グルカゴン内視鏡 前処置 用法 用量 禁忌

グルカゴン内視鏡の前処置で、用法・用量、禁忌、副作用、糖尿病患者の注意点まで臨床目線で整理し、現場で迷いやすい観察ポイントも深掘りしますが、どこを最優先で押さえるべきでしょうか?

グルカゴン内視鏡 前処置

グルカゴン内視鏡 前処置の実務ポイント
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目的

消化管の蠕動を抑えて観察条件を整え、検査の質と時間効率を上げる。

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用法・用量と作用時間

0.5~1単位を筋注/静注。作用持続は筋注で約25分、静注で15~20分が目安。

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安全管理

褐色細胞腫は禁忌。糖尿病は血糖変動、検査後の低血糖や血圧低下にも注意。

グルカゴン内視鏡 前処置の目的と作用

グルカゴンを内視鏡の前処置として使う主目的は、胃や腸の蠕動を抑えて「見たい瞬間」に視野を安定させることです。添付文書でも「消化管のX線及び内視鏡検査の前処置」が効能・効果として明記され、消化管蠕動運動と消化液分泌の抑制効果がある、と整理されています。
この“蠕動が落ちる”という現象は、鎮静とは別物です。鎮静は患者の不安・苦痛を下げますが、蠕動抑制は観察条件を上げます。ここを混同すると、鎮静量を増やして「動くから見えない」を解決しようとしてしまい、呼吸抑制など別のリスクを増やしかねません。
また、グルカゴンは血糖を上げるホルモンとして有名ですが、添付文書には「インスリン分泌促進作用」も記載されており、これが“二次的な低血糖”につながり得る点がポイントです。内視鏡部門では「前処置=検査前だけの話」と捉えがちですが、実際には“検査後”の観察や補食の設計まで含めて前処置が完結します。
参考:用法・用量(消化管X線・内視鏡検査の前処置)、作用持続時間、禁忌・重要な基本的注意(低血糖・血圧低下など)
グルカゴン注射用1単位「イトウ」添付文書(前処置の用量・作用時間・注意点)

グルカゴン内視鏡 用法・用量と投与タイミング

添付文書上、消化管X線および内視鏡検査の前処置としては、通常0.5~1USP単位を筋肉内または静脈内に投与します。作用持続時間の目安も明確で、筋注は約25分、静注は15~20分とされます。
現場運用でのコツは「検査開始時点で効かせる」よりも、「蠕動が観察のボトルネックになった局面で効かせる」発想を持つことです。とくに検査枠がタイトな施設では、前室で一律投与にしてしまうと、患者導線の遅れで“効いている時間を待合で消費する”ことがあります。作用時間が長くない薬剤だからこそ、内視鏡室の入室・挿入・観察の流れと投与タイミングを擦り合わせるのが実務的に効きます。
もう一つは「筋注か静注か」の選択です。添付文書上は両方が選択肢で、持続は筋注の方が長い一方、静注は短く切れます。どちらが良いかは“検査の長さ”と“患者リスク”で決めるのが合理的で、例えば短時間の観察で十分な症例に長めの抑制をかける必然性は下がります。
なお「年齢、症状により適宜増減」とも書かれているので、施設プロトコル(標準量、最大量、再投与の扱い)を作り、看護師・医師間で投与判断のブレを減らすと安全性が上がります。

グルカゴン内視鏡 禁忌と慎重投与

グルカゴンの禁忌として最重要なのは、褐色細胞腫です。添付文書では、カテコールアミン遊離を刺激して急激な血圧上昇を招くおそれがあるため、褐色細胞腫の患者には投与しないと明記されています。
慎重投与として挙げられているのは、心疾患のある高齢者、糖尿病患者、肝硬変など肝の糖放出能が低下している肝疾患、糖原病Ⅰ型などです。内視鏡前に短時間で問診確認するなら、少なくとも「褐色細胞腫」「糖尿病」「重い肝疾患」「心疾患・高齢」あたりは、チェックリスト化して取りこぼしを減らすのが現実的です。
意外に盲点になるのが“糖原が枯渇している状態”です。添付文書では、血糖上昇作用が主として肝グリコーゲン分解によるため、飢餓状態などでは血糖上昇効果がほとんど期待できない、とされています。つまり「効かない可能性がある」だけでなく、効かないことを前提に救急手順や観察を組み立てる必要がある、ということです。内視鏡の前処置では“蠕動抑制目的”で使っていても、薬理学的には全身作用を持つ薬剤である点を忘れないようにします。

