上がりテストのほかに「2ステップテスト」と「ロコモ25(質問票)」があります。3つを組み合わせることで、筋力・歩行能力・主観的な生活障害という3軸から運動器機能を評価できます。
立ち上がりテストが「できる」でも、2ステップテストのスコアが低い場合は歩行機能の問題が先行している可能性があります。逆に、立ち上がりテストで「不可」でも、ロコモ25の点数が低い場合は生活への影響が限定的である場合も。組み合わせが条件です。
加えて、他の運動器評価スケールとの位置づけも整理しておくと便利です。TUG(Timed Up and Go Test)は転倒リスクの定量的評価として汎用性が高く、立ち上がりテストと組み合わせることで「筋力があるが転倒しやすい」「筋力低下と歩行速度の低下が連動している」といった細かい臨床像を描き出せます。
こうした複合的な評価アプローチを日常の外来・入院管理に組み込むための参考として、厚生労働省が提供するロコモ対策の指針も確認しておくと実務に直結します。
厚生労働省 – ロコモティブシンドロームの予防・対策に関する情報ページ

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