エカベトナトリウム製剤は「そのうち後発品が出るから大丈夫」と思っていると、処方できる薬が今すぐゼロになります。drugshortage+1
エカベトナトリウム(一般名:エカベトナトリウム水和物)は、胃炎・胃潰瘍治療を目的とした粘膜保護型の胃薬です。 先発品のガストローム顆粒66.7%(田辺ファーマ株式会社)が2025年9月をもって「在庫消尽後販売中止」となることが公式に発表されました。clinicalsup+2
後発品(ジェネリック)も事情は同様です。陽進堂製の「エカベトNa顆粒66.7%「YD」」は在庫消尽をもって製造販売を中止。 日本ニッシン製「エカベトNa顆粒66.7%「NS」」も同様に販売中止となっており、市場から主要な製品が順次消えつつあります。drugshortage+2
つまり、現時点で入手できる製品数は激減中です。
MedPeerの情報によると、現在も流通が確認されているのはわずか数品目にとどまっています。 医療機関や薬局での在庫確認と早急な切替対応が、患者への継続的な治療提供に直結する状況となっています。
販売中止が相次いだ背景として、2019年に発覚した沢井製薬の後発品「エカベトNa顆粒66.7%「サワイ」」へのアセタゾラミド混入問題が挙げられます。 アセタゾラミドは世界アンチ・ドーピング機構(WADA)が禁止するマスキング剤であり、競技者が服用した場合にドーピング陽性反応が出るリスクがあります。mixonline+2
原因は、インド・NAKODA社製の原薬製造ラインで使用されたアセタゾラミドのキャリーオーバーでした。 沢井製薬の調査では、製剤中のアセタゾラミド混入量は無毒性許容量の約1/1,000程度と極めて微量であり、長期服用でも健康被害のリスクは低いと発表されています。sawai+1
ただ、ドーピングリスクは「量が少ないから無視できる」話ではありません。
スポーツ選手が服用した場合、実際にドーピング陽性と判定される可能性があり、競技キャリアに取り返しのつかない影響を与えかねません。 この問題は後に沢井製薬と陽進堂の間で訴訟となり、2021年に和解が成立しています。sawai.co+1
沢井製薬:エカベトNa顆粒66.7%「サワイ」訴訟の和解についてのお知らせ
エカベトナトリウムが長年使われてきた理由は、その多面的な薬理作用にあります。 具体的には、①胃粘膜被覆保護作用、②抗ペプシン作用、③抗ヘリコバクター・ピロリ作用、④内因性プロスタグランジン増加作用、⑤胃粘液分泌促進の5つが同時に働きます。
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/DrugInfoPdf/00055142.pdf
作用メカニズムは以下のとおりです。
これは他の粘膜保護薬にはない特徴です。
参考)https://www.shirasagi-hp.or.jp/goda/fmly/pdf/files/148.pdf
腎機能が低下している患者(保存期CKD・透析患者)に対しても、エカベトナトリウムは吸収されにくい性質のため減量不要というメリットがありました。 この特性は、代替薬選択時に特に注意が必要なポイントになります。
エカベトナトリウム顆粒の添付文書(薬効薬理・用法含む詳細情報)
エカベトナトリウムが使えなくなった場合、どの薬に切り替えるかが実務上の最重要課題です。 同じ「粘膜保護・組織修復型」に分類される主な代替薬を以下に整理します。mhlw+1
| 一般名 | 代表的な商品名 | 主な特徴 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| スクラルファート水和物 | アルサルミン | 胃粘膜被覆保護、抗ペプシン作用 | アルミニウム含有:腎機能低下患者は要注意 |
| ポラプレジンク | プロマック顆粒・錠 | 亜鉛錯体、胃粘膜修復促進、H.pylori除菌補助 | 亜鉛過剰摂取に注意、長期投与時は血清亜鉛値を確認 |
| アルジオキサ | アルジオキサ錠 | アルミニウム・アラントイン複合体、粘膜保護 | 腎機能低下患者ではアルミニウム蓄積リスク |
| アズレンスルホン酸ナトリウム | マーズレンS顆粒など | 抗炎症・粘膜修復作用、副作用が少ない | 単独では抗ペプシン作用が弱い |
代替薬を選ぶ際には、「患者の腎機能」「H.pylori感染の有無」「既存の処方との相互作用」の3点を必ず確認することが原則です。
アルミニウム含有薬(スクラルファート・アルジオキサ)は透析患者や腎機能低下患者には使用できません。 エカベトナトリウムが「腎機能低下でも減量不要」という強みを持っていた点を踏まえると、この患者層への代替薬選択には特に慎重な検討が必要です。med.towayakuhin.co+1
ガストローム顆粒の在庫消尽時期は2025年9月上旬頃とされており、すでに入手できない可能性があります。 対応が後手に回ると、処方箋応需ができず患者への治療継続が途切れるリスクがあります。
参考)https://drugshortage.jp/drugdata.php?drugid=300338
以下の手順で早急に対応してください。
スポーツ選手の患者がいる場合は対応を急いでください。
アセタゾラミドのドーピング問題が示すとおり、薬剤情報の見落としが競技者の人生に直結します。 アンチ・ドーピングの観点からも、処方薬の成分確認と代替薬への切替は「できるだけ早く」ではなく「今すぐ」の対応が求められます。sawai+1
厚生労働省:エカベトNa顆粒66.7%「サワイ」回収情報(公式)
DSJP 医療用医薬品供給状況DB:ガストローム顆粒の供給・中止状況リアルタイム情報