グルカゴン内視鏡 副作用と観察(血圧・低血糖)

添付文書上、重大な副作用としてショック/アナフィラキシーショック、低血糖が挙げられています。さらに重要な基本的注意として、前処置で使用した場合でも「投与直後だけでなく、検査終了後にも血圧低下があらわれることがある」ため、検査終了後も十分観察するよう記載があります。
ここは医療安全の“設計”が効くポイントです。例えば、回復室での観察項目に「血圧」「冷汗・顔面蒼白」「眠気やふらつき(低血糖のサインにもなり得る)」を明示し、いつまで観察するか、異常時の連絡先、ブドウ糖投与の準備、までをセット化すると運用が安定します。
二次的低血糖の予防については、添付文書で「検査終了後、糖分を経口摂取させることが望ましい」と具体的です。鎮静を併用していると誤嚥リスクとの兼ね合いも出るため、「覚醒と嚥下の確認」「補食の量とタイミング」「帰宅時の注意(運転等)」を看護指導のテンプレに落とし込むと抜けが減ります。
また、添付文書ではめまい・ふらつき・意識障害の可能性にも触れており、高所作業や自動車運転など危険を伴う機械操作に注意するよう記載があります。健診内視鏡の受診者は“検査後に自分で運転して帰る”ケースもあるので、施設として説明責任を果たす意味でも、受付段階から帰宅手段の確認をしておくとトラブルを避けやすいです。
参考:糖尿病患者での前処置使用の考え方、二次的低血糖の理由(インスリン分泌促進)、空腹時血糖の目安の議論
福岡県薬剤師会:糖尿病患者の内視鏡前処置にグルカゴンを使用してよいか

グルカゴン内視鏡 糖尿病での独自視点:説明と運用の落とし穴

検索上位の解説は「糖尿病では血糖が上がるから注意」「二次的低血糖がある」といった薬理学中心になりがちですが、現場で本当に事故につながるのは“説明の断絶”です。具体的には、内視鏡室は「蠕動を止める薬」として説明し、外来や糖尿病チームは「血糖に影響する薬」として説明し、受診者は両者を統合できずに帰宅後の対応を誤る、というパターンが起きます。
そこで独自視点として、説明を「薬の名前」ではなく「起こりうる事象」で統一するのが有効です。例えば、患者向けには「検査後しばらくして、冷汗・動悸・強い眠気・ふらつきが出たら低血糖の可能性がある」「帰宅後に食事が遅れるなら、補食の相談をしてほしい」といった行動レベルで伝えるほうが、理解度と安全性が上がります。
もう一点、糖尿病患者は検査前の絶食や下剤、当日の内服調整などで、平常時とは違う条件に置かれています。添付文書にも「糖尿病患者では血糖上昇作用により血糖コントロールに影響を及ぼすおそれがあるため、血糖値の変動等の観察を十分に行い、異常があれば直ちに適切な処置」と書かれていますが、ここでいう“観察”は院内だけでは足りないことがあります。健診や日帰り内視鏡では、帰宅後の血糖測定や食事再開のタイミングまで含めた個別確認が必要です。
実務の落とし穴として、グルカゴン投与後の「高血糖」を恐れてインスリンを自己調整で追加してしまい、その後の二次的低血糖と重なって症状をこじらせるケースも理屈としては想定できます。薬剤師・看護師が“当日の自己判断での追加インスリンは避け、いつも通りのルールに戻す/不安なら連絡”と一言添えるだけで、リスクは下げられます。
最後に、内視鏡チーム側の運用としては、糖尿病患者にグルカゴンを選ぶ際に「採血や血糖測定の導線」をどうするかを決めておくのが重要です。例えば、①投与前の指標(空腹時血糖の確認をどこまで行うか)、②投与後~回復室の観察項目、③補食の可否判断、④帰宅後の注意(運転・入浴・仕事)を、1枚のチェックシートにまとめると、忙しい時間帯でも質が担保しやすくなります。

観点 現場での確認ポイント
禁忌 褐色細胞腫の有無は必ず確認する(該当なら投与しない)。
用法・用量 0.5~1単位を筋注/静注、作用時間(筋注約25分・静注15~20分)を前提に導線を設計する。
検査後観察 投与直後だけでなく検査終了後の血圧低下もあり得るため、回復室で血圧・症状を追う。
低血糖対応 二次的低血糖が起こり得るので、検査後の糖分摂取やブドウ糖準備をルール化する。