痛みのNRS評価、あなたの判断は患者のスコアと平均2ポイントずれている可能性があります。
痛みは大きく3つに分類されます。この分類が、看護ケアの方向性を決める出発点になります。
まず体性痛は、皮膚・筋肉・骨・関節など体表や運動器に由来する痛みです。「ズキズキする」「刺すような鋭い痛み」という表現が典型で、局在がはっきりしているため患者自身が指で示せることが多いです。術後の創部痛や骨折の痛みがこれにあたります。
内臓痛は、消化管や泌尿器などの内臓が原因の痛みです。「重い」「締め付けられる」「押されるような鈍い痛み」と表現され、局在があいまいで広い範囲に広がります。また悪心・嘔吐・発汗といった自律神経症状を伴いやすい点が特徴です。つまり内臓痛は体性痛より原因部位の特定が難しいということですね。
神経障害性疼痛は、神経そのものが傷害されることで生じます。「電気が走るような」「焼けるような」「ビリビリとした」という独特の表現が見られ、帯状疱疹後神経痛や糖尿病性神経障害などが代表例です。 通常の鎮痛薬(NSAIDsなど)が効きにくく、神経障害性疼痛専用の薬剤(抗うつ薬・抗けいれん薬など)が必要になるため、分類を正確に見抜くことが治療効果に直結します。これが条件です。 jspc.gr(https://www.jspc.gr.jp/igakusei/igakusei_bunrui.html)
| 分類 | 障害部位 | 痛みの性状 | 局在 | 主な例 |
|---|---|---|---|---|
| 体性痛 | 皮膚・骨・筋肉・関節 | 鋭い・ズキズキ | 明確 | 術後創部痛、骨折 |
| 内臓痛 | 内臓・消化管 | 鈍い・締め付け感 | 不明確・広範囲 | 胆石疝痛、腸閉塞 |
| 神経障害性疼痛 | 末梢・中枢神経 | 電撃様・灼熱感 | 神経支配領域 | 帯状疱疹後神経痛、糖尿病性神経障害 |
日本ペインクリニック学会:痛みの機序と分類(体性痛・内臓痛・神経障害性疼痛の詳細説明)
痛みの分類を理解する上で、関連痛(放散痛)は特に注意が必要な概念です。内臓の痛みが、実際の障害部位とは離れた皮膚や筋肉の痛みとして感じられる現象です。 kango-roo(https://www.kango-roo.com/learning/2413/)
典型例は、狭心症や心筋梗塞の患者が「左肩から左手の内側が痛い」と訴えるケースです。看護師が体性痛として対応してしまうと、致命的な心疾患の発見が遅れるリスクがあります。これは見逃せないですね。
上腹部のがんが肩や背部の痛みとして現れることもあります。 問診で「どこが痛いですか」と聞いて患者が示した部位が、そのまま病変部位とは限りません。患者の訴えを丁寧に聞き、痛みの部位・性状・経過を総合的に判断する姿勢が看護アセスメントの核心です。 knowledge.nurse-senka(https://knowledge.nurse-senka.jp/500443)
関連痛を見抜くには、解剖学的な知識と「この痛みの訴えは本当にこの部位だけの問題か?」という疑問を持つ習慣が必要です。体の部位とデルマトームの対応を頭に入れておくと現場で役立ちます。
看護roo!:関連痛の仕組みと代表的な疾患ごとの関連痛の部位(狭心症・心筋梗塞の関連痛など)
痛みは主観的な体験であるため、客観的に数値化するためのスケールが不可欠です。代表的な3種類を整理しておきます。
NRS(Numerical Rating Scale)は、0〜10の11段階で痛みの強度を表す最も広く使われるスケールです。 「0が全く痛みなし、10が想像できる最大の痛み」として、患者に口頭で答えてもらうだけなので実施が簡便です。ただし、痛みの主観に看護師の判断が入り込みやすい点に注意が必要です。研究では、患者のNRSスコアと看護師が判断した値にズレが生じることが示されており、ICUの研究でも「看護師間でNRS値の解釈が異なる」ことが明らかになっています。 smile-nurse(https://www.smile-nurse.jp/column/nursing-knowledge/pain-rating-scale-2/)
VAS(Visual Analogue Scale)は、10cmの直線の左端を「痛みなし」、右端を「最悪の痛み」として患者にマークしてもらう方法です。 紙と定規が必要ですが、言語的な表現が難しい患者にも応用しやすいメリットがあります。 smile-nurse(https://www.smile-nurse.jp/column/nursing-knowledge/pain-rating-scale-2/)
