医療現場で「塩化カリウム→アスパラカリウム」に切り替えるとき、まず揃えるべき単位はmEqです。カリウム(K+)は1価の陽イオンなので、mEqは基本的にmmolと同じ感覚で扱えます(1 mmol=1 mEq)。そのため、製剤の規格表示が「mg」中心でも、最終的には「何mEq投与しているか」を共通言語として比較するのが安全です。
ただし、ここで重要なのは「mEqに揃えれば完全に等価」ではない点です。カリウム製剤は成分(塩化カリウム、アスパラギン酸カリウム、グルコン酸カリウム)により細胞内移行性や体内保有率が異なるため、カリウム含有量だけで単純に等価換算できない、という注意が公的なQ&Aでも明記されています。実務では、切替え時の初回用量は“目安”として換算し、切替え後に血清カリウム濃度を測定して用量調整する、という運用が推奨されています。
換算の発想を整理すると、次の2段階が分かりやすいです。
この「①mEq/日→②割り算」の形に落とすと、用量設計の途中でmgやgが出てきても混乱しにくくなります。逆に、mg同士で換算しようとすると、分子量や含有量(Kとして何%か)を都度意識する必要が出て、計算ミスが起こりやすくなります。
現場で頻出するのは「塩化カリウム徐放錠」や「アスパラカリウム散・錠」への切替えです。換算に使える“規格の早見”として、医療従事者向けの換算表では以下が示されています。
- アスパラカリウム錠300mg:1.8mEq/錠
- アスパラカリウム散50%:2.9mEq/g
- 塩化カリウム徐放錠600mg:8mEq/錠
- 塩化カリウム(散などの成分製剤):13.4mEq/1g
この時点で、「塩化カリウム600mg=8mEq」と「塩化カリウム1g=13.4mEq」が並んでいることに違和感を覚える人もいます。ここが最初の落とし穴で、同じ“塩化カリウム”でも剤型・規格が異なるため、「何mEqを投与している製剤なのか」を必ず製品ベースで確認する必要があります。単純に「KClは1gあたり何mEq」と覚えてしまうと、徐放錠の規格(1錠8mEq)を見落としやすくなります。
実務で役立つ計算の型(例)を、同じ構造で並べます。
32mEq ÷ 1.8mEq/錠 = 17.7錠/日(端数処理と服薬回数の再設計が必要)
16mEq ÷ 2.9mEq/g = 5.5g/日(分割回数や服薬しやすさも考慮)
ここで一気に錠数やg数が増える計算結果になることがあります。これは換算が間違いというより、「規格あたりのmEqがそもそも違う」ために起こる現象です。特に散剤はgで出てくるので、患者さんの服薬負担、味、服薬回数、配合変化など、薬学的な論点が同時に立ち上がります(換算は“数合わせ”では終わりません)。
また、換算表には「常用量対比」での比(アスパラK:グルコン酸K:塩化カリウム錠:塩化カリウム散=16:40:36:134)が紹介されていることがあります。これは「それぞれの1日用量の上限同士を治療学的に等量とみなし、比例計算する」という考え方で、切替え初回用量の目安に使うという位置づけです。ただし、同じ資料内でも“塩化カリウム散は常用量の幅が大きく紛らわしいためmEqで比較した方が安全”という議論があり、散の扱いは特に慎重さが求められます。つまり、常用量対比は便利でも、万能な等価換算ではありません。
(塩化カリウムとアスパラカリウムのmEq換算表、常用量対比の考え方、散の注意点がまとまっている)
https://kanri.nkdesk.com/drags/asuparak.php
「常用量対比」という言葉が出てきたとき、医療従事者が押さえておくべきポイントは2つあります。ひとつは、これは“薬理学的に完全に等価”という意味ではなく、切替え時の初回用量を決めるための実務的な近似であること。もうひとつは、その近似が必要になる理由として、カリウム製剤ごとに細胞内移行性や体内保有率が異なることが挙げられている点です。
