セリチニブ副作用と対処法:肝機能障害から消化器症状まで

セリチニブ(ジカディア)の副作用について、発現頻度や重症度、適切な対処法を医療従事者向けに詳しく解説します。肝機能障害、間質性肺炎、消化器症状など、重要な副作用の管理方法を知りたいですか?

セリチニブ副作用の特徴

セリチニブ主要副作用の概要
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消化器症状

下痢(80.4%)、悪心(64.6%)など高頻度で発現し、治療継続の課題となります

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肝機能障害

ALT増加(59.3%)をはじめとする肝機能マーカーの上昇に注意が必要です

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重篤な副作用

間質性肺炎(0.6%)、QT延長(7.5%)など致死的となりうる副作用の早期発見が重要です

セリチニブ副作用の発現頻度

 

セリチニブ(ジカディア)の副作用発現頻度は97.4%と非常に高く、投与患者のほぼ全例で何らかの副作用が認められます。最も頻度の高い副作用は消化器症状で、下痢が80.4%、悪心が64.6%、嘔吐が約60%の患者に発現します。肝機能障害も高頻度で認められ、ALT増加は59.3%、AST増加は28.6%に達します。これらの副作用は治療開始後比較的早期、数日から数週間以内に出現することが多いため、投与初期の慎重な観察が必要です。
参考)医療用医薬品 : ジカディア (ジカディア錠150mg)

重篤な副作用としては、間質性肺炎が0.6%、肝機能障害が4.2%、QT間隔延長が7.5%の頻度で報告されています。これらは頻度は低いものの、致死的となる可能性があるため、定期的なモニタリングと早期発見が極めて重要です。また、徐脈(1.8%)、重度の下痢(1.1%)、高血糖(2.9%)、糖尿病(0.2%)、膵炎(0.2%)といった副作用も注意すべき重要な事象として認識されています。
参考)セリチニブ(ジカディアⓇ)では、どのような副作用がみられます…

セリチニブによる肝機能障害の特徴と管理

セリチニブは肝臓で代謝されるため、肝機能への影響が高頻度に認められます。肝機能障害の主な指標となるASTやALT、γ-GTPなどのトランスアミナーゼの上昇が投与中に見られることがあり、定期的な血液検査によるモニタリングが必須です。重度の肝機能障害が発現した際には、AST・ALTが基準値上限の3倍以上、総ビリルビンが基準値上限の2倍以上という異常値の目安を参考に、休薬や減量、投与中止を検討する必要があります。
参考)セリチニブ(ジカディア) href="https://kobe-kishida-clinic.com/respiratory-system/respiratory-medicine/ceritinib/" target="_blank">https://kobe-kishida-clinic.com/respiratory-system/respiratory-medicine/ceritinib/amp;#8211; 呼吸器治療薬 - …

肝機能障害の管理においては、投与開始前に肝機能検査を実施し、基礎値を把握しておくことが重要です。投与中は定期的な血液検査で肝機能マーカーを確認し、異常の早期発見に努めます。特に投与開始後数週間は、頻回の検査が推奨されます。肝機能障害が認められた場合は、その程度に応じて投与量の調整を行い、必要に応じて肝保護療法を併用することも検討されます。
参考)https://www.pmda.go.jp/drugs/2016/P20160318001/300242000_22800AMX00384000_B100_1.pdf

セリチニブによる間質性肺炎の症状と対応

セリチニブ投与中に特に注意すべき重篤な副作用の一つが間質性肺疾患です。発症頻度は0.6%と比較的低いものの、一度発症すると重篤化する可能性が高く、致死的な転帰をとることもあるため、早期発見と迅速な対応が極めて重要です。間質性肺炎の初期症状としては、息切れ、呼吸困難、咳嗽の増加、発熱などが挙げられ、これらの症状が現れた場合には直ちに医療機関を受診する必要があります。
参考)エラー

治療初期は入院またはそれに準ずる管理の下で、間質性肺疾患等の重篤な副作用発現に関する観察を十分に行うことが求められます。投与期間中は定期的な胸部画像検査や呼吸機能検査を実施し、異常の早期発見に努めます。間質性肺炎が疑われる場合には、直ちにセリチニブの投与を中止し、ステロイド療法などの適切な治療を開始する必要があります。
参考)https://www.pref.miyagi.jp/documents/27926/352843.pdf

セリチニブによる消化器症状の管理方法

セリチニブ投与中に最も頻繁に見られる副作用は消化器系のもので、特に下痢、悪心、嘔吐、腹痛などが高頻度で発現し、患者のQOLに大きな影響を与えます。下痢は約80%、悪心は約70%、嘔吐は約60%、腹痛は約40%の患者に認められ、これらの症状は投与開始後比較的早期に出現することが多いため、適切な対症療法や投与量の調整が必要となります。​
消化器症状の管理においては、制吐薬や止瀉薬といった対症療法が基本となります。セリチニブの用法・用量は当初750mg空腹時投与でしたが、消化器症状の発現頻度が高いことから、2019年に450mg食後投与へと変更され、これにより消化器症状の低減が期待されています。重度の下痢が持続する場合には、脱水を防ぐための水分補給と電解質管理が重要で、必要に応じて休薬や減量を検討します。
参考)ジカディアが用法・用量の変更承認を取得、副作用の低減に期待 …

セリチニブによるQT延長と心毒性のモニタリング

セリチニブはQT間隔延長のリスクがあり、約7.5%の患者に認められるため、心臓への影響に関する継続的なモニタリングが必要です。特に心疾患の既往がある患者や電解質異常を伴う患者では、QT延長のリスクが高まる可能性があります。投与開始前には心電図検査を実施してベースラインのQT間隔を確認し、血清電解質検査(カリウム、マグネシウム等)も併せて行います。​
投与中は定期的な心電図検査と電解質のモニタリングを実施し、QTc間隔が500msecを超える場合や重篤な不整脈を疑う所見が認められた場合には、休薬、減量、または中止を検討する必要があります。また、QT延長作用を有する他の薬剤との併用は可能な限り避けることが推奨されます。電解質異常が認められた場合には、速やかに補正を行い、心毒性のリスクを低減させることが重要です。
参考)https://www.pmda.go.jp/RMP/www/672212/7aa60ef6-8d2b-4508-9ca6-45ab4ae19142/672212_4291026M1023_10_004RMPm.pdf

セリチニブの用量調整基準と休薬判断

セリチニブの用量調整は、副作用の種類と重症度に応じて段階的に行われます。現在の標準用量は450mg 1日1回食後投与ですが、副作用が発現した場合には、患者の状態に応じて適宜減量することが認められています。重篤な副作用が発現した際の対応として、まず休薬を行い、症状が回復してから1段階減量して投与を再開するという原則があります。
参考)エラー

具体的な用量調整の基準としては、Grade 3以上の副作用が発現した場合には休薬を検討し、Grade 1以下に回復した後に減量して投与を再開します。2段階減量した用量でも同様の重篤な副作用が再発した場合には、治療を中止することが推奨されます。また、肝機能障害や間質性肺炎などの重篤な副作用が発現した場合には、速やかに投与を中止し、適切な治療を開始する必要があります。用量調整や休薬の判断は、患者の全身状態、副作用の重症度、治療効果などを総合的に評価して行うことが重要です。
参考)Ceritinib

PMDA医薬品リスク管理計画書(セリチニブの安全性情報と管理計画の詳細)
日本肺癌学会(ALK阻害薬の副作用と注意点に関する患者・家族向け解説)