髄膜炎の症状と原因から治療方法

髄膜炎は脳や脊髄を包む髄膜の炎症で、発熱・頭痛・嘔吐が三大症状として現れます。細菌性とウイルス性があり、緊急治療が必要な場合も。診断方法や予防法とは?

髄膜炎の症状と診断

髄膜炎の主要症状と特徴
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発熱・頭痛・嘔吐(三大症状)

髄膜炎の典型的な症状で、急速に進行する場合があります

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項部硬直・意識障害

首が硬くなり意識レベルが低下する髄膜刺激症状

けいれん・神経症状

進行すると様々な神経症状が現れる可能性があります

髄膜炎の典型的な症状

 

髄膜炎の代表的な症状は発熱頭痛嘔吐の三大症状で、これらが同時に現れることが特徴的です 。発熱は頭痛とともに多くの症例に認められますが、高齢者や免疫不全の状態では定型的な症状が出現せず、体温38℃未満の場合もあるため注意が必要です 。

 

参考)https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/meningitis/

 

髄膜炎では項部硬直という重要な髄膜刺激症状が現れます 。これは頸部の受動的または能動的屈曲に対する抵抗として現れ、通常は頸部の回転は可能だが屈曲ができない状態になります 。さらにケルニッヒ徴候やブルジンスキー徴候といった髄膜刺激症状も診断の手がかりとなります 。

 

参考)https://www.kango-roo.com/learning/7663/

 

進行すると意識障害、けいれんを呈することがあり、特に1歳以下の赤ちゃんでは発熱以外の症状がはっきりしないことがあります 。新生児が髄膜炎にかかった場合、典型的な発熱・嘔吐などの症状がなく、なんとなく元気がなかったり、ミルクや母乳の飲みが悪かったりするというだけの場合があります 。

 

参考)https://www.itabashi.med.nihon-u.ac.jp/search/term/157

 

髄膜炎の診断方法と腰椎穿刺

髄膜炎の確定診断は腰椎穿刺による髄液検査のみで可能で、これは必ず行われるべき検査とされています 。腰椎穿刺では、腰椎クモ膜下腔から髄液の一部を採取し、髄液の測定および診断を行います 。

 

参考)https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/zuimaku_guide_2014_05.pdf

 

腰椎穿刺では背中の第3-4腰椎の間を目標として、骨と骨の間に穿刺針を刺して髄液を採取します 。通常針を刺してから髄液を採取するまでは15分程度で終了し、髄液初圧の測定、細胞数と分画、髄液糖、髄液蛋白量、グラム染色と鏡検が行われます 。

 

参考)https://hashiguchi-cl.com/page/brainpedia/%E9%AB%84%E6%B6%B2%E6%A4%9C%E6%9F%BB%EF%BC%88%E8%85%B0%E6%A4%8E%E7%A9%BF%E5%88%BA%EF%BC%89/

 

診断では髄液の見た目も重要で、正常であれば透明な髄液が、細菌性髄膜炎の患者では濁った色になることがあります 。
ウイルス性髄膜炎では髄液の見た目は透明で、リンパ球が増加し、糖やタンパク質は正常値を示すことが多いのに対し、細菌性髄膜炎では髄液が濁っており、顆粒球が増加し、糖は低下します 。

 

参考)https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/09-%E8%84%B3-%E8%84%8A%E9%AB%84-%E6%9C%AB%E6%A2%A2%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E9%AB%84%E8%86%9C%E7%82%8E/%E6%80%A5%E6%80%A7%E7%B4%B0%E8%8F%8C%E6%80%A7%E9%AB%84%E8%86%9C%E7%82%8E

 

髄膜炎の合併症と後遺症

髄膜炎は治療が遅れた場合に難聴てんかん水頭症認知障害等の長期的な後遺症を遺すことがあり、特に細菌性髄膜炎では重篤な合併症が生じる可能性があります 。

 

参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%84%E8%86%9C%E7%82%8E

 

細菌性髄膜炎の経過中には脳浮腫脳梗塞脳膿瘍水頭症硬膜下水腫などの合併症が生じる可能性があります 。脳浮腫では脳溝の狭小化や正中構造の偏位が見られ、脳梗塞では拡散強調画像での高信号域が確認されます 。

 

参考)https://kobe-kishida-clinic.com/infectious/infectious-disease/bacterial-meningitis/

 

結核性髄膜炎は特に予後が不良で、全結核患者に占める割合は0.3%程度ですが、その死亡率は約30%とされ、高率に後遺症を残すことから結核の化学療法が進歩した現在でも予後不良の疾患です 。

 

参考)https://www3.kufm.kagoshima-u.ac.jp/ns/pdf/113.pdf

 

髄膜炎の新生児・乳幼児における症状

新生児期の髄膜炎では典型的な症状が現れにくく、診断が困難な場合があります 。新生児が髄膜炎にかかった場合、発熱・嘔吐などの典型的な症状がなく、なんとなく元気がない、ミルクや母乳の飲みが悪い、逆に異常に興奮するといった非特異的な症状のみの場合があります 。

 

1歳以下の赤ちゃんでは発熱以外の症状がはっきりしないことがあり、いつもの風邪の発熱と違いぐったりしている、ミルクやおっぱいなど水分を飲まない、うとうとしていて反応がなく意識が悪い、目があわない、痙攣するといった症状をきたします 。

 

乳幼児期では髄膜炎の発症頻度が高く、ワクチンがなかった時代は5歳未満の小児の1万人に1人ぐらいの頻度で発症していました 。侵襲性髄膜炎菌感染症は0〜4歳の乳幼児、10代後半の思春期に感染するリスクが高いことが分かっています 。

 

参考)https://ph-lab.m3.com/categories/clinical/series/overview/articles/418

 

髄膜炎診断における最新技術

2022年10月からFilmArray® 髄膜炎・脳炎パネルが保険適用となり、従来の髄液検査のみでは診断・起因菌同定できない場合でも、このパネルで同定できる症例があり、髄膜炎の診療に有用とされています 。

 

参考)https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jja2.12980

 

細菌性髄膜炎では治療の遅れが生命予後・神経学的予後の悪化につながるため、迅速な診断が重要です 。髄液のGram染色・培養が陰性である細菌性髄膜炎や細胞数増多・髄液糖低下を伴わない細菌性髄膜炎が報告されており、治療の遅れが生じうる状況でFilmArray®パネルが診断に貢献しています 。

 

医師は急性細菌性髄膜炎を疑うと、直ちに抗菌による治療を開始し、髄膜炎は進行が速いため、検査の結果を待たずに治療が開始されます 。臨床診断で髄膜炎が疑われれば、腰椎穿刺、CTが未施行でも速やかに抗生剤投与すべきとされています 。

 

参考)http://hospi.sakura.ne.jp/wp/wp-content/themes/generalist/img/medical/jhn-cq-tokyobay-160729.pdf

髄膜炎啓発 | 疾病闘士 髄膜炎戦士 トレーナー