環軸関節亜脱臼の原因とリウマチ・外傷の関連機序

環軸関節亜脱臼は関節リウマチや外傷だけでなく、多彩な原因で生じる上位頸椎の不安定性です。見逃しやすい初期症状や特徴的な病態メカニズムを解説します。あなたの診断精度を高めるヒントは何でしょうか?

環軸関節亜脱臼の原因と機序

関節リウマチ患者なら誰でも頸椎病変を起こすとは限りません。


この記事の3ポイント
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多様な原因疾患

関節リウマチの約30%に発症するが、ダウン症やモルキオ病などの先天性疾患、外傷性、加齢性などの原因が存在

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靭帯損傷のメカニズム

環椎横靭帯の弛緩や断裂、歯突起の骨破壊(erosion)が環軸関節の不安定性を引き起こす

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診断基準ADI

環椎歯突起間距離が成人で3mm以上、小児で4mm以上で亜脱臼を疑い、5mm以上で手術適応を検討


環軸関節亜脱臼のリウマチ性原因

関節リウマチ患者における環軸椎亜脱臼の発症頻度は約30%と報告されていますが、研究によっては20〜50%超と大きな幅があります。この発症率の差は、環椎と軸椎のズレを測定する際の精度によって変わってきます。関節リウマチでは全身の関節に炎症をきたしますが、特に頸椎病変は頻度として多く、進行すれば日常生活に与える影響も大きいため早期からの予防・対策が重要です。 neurotech(https://neurotech.jp/medical-information/rheumatoid-arthritis-and-atlantoaxial-subluxation/)


発症メカニズムとしては、リウマチによるパンヌス形成が環椎横靭帯の弛緩や断裂、さらに歯突起のerosion(骨破壊)を引き起こすことが挙げられます。パンヌスというのは炎症性の肉芽組織のことで、これが靭帯組織を侵食していきます。歯突起が顕著に侵食されると環椎歯突起間距離(ADI)が著明に拡大し、後方亜脱臼やC2歯突起底部の陥凹が生じるのです。 msdmanuals(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/multimedia/image/%E7%92%B0%E8%BB%B8%E9%96%A2%E7%AF%80%E4%BA%9C%E8%84%B1%E8%87%BCct)


つまりリウマチ性の環軸椎亜脱臼が基本です。


環椎横靭帯は歯突起の後方への逸脱を防ぐことで上位頸椎の回旋運動を安定させる重要な役割を持っており、この靭帯が正常に機能していることで環椎と軸椎との間に適切な関係が保たれています。リウマチによってこの靭帯が機能不全に陥ると、環軸関節の不安定性が顕在化してくるわけです。 teamlabbody(https://www.teamlabbody.com/news/archives/1749)


環軸関節亜脱臼のダウン症関連機序

ダウン症候群は染色体の先天性異常によって起こる疾患で、環軸椎亜脱臼をはじめとする脊椎疾患を合併することがあります。ダウン症の患者さんでは10〜30%に環軸椎不安定性があるといわれており、別の報告では約12〜24%とされています。 kcmc.kanagawa-pho(https://kcmc.kanagawa-pho.jp/diseases/kanzikutsui.html)


ダウン症において環軸椎亜脱臼が発生しやすい理由は、靭帯の弛緩性が背景にあります。ダウン症では全身の結合組織が弛緩しやすく、環椎と軸椎を支える4つの靭帯(環椎横靭帯、翼状靭帯など)も例外ではありません。環椎と軸椎の間には通常の椎間関節とは異なり椎間板が存在しておらず、靭帯によってのみ支えられているため、靭帯の弛緩が直接的に不安定性につながるのです。 samec(https://www.samec.jp/owners/2013/12/post-32.php)


靭帯弛緩だけで起きるということですね。


ダウン症の歩行障害の原因としては外反扁平足に次いで環軸関節亜脱臼が続くことが報告されており、整形外科的管理において重要な位置を占めています。 jpoa(http://www.jpoa.org/mag/vol28-1/012-016.pdf)


環軸関節亜脱臼の外傷性原因と加齢変化

外傷による環軸椎亜脱臼は、歯突起骨折を伴うことが多いです。後頭部方向から大きな外力が加わり過屈曲が強制されることで、軸椎の歯突起が骨折して環軸椎亜脱臼や脱臼が発生することがあります。交通事故による急性外傷や、もともとの加齢による頸椎の変性と相まって交通事故による衝撃により環軸椎亜脱臼または環軸椎脱臼を発症してしまう場合があります。 ken-ishii(https://ken-ishii.com/blog/41)


加齢による環軸関節の変性も原因の一つとなります。加齢によって椎間関節の変形や靭帯の変性が進行すると、環軸関節の安定性が低下します。頭や首に衝撃を受けたり、加齢によっても引き起こされることがあるため、リウマチがない患者でも環軸椎亜脱臼は起こりうるのです。 shisyokai(https://www.shisyokai.jp/pathology/atlantoaxial-subluxation/)


