緑内障治療は、現時点で「眼圧下降」が唯一確実な方法である、という原則から整理すると全体像がぶれません。緑内障診療ガイドラインでも、病型・病期にかかわらず眼圧下降が有効であることが示されています。したがって「緑内障治療薬 一覧」を作るときは、まず“どう眼圧を下げるか(房水動態)”で分類するのが実務的です。
日本の臨床で基本となる薬物治療は、局所投与(点眼)です。点眼薬は大きく、①毛様体からの房水産生抑制、②主流出路(線維柱帯→シュレム管)からの流出促進、③副流出路(ぶどう膜強膜路)からの流出促進、の観点で整理できます。既存薬はこのいずれか、または複数機序を併せ持つ形で眼圧を下降させます。
代表的な「緑内障治療薬 一覧(点眼薬)」は次のとおりです(一般名中心)。
・プロスタノイド受容体関連薬:FP受容体作動薬(ラタノプロスト、トラボプロスト、タフルプロスト、ビマトプロストなど)、EP2受容体作動薬(例:オミデネパグ・イソプロピル)
・交感神経β受容体遮断薬(β遮断薬):チモロール、カルテオロール、ベタキソロール、レボブノロールなど
・炭酸脱水酵素阻害薬:ドルゾラミド、ブリンゾラミド
・交感神経α2受容体作動薬(α2作動薬):ブリモニジン
・Rhoキナーゼ阻害薬(ROCK阻害薬):リスパジル
・副交感神経作動薬:ピロカルピン
・α1β遮断薬、α1遮断薬、イオンチャネル開口薬、配合点眼薬(2成分以上)
全身投与としては、炭酸脱水酵素阻害薬(内服)と高張浸透圧薬(点滴)があり、急性緑内障発作など「即座に眼圧を下げる必要がある場面」で用いられる、という位置づけになります。慢性の通常管理では、まず点眼で組み立てるのが基本です。
開放隅角緑内障(広義)での治療導入は、原則として単剤から開始し、目標眼圧に届かなければ薬剤変更や多剤併用(配合点眼薬を含む)を検討します。ここで重要なのは、「目標眼圧達成」だけでなく副作用やアドヒアランスも同時に配慮する、という考え方です。
第一選択の実務的な軸は、FP受容体作動薬が“眼圧下降効果・点眼回数・重篤な全身副作用が少ない”点で優れ、多くは第一選択として使用される、という整理になります。一方で、β遮断薬やEP2受容体作動薬も第一選択になり得る、という位置づけが示されています。
ここで、医療従事者向けに押さえておきたい「少し意外に感じやすい注意点」を2つ挙げます。
・EP2受容体作動薬は、FP受容体作動薬と異なる新規機序を持つ一方で、「白内障術後眼には使用できない」「FP受容体作動薬との併用は推奨されていない」といった“運用上の制限”があるため、単に効き目だけで選ぶと事故りやすい薬剤です。
・眼圧は測定条件や角膜性状の影響を受けやすく、季節変動(日内変動)もあるため、「1回の眼圧値」だけで増量・追加を判断しない姿勢が、結果的に不要な多剤化を減らします。
参考:日本の標準的な治療方針(単剤開始→不十分なら変更/併用、必要ならレーザー/手術へ)
日本緑内障学会「緑内障診療ガイドライン(第5版)」:眼圧下降治療の方針、目標眼圧、薬物治療導入フローの根拠
緑内障点眼は“局所投与だから安全”と捉えられがちですが、現場では副作用・禁忌を見落とすとトラブルになります。特にβ遮断薬は、心疾患や喘息患者で重篤な全身副作用が報告されているため、問診確認後に使用することが望ましい、という注意が明示されています。
FP受容体作動薬は全身副作用が問題になりにくい一方、局所の副作用は比較的特徴的です。具体的には、充血、眼瞼・虹彩の色素沈着、睫毛の変化、上眼瞼溝深化などが起こり得ます。患者説明では「見た目の変化は“病気が悪化したサイン”と誤解されやすい」ため、開始時に先回りして説明しておくと中断リスクを減らせます。
