免荷装具の種類と荷重部位・適応疾患の選び方ガイド

免荷装具にはPTB装具・坐骨支持型・グラフィン・CROWブーツなど複数の種類があり、荷重部位や適応疾患が異なります。医療従事者として正しく選択できていますか?

免荷装具の種類と荷重部位・適応疾患を正しく理解しよう

PTB装具を骨折以外の骨折部位に使っても、免荷効果がほぼゼロになるケースがあります。


この記事の3ポイント要約
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免荷装具は「どこで支えるか」で種類が分かれる

PTB装具・坐骨支持型・グラフィン・CROWブーツなど、荷重支持部位が異なる複数の種類があり、骨折部位や病態に合わせた選択が治癒に直結します。

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適応疾患・部位を間違えると免荷効果が損なわれる

装具を処方するだけでなく、患者が正しく装着できているかの確認まで医療者の役割です。装着ミスにより足底が接地し、治癒が著しく遅延した報告があります。

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糖尿病足病変ではTCCが国際標準だが日本では普及率が低い

IWGDFガイドラインで最上位推奨のTCCは、国内での保険未対応・生活習慣の違いから活用が進んでいません。代替装具の正しい知識が切断回避に役立ちます。


免荷装具の種類①:PTB装具(膝蓋腱支持式免荷装具)の構造と適応

PTB装具は、医療現場でもっとも頻繁に処方される免荷装具の一つです。正式名称は「Patellar Tendon Bearing 装具」、日本語では膝蓋腱支持式免荷装具と呼びます。膝蓋骨(膝のお皿)のすぐ下にある膝蓋靭帯部分を前方から押さえてひっかけ、膝より下の部分を「宙吊り状態」にすることで体重が骨折部にかからないようにする仕組みです。


この装具の最大の特長は、完全非荷重状態を実現できることです。足底は床面に接地せず、体重のほぼ全量が膝蓋靭帯と脛骨内側顆部によって支持されます。そのため、脛腓骨骨折・脛骨高原骨折・足根骨骨折など、膝から下の骨折に広く適応されます。


一方で、荷重をかけてはいけない部位も明確に決まっています。具体的には「脛骨粗面」「脛骨稜」「脛骨顆部前面」「腓骨頭」「ハムストリングス走行部」の5か所です。これらの部位にパッドが当たっていると、装具をつけているにもかかわらず疼痛が出現したり、皮膚トラブルを招いたりするリスクがあります。覚えておきたいポイントですね。


PTB装具にはいくつかのバリエーションがあります。足底が床につかないよう下に「パッテン底(歩行あぶみ)」を取り付けた完全免荷タイプと、足底が接地できる不完全免荷タイプが存在します。完全免荷タイプは骨折初期など荷重を厳密に制限したい時期に選択され、部分荷重が許可された段階でパッテン底を外すか不完全免荷タイプへ変更します。つまり治癒経過に合わせて装具を段階的に調整するのが原則です。


また、PTB装具の適切な装着にはトレーニングが必要です。東大阪病院のリハビリ記録によると、患者が初めてPTB装具を着用した際、「装具がずれないか不安」「重い」「締め付けが強い」といった訴えが多数報告されています。業者説明だけでなく、理学療法士・作業療法士によるリハビリの中での装着練習が重要であり、装着確認を医療者が継続的に行うことが求められます。


東大阪病院 リハビリテーション部:PTB装具使用時の理学療法と患者指導の実際


免荷装具の種類②:坐骨支持型長下肢装具(トーマス型)と大腿骨骨折への適応

PTB装具が膝以下の骨折に対応するのに対し、坐骨支持型長下肢装具(別名:トーマス型免荷装具)は大腿骨骨折や膝関節周囲の骨折など、より上位の下肢骨折に使用される装具です。名称の通り、坐骨(骨盤の最下部)で体重を支持する構造をとります。


坐骨支持型の特徴は、その適応範囲の広さにあります。大腿骨骨折・脛骨近位部骨折・関節炎・腫瘍摘出術後など、膝を含む下肢全体の免荷が必要な場合に選択されます。構造上は大腿から下腿・足部まで覆う「長下肢装具」であり、股継手・膝継手・足継手をそれぞれ設けることができます。それぞれの継手にロック機構やストッパーを組み合わせることで、関節の動きを段階的にコントロールします。


