フェロ・グラデュメット錠は、硫酸第一鉄を鉄として105mgを含有する徐放性製剤です。この薬剤は米国アボットラボラトリーズで開発され、1964年に日本で承認されました。最大の特徴は、多孔性のプラスチック格子(グラデュメット)の間隙に硫酸鉄を含有し、消化管内で物理的拡散により鉄を徐々に放出する点にあります。
参考)https://www.viatris-e-channel.com/viatris-products/di/detail/assetfile/Fero-Gradumet_Tab_IF.pdf
徐放性の仕組みにより、急激に高濃度の鉄を胃腸粘膜に接触させることがありません。そのため、胃の中で急速に鉄を放出しないので胃粘膜に対する刺激が少なく、鉄吸収効率の高い空腹時にも投与することができます。この製剤学的工夫により、経口鉄剤に多い嘔気、嘔吐、食欲不振などの胃腸症状の副作用を軽減できます。
参考)https://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1amp;yjcode=3222007G1033
副作用発現頻度に関する国内文献では、712例中43例(6.0%)に副作用がみられ、主なものは悪心・嘔吐(2.8%)、食欲不振(0.8%)、腹痛(0.7%)等の消化器症状でした。錠剤サイズは直径9.9mm、厚さ3.8mm(体積1,169mm²)、重さ410mgと、他の鉄剤と比較してコンパクトな設計となっています。
参考)『フェロミア』と『フェロ・グラデュメット』、同じ鉄剤の違いは…
フェロミアは、クエン酸第一鉄ナトリウムを有効成分とする非イオン型鉄剤です。この薬剤の最大の特徴は、酸性から塩基性(アルカリ性)に至る広いpH域で溶解し、中性から塩基性溶液中でも腸管からの吸収が可能な溶けやすい低分子鉄として溶存する特性を持つことです。
参考)公益社団法人 福岡県薬剤師会 |質疑応答
非イオン型であるため、胃腸粘膜を刺激する鉄イオンを遊離しません。そのため、胃酸分泌の低下している高齢者や、低酸症および胃切除者でも良好に吸収されます。また、胃粘膜に対する刺激や食事の影響による吸収の低下が少ないという利点もあります。
参考)フェロミア錠/顆粒(クエン酸第一鉄ナトリウム)に含まれている…
フェロミアとフェロ・グラデュメットの貧血治療効果には差がないとされており、1日1~2回で服用するという用法も同じです。しかし、フェロミアの錠剤サイズは直径10.3mm、厚さ5.0mm(体積1,665mm²)、重さ550mgと、フェロ・グラデュメットよりやや大きめです。タンニン酸含有物との併用で吸収に差がないと報告されていますが、キレート形成する可能性は残ります。
参考)フェロミアとフェログラデュメットの違い・使い分け・副作用【フ…
経口鉄剤の服用患者の10%~20%に、悪心、腹痛、腹部不快感、便秘、下痢などの消化器症状の副作用が現れます。これらの消化器症状は、遊離した鉄イオンによる消化管粘膜刺激作用が原因です。特に、Fe2+(第一鉄)の方がFe3+(第二鉄)よりも悪心・嘔吐の発現頻度が有意に高いとされています。
参考)https://omaezaki-hospital.jp/-/wp-content/uploads/2022/09/2f3734e3a02c5809a9078b19c755d436.pdf
副作用対策としては、まず服用時間の変更があります。鉄剤の吸収率は食後より空腹時の方が高いですが、副作用も増加するため、消化器症状が強い場合は食前投与にこだわらず、食後(食直後含む)投与や就寝前投与に変更します。食後または食事中の投与では空腹時投与の60%の吸収率となりますが、副作用を避けるために推奨されることが多いです。
参考)https://kirishima-mc.jp/data/wp-content/uploads/2023/04/28976e9258ba6acf53f8a06f6215bcfa.pdf
服用回数や投与量の変更も有効です。消化器症状の出現は1回投与量に相関して増えるため、1日1回投与の場合は2回に分割して投与したり、1日投与量を減らすことで症状が改善することがあります。一般に、服用開始後1~2週間程度で消化器症状が改善・軽減することが多く、投与量をいったん減らし、徐々に体に慣れさせてから増量する方法も可能です。
鉄剤の種類を変更することでも対応できる場合があります。硫酸鉄に比べ、クエン酸第一鉄ナトリウムのフェロミアや、フマル酸第一鉄のフェルムによる消化器症状が少なかったとする報告があります。また、最近の研究では、フェロミア使用時に消化管の副作用が気になる場合は、フェロ・グラデュメットやフェルムなどの徐放剤を使用することもあります。
参考)鉄欠乏性貧血を知る
フェロミアは、胃酸分泌が低下している高齢者や胃切除後の患者において特に有用性が高い鉄剤です。通常の鉄剤では、食物由来の非ヘム鉄は第二鉄(+3)であり、胃分泌物により第一鉄(+2)に還元されて食物中の結合体から外れる必要があります。しかし、胃酸分泌が不十分な場合、この還元プロセスが十分に進まず、鉄の吸収が低下する可能性があります。