EP2受容体作動薬は、ラタノプロストに劣らないとされる眼圧下降効果が期待される一方で、先述のとおり術後眼での制限や併用の考え方が独特です。処方提案の際は、過去の手術歴(特に白内障術後)と、現在の点眼構成(FP系を使っていないか)をセットで確認すると安全側に倒せます。
副作用は“薬剤の種類そのもの”だけでなく、点眼のやり方(1回に複数滴入れる、点眼後に瞬目が多い、涙囊部圧迫をしない等)で、全身移行や局所刺激が増える点も見逃せません。薬を変える前に手技介入で改善するケースがあるため、看護・薬剤師の介入余地が大きい領域です。
参考:緑内障点眼薬の分類表(一般名・点眼回数・主な眼圧下降機序がまとまっている)
「緑内障の点眼治療」:点眼薬の分類(FP/EP2/β遮断/炭酸脱水酵素阻害/ROCK等)、副作用、点眼回数、点眼手技の要点
眼圧が目標に届かないとき、次の一手は「追加」だけではありません。薬剤変更、配合点眼薬への置換、レーザー治療や手術の選択肢提示まで含めて“治療の総量”で設計します。ガイドラインでも、薬物治療の原則は「必要最小限の薬剤と副作用で最大の効果を得る」ことであり、多剤併用は副作用増加やアドヒアランス低下につながるため十分配慮する、とされています。
配合点眼薬は、2成分以上を1本にまとめることで、①点眼回数(手間)を減らし、②添加剤曝露の総量を減らし得て、③結果としてアドヒアランスの改善が期待できる、という利点があります。特に高齢者や手指巧緻性が落ちた患者では「点眼行為そのものがボトルネック」になりやすく、配合剤の価値が大きくなります。
ただし、配合剤は便利な反面、調整の自由度は下がります。副作用が出たときに“どちらの成分が原因か切り分けにくい”、あるいは“片方は続けたいのに両方止めざるを得ない”ことが起こり得ます。導入時は、以前の単剤で忍容性が確認できている組み合わせを選ぶ、という順序で考えると失敗が減ります。
検索上位の「薬の種類まとめ」は薬剤リストで終わりがちですが、実臨床では“薬が効かない”の正体が、薬理ではなく点眼手技・生活動作にあることが少なくありません。ここは医療従事者としての介入価値が高く、患者アウトカムに直結します。
よくある落とし穴は、患者が「点眼しているつもり」でも、①間を空けず連続点眼して効果が減弱する、②数滴点眼して全身移行が増える、③瞬目が多くて眼に残らない、といったパターンです。点眼の“量”や“勢い”で効き目が上がるわけではない、という理解を共有し、1回1滴を徹底するだけで状況が変わる例があります。
点眼指導で押さえる具体策は、以下のとおりです(現場でそのまま使えるチェックリスト形式)。
・点眼前に手を洗う
・点眼瓶の先が睫毛に触れないように注意する(汚染・角膜刺激を防ぐ)
・点眼は1回1滴とする
・点眼後は静かに閉瞼し、涙囊部を圧迫する(全身移行を減らす)
・目のまわりにあふれた薬液は拭き取り、手に付いた薬液は洗い流す(皮膚副作用や誤接触対策)
・複数の点眼液を併用するときは、5分以上の間隔を空けて点眼する
このセクションを“独自視点”として強調したい理由は、薬剤変更や追加に進む前に、手技最適化だけで「眼圧が下がる/副作用が減る/中断が減る」ことがあり、医療費と患者負担を同時に下げられる可能性があるからです。薬を増やすより先に、点眼の質を上げる。これは看護・薬剤師が主導でき、チーム医療が効きやすい介入です。