意外ですね——坐骨支持型は「坐骨に体重をのせる」という構造から、松葉杖なしでの歩行が可能になる場合があります。坐骨への荷重感に慣れるまで多少時間がかかりますが、習得できれば両手が使える状態での生活が実現します。高齢者や上肢筋力が低下している患者が松葉杖歩行困難な場合、坐骨支持型は重要な選択肢となります。


装具の重量はPTB装具よりも大きくなりがちです。金属支柱・各種継手・ソケットが組み合わさるため、片手での着脱が難しいケースもあります。自立装着が難しいと判断される患者では、介護者への装着指導も同時に行うことが必要です。これが条件です。


装具名 主な荷重支持部位 主な適応疾患
PTB装具 膝蓋靭帯・脛骨内側顆部 脛腓骨骨折・足根骨骨折
坐骨支持型長下肢装具 坐骨結節 大腿骨骨折・脛骨近位部骨折・腫瘍術後
グラフィン装具 前・中足部(土踏まず付近) 踵骨骨折
アキレス腱装具 踵挙上による腱端近接 アキレス腱断裂
CROWブーツ 下腿全体で圧分散 シャルコー足・糖尿病性足潰瘍
TCC(全接触ギプス) 下腿全体で圧分散(固定式) 糖尿病性神経障害性足底潰瘍


免荷装具の種類③:グラフィン装具・アキレス腱断裂用装具の構造と使い分け

踵骨骨折に特化した免荷装具が「グラフィン装具(踵免荷装具)」です。その構造はユニークで、踵の部分が大きく開いた形状になっており、前・中足部(土踏まず付近)で体重を受けることで踵骨部への荷重をゼロにします。足底のインソールは縦・横アーチを考慮した設計で、前足部への均等な荷重分散を図ります。


踵骨骨折は転落・飛び降りなどの高エネルギー外傷で生じることが多く、受傷直後は腫脹が著明です。腫脹がひどい急性期には採型作業自体が難しく、装具製作まで時間を要することがあります。その期間中のリハビリプログラム(筋収縮の維持・関節可動域管理)を並行して行うことが、廃用症候群の予防につながります。これは使えそうです。


グラフィン装具とよく似た名前で「AD踵骨免荷ブレイスシステム」などの既製品タイプも存在します。グラフィン型の短下肢歩行ギプスを応用し、踵骨後方の約2/3を免荷するデザインで、インソールにより縦・横アーチのサポートも同時に行います。


一方、アキレス腱断裂用装具は厳密には「免荷」が主目的ではありません。足首を底屈(足先を下に向ける)させることで、切れたアキレス腱の断端どうしを近接させ、癒合を促進することが主な目的です。踵に高さの異なる複数の板(ヒールウェッジ)を重ねて入れ、1週間に1枚ずつ取り外しながら徐々に足関節の角度を戻していきます。


アキレス腱装具を処方する場面では、患者への説明が特に重要です。「なぜ踵を上げた状態で歩くのか」という理由を理解していないと、患者が装具を勝手に外したり不正な角度で使用したりするリスクがあります。医療者からの十分な説明と定期的な装着確認が欠かせません。


常盤台らいおん整形外科:下肢の免荷装具(PTB・グラフィン・アキレス腱装具)の概要解説


免荷装具の種類④:糖尿病足病変に使うCROWブーツ・TCC・医療サンダルの違い

整形外科的な骨折とは全く異なる文脈で免荷装具が用いられる領域が、糖尿病性足潰瘍を中心とする「足病変治療」です。ここで使用される免荷装具は、種類・目的・選択基準がより複雑です。


日本フットケア・足病医学会が2022年に公表した「足の創傷治療のための免荷方法の指針」によると、前足部・中足部の糖尿病神経障害性足底潰瘍に対する免荷装具のエビデンスレベル順は以下の通りです。


  • ① TCC(Total Contact Cast:全接触ギプス)
  • ② 膝下非着脱式歩行用免荷装具(iTCCなど)
  • ③ 膝下着脱式免荷装具(PTB装具・RCW・CROWブーツ・グラフィン型)
  • ④ 足関節までの着脱式装具(治療サンダル・ハーフシューズ)
  • ⑤ 一般靴+医療用フェルトフォーム