参考)https://faq-medical.eisai.jp/faq/show/315?category_id=56amp;site_domain=faq
フェロミアに含まれるクエン酸第一鉄ナトリウムは、広いpH域で溶解する特性を持つため、胃酸の影響を受けずに安定して吸収されます。そのため、低酸症および胃切除者でも良好に吸収され、胃切除後鉄欠乏性貧血に対する治療成績も良好です。高齢者では加齢に伴い胃酸分泌が低下することが多いため、フェロミアの選択は理にかなっています。
参考)https://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1amp;yjcode=3222013D1059
一方、フェロ・グラデュメットは、徐放性により副作用を抑えることで、副作用が強い患者に適しています。胃切除後や高齢者の鉄補充には、胃酸の影響を受けにくいフェロミアが第一選択となることが多いですが、消化器症状が問題となる場合はフェロ・グラデュメットへの変更も検討されます。患者の背景と症状に応じた適切な選択が、治療継続率を高める鍵となります。
参考)鉄欠乏性貧血の治療 |貧血|大阪市北区「南森町駅」「大阪天満…
鉄は主に十二指腸から空腸上部で吸収されます。1日の食事中に約10~20mgの鉄が含まれており、そのうち約1~2mgが吸収されます。食品に含まれる鉄には、ヘム鉄と非ヘム鉄があり、ヘム鉄は還元型であるため、たんぱく質が結合したそのままの形で十二指腸から空腸上部で吸収されます。非ヘム鉄は可溶化された後に吸収可能となります。
参考)鉄欠乏性貧血 - 11. 血液学および腫瘍学 - MSDマニ…
鉄剤とお茶の相互作用については、長年議論されてきました。お茶に含まれる渋み成分のタンニン(カテキン)が鉄にくっついてしまい、吸収されにくくなると言われていましたが、最近の研究によると、よほど濃いお茶でない限りそれほど影響がないことが分かってきました。特にフェロミアは緑茶で飲んでも吸収や治療効果に影響しないことが確認されています。
参考)一般社団法人柏市薬剤師会 - 90:飲料とお薬の相互作用
しかし、医療従事者として注意すべき点もあります。乳製品、野菜繊維のフィチン酸塩およびポリフェノール、リンタンパク質を含む茶のタンニン酸塩、ブラン(小麦の皮)などにより非ヘム鉄の吸収は減少します。また、特定の抗菌薬(テトラサイクリンなど)も鉄の吸収を低下させます。一方、アスコルビン酸は非ヘム鉄の吸収を増加させることで知られる唯一の一般食品成分です。
| 項目 | フェロ・グラデュメット | フェロミア |
|---|---|---|
| 有効成分 | 硫酸第一鉄(徐放性) | クエン酸第一鉄ナトリウム |
| 鉄含有量 | 105mg/錠 | 50mg/錠 |
| 製剤特性 | 徐放性により緩やかに鉄を放出 | 広いpH域で溶解、胃酸不要 |
| 副作用発現頻度 | 6.0%(悪心・嘔吐2.8%) | 非イオン型で胃腸刺激が少ない |
| 錠剤サイズ | 直径9.9mm、厚さ3.8mm | 直径10.3mm、厚さ5.0mm |
| 適応患者 | 副作用に敏感な患者、服用しやすさ重視 | 胃切除後、高齢者、低酸症患者 |
| 服用方法 | 1日1~2回、空腹時または食直後 | 1日1~2回 |
| お茶の影響 | タンニンとの結合に注意 | 緑茶で飲んでも影響なし |
医療従事者として、鉄剤の服薬指導で重要なのは、患者さんに継続服用の重要性を理解してもらうことです。経口鉄剤は胃腸障害や便通異常などの消化器系の副作用が出やすいため、治療を中断してしまう方が多いからです。副作用として吐き気、嘔吐、胸焼け、腹痛、下痢、便秘、便の黒色化などがあることを事前に説明し、理解を得ることが大切です。
参考)https://minacolor.com/articles/2646
便の黒色化は、鉄剤による正常な反応であり、治療効果の指標となることを説明すべきです。また、吐き気などの副作用が出ても、徐々に慣れてそれほど気にならなくなることもあります。しかし、症状が強い場合は無理に継続せず、主治医に相談するよう指導します。
参考)公益社団法人 鳥取県医師会
📌 服薬指導の重要ポイント
参考)鉄剤
また、鉄欠乏性貧血の治療では、多くの患者さんが1~2ヶ月で症状が改善しますが、体内の鉄貯蔵を回復させるためにはさらに継続が必要です。ヘモグロビン値が正常化しても、医師の指示があるまで継続することが重要であることを伝えます。さらに、食事からの鉄摂取を増やすアドバイスも併せて行うと、治療効果が高まります。
参考)https://pharmacist.m3.com/column/kurumi/2913
日本薬剤師会「鉄剤のフェロミア、フェロ・グラデュメットの製剤的特徴」では、両剤の詳細な比較情報が医療従事者向けに提供されています
薬剤師のための専門情報サイトでは、フェロミアとフェログラデュメットの使い分けと副作用対策について詳しく解説されています
霧島医療センター薬剤部DIニュースでは、経口鉄剤による消化器症状が起きた場合の具体的な対策がまとめられています
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