ロペラミドはオピオイド受容体作動薬として、特に大腸のアウエルバッハ神経叢に存在するμ受容体に作用し、腸管の蠕動運動を抑制します。この薬物は血液脳関門を通過しないため、中枢神経系に影響を与えることなく、腸管にのみ作用するという特徴があります。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%9A%E3%83%A9%E3%83%9F%E3%83%89
ロペラミドの作用メカニズムは、腸管神経叢においてコリン作動性ニューロン機能を抑制し、腸壁内副交感神経機能を抑制することにあります。これにより腸管内の内容物滞留時間が延長し、より多くの水分が吸収されて便が固形化します。
参考)http://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1amp;yjcode=2319001M1361
また、ロペラミドは腸管の輪状筋方向の伸展により誘発されるアセチルコリンとプロスタグランジンの放出を抑制し、腸管内容物輸送抑制と蠕動抑制をもたらします。この作用により、モルヒネやコデイン、ジフェノキシレートよりも強力かつ持続的な止瀉作用を示します。
参考)https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1402908969
ロペラミドの最も重要な特徴は、P糖蛋白質で汲み出される基質であるため、血液脳関門で遮断されることです。これにより中枢神経系への曝露を免れ、中枢への影響や依存性の問題が回避されます。
ただし、キニジンなどのP糖蛋白質阻害物質を同時に服用すると、ロペラミドは血液脳関門を通過する可能性があります。ロペラミドとキニジンを併用すると呼吸抑制が起こることがあり、これは中枢にオピオイドが作用していることを示唆しています。
参考)https://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1amp;yjcode=2319001M1370
さらに、ロペラミドはマウス、ラット、アカゲザルを用いた前臨床研究で軽度の身体的依存を形成することが報告されており、長期投与後の突然の断薬により軽度の離脱症状が観察されています。しかし、臨床用量では中枢作用を示さないのが大きな特徴です。
ロペラミドの止瀉作用はモルヒネやコデインより強力で持続時間も長く、投与量を増やすことに伴って下痢を改善させる作用も強くなります。実験データでは、マウスの小腸輸送能を用量依存的に抑制し、成熟モルモットの摘出回腸並びに生体位小腸及び結腸の蠕動を抑制することが確認されています。
参考)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00070481
ロペラミドのカルシウム流入に対する新たな作用機序について詳細な研究データが掲載されています
急性下痢での改善率は89%と高い水準を示しており、腸管の水分バランス・動きを整えることで止瀉作用を発揮します。さらに、肛門静止圧を上昇させ、直腸感覚を向上させ、直腸肛門抑制反射の緩和を促進することで便失禁を軽減する効果も報告されています。
参考)https://h-ohp.com/column/3530/
ロペラミドには重要な禁忌事項があります。出血性大腸炎(O157などの腸管出血性大腸菌感染症)、偽膜性大腸炎(抗生物質によるもの)の患者には絶対に投与してはいけません。これは、病原菌を排泄するために下痢を起こしているためで、下痢を止めてしまうと病原菌が体内に留まり症状が悪化する危険性があるからです。
参考)https://uchikara-clinic.com/prescription/lopemin/
また、低出生体重児、新生児及び6か月未満の乳児には禁忌とされており、外国では過量投与により呼吸抑制、全身性痙攣、昏睡等の重篤な副作用の報告があります。感染性下痢患者、潰瘍性大腸炎の患者についても原則禁忌とされています。
参考)https://vet.cygni.co.jp/include_html/drug_pdf/syouka/JY-00299.pdf
発熱を伴う下痢や血便がある場合も禁忌とされており、これらは細菌による感染性腸炎の可能性があるため、菌や毒素が腸内に留まることでかえって症状を悪化させ、重症化する危険性があるからです。
ロペラミドの標準的な使用方法は、成人で1日1~2mgを1~2回に分割して経口投与します。症状により適宜増減しますが、1日の最大服用量は8mg(8カプセル)までとされています。下痢が止まれば服用を中止し、服用間隔は4時間以上空けることが重要です。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00068839.pdf
重要な薬物相互作用として、リトナビル、キニジン、イトラコナゾールなどのP糖蛋白質阻害薬との併用により、ロペラミドの代謝・排出が妨げられ副作用リスクが高まります。また、ケイ酸アルミニウムやタンニン酸アルブミンなどの吸着剤との併用では効果が弱くなる可能性があるため、服用間隔を空ける必要があります。
PMDAによるロペミンの添付文書で詳細な使用上の注意を確認できます
最も頻度の高い副作用は便秘で、薬理作用が強く出すぎることが原因となります。その他、腹部膨満感、吐き気、めまい、眠気などが報告されており、極めてまれではありますがイレウス(腸閉塞)という重篤な副作用の可能性もあるため注意が必要です。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00070481.pdf