公的な薬剤情報のQ&Aでは、カリウム製剤は「カリウム含有量のみでは単純に等価換算できない」と明確に述べたうえで、確定された換算式はないが、常用量対比で換算した量を切替え時の目安の初回用量とし、切替え後に血清Kを測定して用量調整する方法がある、とされています。さらに、ラット赤血球への細胞内取り込みが「グルコン酸カリウム>アスパラギン酸カリウム>塩化カリウム」の順、という相対差にも言及があります。ここは“意外な情報”として重要で、同じmEqを投与しても、製剤が変わると体内分布のされ方が違う可能性が示唆されます。
この記載から導ける現場運用の要点は、次の通りです。
実際、切替えの怖さは「不足」だけでなく「過量」にもあります。特に、散剤への切替えでg数が増えた結果、患者さんが自己判断で増減したり、計量ミスが起きたりすると、処方意図と実服用量がズレます。したがって、薬剤選択(錠か散か、徐放か即放か)と、患者背景(服薬アドヒアランス、認知機能、嚥下、食事摂取状況)を同じ画面で評価することが、換算の質を上げます。
(常用量対比の定義、等価換算が難しい理由、切替え後の血清Kモニタリングの必要性が公的Q&Aとしてまとまっている)
https://www.fpa.or.jp/johocenter/yakuji-main/_1635.html?blockId=81432&dbMode=article
換算の目的は「数字を合わせる」ことではなく、「患者の血清Kを適正域に近づける」ことです。そのため、換算の計算式と同じくらい、低カリウム血症・高カリウム血症の背景因子を押さえる価値があります。換算表の解説でも、一般的な血清カリウム基準値として3.5〜5.0mEq/Lが挙げられ、低Kの原因として利尿薬、下痢・嘔吐、摂取不足、アルカローシス、インスリン大量投与やβ刺激薬などが列挙されています。
ここでの実務ポイントは、「原因が続いている限り、換算してもKは上がりにくい」ことです。たとえばループ利尿薬が継続されている、下痢が止まっていない、アルカローシスが強い、インスリン治療で細胞内移動が起きている、といった状況では、同じmEqを入れても血清Kは期待通りに動かないことがあります。逆に、腎機能が低下している、ACE阻害薬/ARB、MRA(スピロノラクトン等)、トリメトプリム、NSAIDsなど高Kに寄りやすい条件が重なると、換算の“つもり”が過量補正に転ぶリスクがあります(ここは院内の薬歴・検査値・併用薬レビューとセットで管理する領域です)。
また、塩化カリウムとアスパラカリウムで悩む現場では「Cl負荷」や「酸塩基」も話題になりがちです。しかし、経口補正の多くは総量としてはそこまで大きなCl負荷にならないことも多く、個々の病態(代謝性アルカローシスの補正が必要か、胃液喪失があるか)と、製剤の飲みやすさ・継続性を天秤にかける方が、結果的に安全に働く場面が少なくありません。換算式にこだわり過ぎて、服薬継続性が落ちると、実際の補正効果が下がるからです。
最後に、切替え後のチェックとして実用的な確認リストを示します(入れ子にせず、現場でそのまま使える形にします)。
検索上位で多いのは「mEq換算の表」「常用量対比」「切替えツール」ですが、現場で本当に事故につながりやすいのは“計算そのもの”より「換算ルールの混線」です。ここでは独自視点として、ヒヤリ・ハットを生みやすい典型パターンを、敢えて具体的に言語化します。換算ができる人ほど、忙しい状況では次のような“脳内ショートカット”が起きます。
上のパターンを潰すコツは、「換算式を賢くする」より「運用を単純化する」ことです。たとえば施設内で、以下のように“統一ルール”を決めるだけでヒヤリは減ります。
特に“意外と見落とされる”のが、換算結果が現実的でないときに、計算ミスではなく「製剤選択の問題」である可能性です。アスパラカリウム錠へ換算したら1日18錠近くになる、散だと1日5〜6gになる、といった状況では、患者の受け入れ可能性を先に評価し、別の製剤や投与設計(回数変更、分包、服薬タイミング調整)を検討した方が、最終的な血清Kの安定につながることがあります。換算は“正しい数字”を出す作業ですが、治療は“続く形”に落とし込む作業でもあるためです。

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