外傷と加齢が組み合わさるとリスクが高まります。


環軸関節亜脱臼の先天性・その他の原因疾患

関節リウマチやダウン症以外にも、多様な先天性疾患や病態が環軸椎亜脱臼の原因となります。具体的には以下のような疾患が挙げられます。 xn--o1qq22cjlllou16giuj(https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/25597)


- 軟骨形成不全症
- 骨形成不全症
- ムコ多糖類症(モルキオ病など)
- Ehlers-Danlos症候群
- 乾癬性関節炎
- Reiter症候群
- 強直性脊椎炎
- 化膿性関節炎
- 透析関連


これらの疾患の多くは結合組織の異常や骨形成の異常を背景に持っており、靭帯の脆弱性や骨構造の脆弱性が環軸関節の不安定性につながります。


先天性異常も多数ありますね。


モルキオ病は特にムコ多糖類症の一種であり、骨や軟骨の形成異常をきたします。Ehlers-Danlos症候群は全身の結合組織の脆弱性が特徴で、靭帯の過伸展性が問題となります。化膿性関節炎では感染による炎症が靭帯や骨を破壊し、透析患者ではアミロイド沈着などが環軸関節に影響を及ぼすことがあります。 nsj-official(https://www.nsj-official.jp/general/diseasename/01_head/dakkyu.html)


環軸関節亜脱臼の診断における画像所見と基準値

環軸椎亜脱臼の診断には頸椎レントゲン、CT、MRIなどの画像検査が行われます。レントゲン撮影では頚椎の屈曲位と伸展位で環椎—軸椎の位置関係を観察することにより比較的簡単に診断できます。環軸関節のズレが軽い場合や症状がないか軽度な場合には、炎症や痛みの軽減を目的とした薬物治療、首の固定、リハビリテーションでの筋肉トレーニングが行われます。 m.ehime-u.ac(https://www.m.ehime-u.ac.jp/school/orthopedic/spine/AAD.html)


診断の指標として環椎歯突起間距離(ADI: anterior atlantodental interval)が用いられます。ADIとは環椎前弓後縁と歯突起前縁の距離のことで、成人であれば頸椎の前後屈に伴うADIの変化は3mm以内が正常範囲内です。小児では骨化が不十分であり、X線像ではそれぞれ骨化部間の距離をみることになりますので、4mm以内が正常範囲です。 jmedj.co(https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_3858)


成人で3mm以上なら疑います。


もう一つの重要な指標としてSAC(space available for the spinal cord)があり、これは歯突起後縁から環椎後弓前縁までの距離のことで脊髄の圧迫の程度を評価します。X線ストレス撮影は診断に有効な手段ですが、亜脱臼症例では脊髄損傷のリスクがあるため細心の注意が必要です。 ypc-ic(https://www.ypc-ic.com/case03.html)


CTやMRI検査により関節の位置の異常や環軸関節の変形、靭帯の損傷などが確認できます。第1・第2頚椎部で脊髄が圧迫され、この部位での脊髄の圧迫に矛盾しない症状や身体所見があることを確認することが診断には重要です。 ken-ishii(https://ken-ishii.com/blog/41)


環軸関節亜脱臼の臨床症状と神経学的所見

環軸椎亜脱臼の最も多い初期症状は後頭部や後頚部の痛みです。頚部痛による頚部のこわばりがみられ、患者は頚部を動かしたがらなかったり、頭を下げたがらなかったりします。病状が進むと手足のしびれや麻痺を生じますが、初期には腕の異常感覚や手の細かな運動の障害(巧緻運動障害)から始まることが多いです。 yamaguchi-pc(https://www.yamaguchi-pc.com/aai.html)


一般的に初期の症状は軽微であったり、多様・複雑で変動したりと、診断が難しい部位の病気です。神経学的検査では四肢の姿勢反応の異常および上位運動ニューロン兆候が認められます。四肢のふらつきや四肢麻痺、重症例では呼吸異常も出現することがあります。 ypc-ic(https://www.ypc-ic.com/case03.html)


初期症状は見逃しやすいですね。


排尿障害も進行例では認められることがあります。環軸関節がずれることにより脊髄の通り道が狭くなり、これらの様々な症状を起こします。2個の椎体がずれることで脊髄への圧迫が生じ、神経症状が段階的に進行していくため、早期発見と適切な治療介入が予後を左右する重要な因子となります。 m.ehime-u.ac(https://www.m.ehime-u.ac.jp/school/orthopedic/spine/AAD.html)


医療従事者としては、関節リウマチ患者やダウン症患者において後頭部痛や頚部痛を訴える場合、環軸椎亜脱臼の可能性を念頭に置いて精査を進めることが重要です。初期の巧緻運動障害は他の疾患と鑑別が必要ですが、上位頸椎由来の脊髄症として認識することで適切な診断に結びつきます。