TCC(全接触ギプス)は1930年代にハンセン病性足底潰瘍の治療として始まった歴史ある手法で、下腿から足趾までをギプス固定することで足底圧の集中と剪断力を大幅に軽減します。質の高いメタアナリシスでは、神経障害性前足部足底潰瘍に対してTCCは着脱式装具と比べて潰瘍治癒率が17〜43%高く、治癒期間も8〜12日短いと報告されています。


しかし日本ではTCCの保険適用がなく、屋内で靴を脱ぐ生活習慣や高温多湿の環境も相まって、実際に使用されるケースは非常に限られています。厳しいところですね。


CROWブーツ(Charcot Restraint Orthotic Walker)は、シャルコー足変形に対応するためのオーダーメイド着脱式装具で、TCCと同様に下腿部から足部全体を全面接触させて圧分散を行います。RCW(Removable Cast Walker)は既製品タイプの着脱式膝下免荷装具で、TCC比で創傷治癒率はやや低下するものの(TCC 88%対RCW 63%)、患者自身での着脱が可能な点でアドヒアランスの維持に有利です。


足病変の治療期と予防期では装具の目的が変わります。治療期は「創傷治癒のための免荷・除圧」、予防期は「再発防止のための足底圧管理・アライメントコントロール」が目標です。この2段階をふまえて装具を切り替えていくことが、下肢切断を回避するための正しいアプローチです。


日本フットケア・足病医学会:足の創傷治療のための免荷方法の指針(2022年版)—TCC・CROWブーツ・RCWの選択基準と適応


田村義肢製作所:下肢救済・糖尿病分野における装具・フットウェアの治療期・予防期別の選択実例


免荷装具の選択で医療従事者が押さえておくべき実践的な注意点

現場で装具が処方されていても、患者が自宅で正しく装着できていないケースは少なくありません。日本フットケア・足病医学会の2023年調査(有効回答137事業所)によると、足部創傷用免荷装具の取り扱い事業所は回答中87%(119事業所)に上る一方、「患者のアドヒアランス」や「医師・他職種の認識不足」が免荷療法の大きな障壁として挙げられています。


PTB装具の場合、義肢装具士による採型・製作後も、装着の仕方を反復練習させることが不可欠です。特に高齢者・網膜症による視力低下患者では、ソケットを正しく嵌めることが難しく、適切な装着ができなければ足底が接地してしまい免荷効果がゼロになります。これが原則です。


装具の重量に関しても患者への事前説明が必要です。PTB装具は構造上ある程度の重量があり、松葉杖なし歩行では下肢全体の筋疲労が大きくなります。多くの患者が両松葉杖との併用から開始し、骨癒合の進行とともに片松葉杖→松葉杖なしへと段階を踏みます。健側への負担増・健側に装着する底上げ靴(脚長差調整用)への違和感なども、あらかじめ伝えることで患者の不安を減らせます。


免荷装具の費用と保険適用も整理しておくべき重要事項です。PTB装具などの治療用装具は健康保険の療養費払い対象ですが、医師の処方箋が必須であり、既製品でも一定条件下で支給を受けられる場合があります。一方、足部創傷用の免荷装具は保険者による不支給事例もあり、事業所側の調査でも「屋内・屋外用の2つ分が支給されない」「再製作が保険適用されない」などの課題が報告されています。装具の種類や費用を含めた事前説明を行うことで、患者の経済的不安を軽減し、アドヒアランスの向上にもつながります。


最後に、チーム医療の観点から見ると、免荷装具の選択は医師・義肢装具士・理学療法士・看護師が連携して行うものです。「装具を処方して終わり」ではなく、装着指導・使用状況の確認・創傷の定期評価・荷重段階の調整まで一連の流れとして実施することが、治癒促進と切断回避につながります。つまり「装具の選択知識」と「チームでの継続管理」がセットで必要ということです。


  • ✅ 骨折部位・疾患によって荷重支持部位が異なる装具を選ぶ
  • ✅ 患者の装着能力・視力・認知機能を評価してから装具を決定する
  • ✅ 装着確認は義肢装具士任せにせず、リハビリ時間内にも行う
  • ✅ 糖尿病足病変ではTCC・CROWブーツ・RCWのエビデンス順位を意識する
  • ✅ 治療期と予防期で装具の目的・種類を切り替える
  • ✅ 費用・保険適用の説明を患者に行いアドヒアランスを高める


日本フットケア・足病医学会 補装具委員会:義肢装具事業所における足部創傷用免荷装具に関する意識・実態調査(2024年)—装具提供における医療者間の課題と障壁の実態データ