トランコロン錠7.5mgを先発品と思い込んで処方したままにすると、後発品調剤体制加算の算定率が下がり、薬局の報酬が毎月数万円単位で損することがあります。
メペンゾラート臭化物の先発品はアステラス製薬の「トランコロン錠7.5mg」です。 1967年1月に国内で承認・販売が開始された、歴史の長い消化管選択的抗コリン薬です。mhlw.go+1
作用機序は他の抗コリン薬と似ているようでまったく違います。メペンゾラートは4級アンモニウム構造を持つ合成アトロピン様薬で、上部消化管よりも下部消化管に対してより強く鎮痙作用を発揮します。 つまり下部消化管に特化した薬剤です。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/2r9852000001at5f.pdf
効能・効果は「過敏大腸症(イリタブルコロン)」のみで、胃潰瘍や上部消化管疾患には使えません。 用法は成人1回2錠(メペンゾラート臭化物として15mg)を1日3回経口投与、症状により適宜増減します。 適応が絞られているのが特徴ですね。data-index.co+1
IBS(過敏性腸症候群)治療ガイドラインでは、まず高分子重合体や消化管運動調節薬が第一選択とされており、腹痛・腹部不快感が優位な場合にメペンゾラートが追加投与されます。 位置づけを理解しておくことが重要です。
後発品として現在薬価収載されているのは「メペンゾラート臭化物錠7.5mg『ツルハラ』」(鶴原製薬)です。 鶴原製薬は先発メーカーとは異なる会社である点に注意が必要です。data-index.co+1
薬価の観点では、先発品のトランコロン錠7.5mgと後発品の間に価格差が生じています。 後発品への切り替えで薬価差が発生する場合、後発医薬品調剤体制加算の算定対象になります。 これは薬局経営に直結します。
注意が必要なのは、後発品への変更が診療報酬上の加算対象となるかどうかの確認です。 先発品と後発品の薬価が同額の場合(例:メトグルコ250mgのケース)、加算対象にならない事例もあるため、メペンゾラートでも個別に薬価を確認する必要があります。 薬価確認は必須です。
参考)先発品・後発品・準先発品・どれでもない。 医薬品の区分の調べ…
| 区分 | 販売名 | 販売会社 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 先発品 | トランコロン錠7.5mg | アステラス製薬 | 1967年承認 |
| 後発品 | メペンゾラート臭化物錠7.5mg「ツルハラ」 | 鶴原製薬 | 加算対象確認要 |
後発医薬品調剤体制加算は、薬局が後発品の使用割合に応じて算定できる重要な加算です。令和8年度(2026年)改定では、後発品の調剤割合が一定水準に達しない薬局は、所定点数から5点を減算される仕組みに変わっています。 厳しい制度になりました。
メペンゾラートのような長期処方薬こそ、後発品への変更が使用率の数字を押し上げます。例えば月に600回以上の処方受付がある薬局では、この減算規定の対象になるため、後発品使用率の管理が欠かせません。
一方、先発品を後発品に変更する際は疑義照会のルールを忘れてはいけません。同一成分・同一剤形・同一規格であれば疑義照会なしで変更可能ですが、成分や規格が異なる場合は必ず医師への照会が必要です。 ルール違反は保険請求の査定につながります。
後発品使用率の計算式において、準先発品は分母に含まれないという重要なルールがあります。 メペンゾラートは先発品・後発品の明確な区分があるため分母に含まれますが、同じ感覚で他の薬剤を扱うと計算ミスが起きます。 薬剤ごとの区分確認が原則です。
メペンゾラートは抗コリン作用を持つため、口渇・視調節障害・排尿障害などの副作用に注意が必要です。 これらはジフェンヒドラミンやMAO阻害剤と併用するとさらに増強します。 相互作用の見落としは危険です。
参考)トランコロン錠7.5mg - 基本情報(用法用量、効能・効果…
ただし、メペンゾラートの大きな特徴は下部消化管選択性にあります。一般的な抗コリン薬(例:ブスコパン)が上下を問わず消化管全体に作用するのと異なり、メペンゾラートは下部消化管の運動・収縮を選択的に抑制します。 つまり薬理的に代替不可です。
4級アンモニウム構造のため消化管からの吸収が少なく、全身性の副作用が比較的出にくいとされています。 これはIBSのような長期使用が必要な疾患において大きなメリットになります。 安全性の面でも評価されています。
先発品のトランコロン錠と後発品の「ツルハラ」は有効成分・規格・効能効果は同等ですが、添加物が異なる可能性があります。患者によっては添加物に対する過敏反応が出るケースもゼロではないため、変更後の経過観察が必要です。pmda.go+1
これは多くの医療従事者が見落としがちな視点です。実は日本では「先発品が存在しない後発品」に分類される薬剤が複数あり、それらを先発品と勘違いすると後発品調剤体制加算の計算が狂います。
参考)先発品の無い後発品?
代表的な例として、カロナール錠200mg・300mg・500mgは「後発品」です。 メチコバール250μg・500μgも後発品です。 多くの医療従事者がこれらを先発品と思い込んでいます。意外ですね。
メペンゾラートの先発品「トランコロン錠7.5mg」は1967年承認であるため、昭和42年(1967年)以降の新薬扱いとなり、先発品として正式に区分されています。 準先発品や「どれでもない」区分ではない点を確認しておきましょう。
こうした医薬品区分の正確な確認には、厚生労働省の「薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報」を定期的に参照することが基本です。
厚生労働省 薬価基準収載品目リストおよび後発医薬品に関する情報(先発品・後発品・準先発品区分確認に有用)
https://www.mhlw.go.jp/topics/2022/04/tp20220401-01.html
IBS患者への長期処方では、メペンゾラートが「漫然と継続」されているケースが少なくありません。過敏性腸症候群治療ガイドラインでは段階的な薬物治療が推奨されており、抗コリン薬が第一選択ではないにもかかわらず、長期間処方が続く事例が現場では見られます。
医療従事者として注目すべきは、処方継続の定期的な見直しです。症状が改善している患者に対してメペンゾラートが処方されたまま放置されると、抗コリン作用による慢性的な口渇・排尿障害が蓄積します。 これは患者QOLの低下につながります。
もう一点、見逃しやすいのがスイッチOTC化の議論です。厚生労働省の検討資料によると、メペンゾラートはセルフメディケーション推進の観点から一般用医薬品へのスイッチが検討された経緯があります。 将来的に薬局で市販薬として購入できる可能性がある成分だということです。
これが実現すれば、処方箋なしで患者が購入できることになり、医療機関での処方数が減少する可能性があります。IBS患者の管理において、医療従事者が「指導・モニタリングの担い手」としての役割を強化することが、今後ますます重要になるでしょう。
PMDAの添付文書検索(メペンゾラート臭化物の最新添付文書・禁忌・副作用情報の確認に有用)
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/