フェイススケール(Wong-Baker Faces Scale)は、表情のイラストを使うスケールです。小児や認知機能が低下した患者への使用が推奨されます。認知症高齢者では、看護師の88.9%が「本人の言葉に着目する」と回答した調査がある一方で、実際には自己申告が難しいケースが多く、フェイススケールやAbbey Pain Scaleなどの行動観察型スケールへの切り替えが有効です。 jsncs(https://www.jsncs.jp/wp/wp-content/uploads/2025/03/2025.3.27%E5%85%AC%E9%96%8B_%E7%9C%8B%E8%AD%B7%E3%82%B1%E3%82%A2%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B9%E5%AD%A6%E4%BC%9A%E8%AA%8C_%E7%AC%AC23%E5%B7%BB1%E5%8F%B7-3.pdf)
スケール選択が条件です。患者の認知機能・コミュニケーション能力を見て使い分けることが、正確なアセスメントの第一歩になります。
ナース専科:VAS・NRS・フェイススケールの使用方法と注意点の解説
痛みを「急性痛」か「慢性痛」かで分類することも、看護介入の組み立て方を大きく変えます。
急性痛は、組織損傷や疾患に伴い発症し、原因の治療とともに消失することが期待される痛みです。術後痛・外傷・急性炎症が典型例です。これまでとは異なる突発的な痛みが出現した場合は、骨折・消化管穿孔・出血などの合併症が生じている可能性があるため、速やかに医師への報告が必要です。 急性痛管理が重要です。 knowledge.nurse-senka(https://knowledge.nurse-senka.jp/500443)
一方慢性痛は、通常の治癒期間(3か月が目安とされることが多い)を超えて続く痛みです。日本の慢性疼痛有訴者数は推計2,315万人に上り、罹患期間が「5年以上」の患者が全体の約50%を占めるという調査もあります。 これは看護ケアが長期にわたることを意味します。 hiroshima-ota(https://hiroshima-ota.jp/wptest/wp-content/uploads/2021/11/a1139ce7f310e01a1d132e350587d22b.pdf)
慢性痛の看護では、痛みの身体的な管理だけでなく、不安・抑うつ・睡眠障害など心理・社会的な側面への支援も不可欠です。厚生労働省の慢性疼痛治療ガイドラインでも、「侵害受容性疼痛・神経障害性疼痛・心理社会的疼痛」という多面的な分類が採用されています。 痛みのケアにおける全人的な視点が基本です。 mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/content/000350363.pdf)
厚生労働省:慢性疼痛治療ガイドライン(痛みの多面的分類と治療の方針)
痛みのアセスメントで最も避けるべきリスクが「過少評価(過小評価)」です。厚生労働科学研究の報告では、がん患者の21%が病棟看護師による過少評価を受けていたという結果があります。 5人に1人の割合です。 mhlw-grants.niph.go(https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2016/162021/201607003B_upload/201607003B0011.pdf)
過少評価が起きやすい背景の一つは、看護師自身の痛み体験や価値観が判断に影響することです。 「この程度の痛みは我慢できるはず」という先入観が、鎮痛薬使用の判断を遅らせることがあります。痛いですね。 i-repository(https://www.i-repository.net/il/user_contents/02/G0000632repository/kdk2004002.pdf)
また、認知症高齢者や小児など「言葉で訴えられない患者」では特にリスクが高まります。認知症を持つがん高齢者では疼痛の過小評価・過少治療が繰り返し報告されています。 疼痛が緩和されないと、せん妄やBPSD(認知症の行動・心理症状)が悪化するという悪循環を生みます。 hsuh.repo.nii.ac(https://hsuh.repo.nii.ac.jp/record/11049/files/%E5%85%A8%E6%96%87_%E6%AB%BB%E5%BA%AD%E5%A5%88%E7%BE%8E.pdf)
過少評価を防ぐための具体的な観察ポイントは以下のとおりです。
- 😐 表情・顔のしかめ・歯を食いしばる動作
- 🖐️ 患部をかばう・触ろうとしない体の動き
- 💧 発汗・頻脈・血圧上昇などの自律神経サイン
- 😴 睡眠障害・夜間の不眠や中途覚醒
- 🚶 活動量の低下・ADLの変化(動くのを嫌がる)
言葉だけに頼らない、多角的な観察が条件です。救急外来における研究では、疼痛評価に関する教育介入を行った結果、痛みの初期評価実施率が19.5%から59.8%へと約3倍に改善したというデータもあります。 教育と標準化されたプロトコルの導入が、現場の評価精度を大きく変えることが示されています。 note(https://note.com/jolly_lily4626/n/n0d8e3a7a418c)
厚生労働科学研究:がん患者の疼痛評価における看護師の過少評価に関する研究報告