交感神経系の働きと受容体の機能

交感神経系は心身の興奮状態を調節する重要な神経系で、受容体との相互作用により多様な生理機能を制御します。カテコールアミンやストレス反応の仕組みを詳しく解説します。その働きとは一体どのようなものでしょうか?

交感神経系の働き

交感神経系の基本機能
興奮・覚醒反応

心拍数増加、血圧上昇、呼吸促進による身体活性化

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受容体システム

α受容体とβ受容体による多彩な生理機能調節

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適応反応

ストレス環境における生体防御システムの作動

交感神経系の基本的な機能と役割

交感神経系は自律神経系の重要な構成要素で、身体を「興奮モード」に切り替える役割を担います 。この神経系は、危険や緊急事態に際して身体の状態を整える「闘争・逃走反応」を司り、心拍数を増やし、心臓の収縮力を高め、呼吸がしやすくなるように気道を拡張します 。
参考)https://setagayanaika.com/blog/1020

 

交感神経の神経細胞は脊髄の側柱にあり、胸髄(T1~T12)と腰髄(L1~L3)のレベルで節前線維を脊髄外に出しています 。この構造により、全身の臓器に対して統合的な制御を行うことができます。
参考)https://www.kango-roo.com/learning/2169/

 

交感神経が活性化されると、以下のような身体変化が起こります。

  • 脳血管の収縮
  • 瞳孔の拡大と涙の分泌抑制
  • 唾液分泌の減少
  • 気管支拡張
  • 心拍数増加
  • 消化機能の抑制
  • 排便・排尿の抑制
  • 発汗による体温調節
  • 末梢血管収縮

    参考)https://manaclinic.jp/autonomic_nervous_system

     

交感神経系の受容体システム

交感神経系の作用は、主にアドレナリン作動性受容体を介して発現されます 。これらの受容体は、α受容体とβ受容体の2つの主要なタイプに分類され、さらに細かなサブタイプに分けられます。
参考)https://www.kango-roo.com/learning/2171/

 

α受容体の特徴

  • α1受容体:主として血管平滑筋に存在し、血管収縮に関与
  • α2受容体:交感神経終末に存在し、ノルアドレナリンの過剰遊離を抑制するネガティブフィードバック機能を持つ自己受容体

β受容体の機能

  • β1受容体:心臓機能亢進(心拍・拍出力増加)、レニンおよび抗利尿ホルモン放出促進
  • β2受容体:平滑筋弛緩(気管支、血管、胃腸管、子宮、膀胱壁)、グリコーゲン分解、インスリン分泌亢進
  • β3受容体:脂肪分解亢進、血管弛緩、心筋収縮抑制

これらの受容体は、Gタンパク質共役受容体として機能し、cAMPやその他のセカンドメッセンジャーを介して細胞内シグナル伝達を調節しています 。
参考)https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/07-%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E4%BC%9D%E9%81%94/%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E4%BC%9D%E9%81%94

 

交感神経系とカテコールアミン

交感神経系の機能は、カテコールアミンと呼ばれる神経伝達物質によって媒介されます 。カテコールアミンは副腎から合成・分泌される神経伝達物質の総称で、主に以下の3種類があります:
参考)https://www.kango-roo.com/word/9479

 

アドレナリン(エピネフリン)
副腎髄質で分泌されるカテコールアミンの約80%を占める神経伝達物質です。ストレス時に交感神経を活発化させ、心拍数や血圧上昇、発汗を促進してストレスから身体を保護します 。
ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)
交感神経節後繊維の主要な化学伝達物質として機能し、末梢血管を収縮させて血圧を上昇させる作用があります 。中枢神経系では独立した神経系の伝達物質として作用します。
ドーパミン
中枢神経系に存在し、感動や快感、意欲に関係する神経伝達物質です 。パーキンソン病統合失調症などの神経疾患との関連も指摘されています。
カテコールアミンは交感神経節や副腎髄質から分泌され、血圧上昇、心拍数増加、グリコーゲン分解促進、インスリン分泌抑制など多様な生理反応を引き起こします 。
参考)https://medical-term.nurse-senka.jp/terms/1369

 

交感神経系とストレス適応反応

交感神経系は、ストレス状況における身体の適応反応において中核的な役割を果たします 。ストレッサーが加わると、視床下部を通じて交感神経系が活性化され、迅速な身体反応が開始されます。
参考)https://kokoro.mhlw.go.jp/mental-health-pro-topics/mh-pro-topics005/

 

急性ストレス反応
不安や恐怖を感じると、自律神経系が興奮し、動悸、息苦しさ、血圧上昇、発汗、口渇、肩こりなどの身体症状が現れます 。これは危険回避と自己防衛のための生理的反応です。
慢性ストレスの影響
長期間ストレッサーにさらされ続けると、交感神経が持続的に優位となり、交感神経と副交感神経のバランスが崩れます 。この状態では、ホルモン分泌系や免疫系にも影響を与え、様々な疾患の発症リスクが高まります。
参考)https://www.japa.org/mental_health/stress/body.html

 

ストレス反応の3段階
セリエが提唱したストレス反応の3相期では、初期の抗ショック相でアドレナリンが分泌され、交感神経系の活動が活発になり、覚醒・活動水準が高まります 。時に過覚醒や過活動状態になることもあります。
参考)https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/002/003/010/003.htm

 

交感神経系の現代医学への応用

交感神経系の理解は、現代医学において重要な治療応用をもたらしています。カテコールアミンの薬理学的作用を利用した医療では、敗血症性ショックの昇圧薬としてノルアドレナリンが使用され、心停止やアナフィラキシーの際にはアドレナリンが投与されます 。
自律神経障害の診断
交感神経系の機能評価は、パーキンソン病やその類縁疾患における重篤な自律神経障害の診断に不可欠です 。これらの疾患では、血圧の著しい低下による失神発作、腸閉塞を起こしかねない便秘、頻尿や尿閉などの症状が現れることがあります。
参考)https://www.itsuki-hp.jp/radio/130310

 

精神医学への貢献
交感神経系の過活動は、不安障害やパニック障害などの精神疾患とも密接に関連しています 。適切な診断と治療により、自律神経バランスの正常化を図ることが可能です。
参考)https://ginza-pm.com/treatment/stress.html

 

薬物療法の標的
β受容体遮断薬や α1受容体遮断薬など、交感神経系受容体を標的とした薬物療法は、高血圧、心疾患、前立腺肥大症など多くの疾患治療に応用されています 。
参考)http://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/128/4/128_4_259/_article/-char/ja/

 

交感神経系の詳細な理解は、生理学的メカニズムの解明から臨床応用まで、医学のあらゆる分野において重要な意義を持っています。この知識は、より効果的な治療法の開発や予防医学の進歩に寄与し続けています。