ジフェンヒドラミンは第一世代抗ヒスタミン薬として広く使用されていますが、その薬理作用により多彩な副作用を呈します。最も重要な副作用は強い眠気で、これは中枢神経系のH1受容体遮断によるものです。
中枢神経系への影響 🧠
抗コリン作用による副作用 💧
循環器系では動悸が報告されており、消化器系では悪心・嘔吐、下痢が見られることがあります。過敏症として発疹も報告されています。
特に注意すべきは、ジフェンヒドラミンの強い抗コリン作用です。この作用により、高用量では幻覚やせん妄を起こすことがあり、高齢者では認知機能への影響が懸念されるため、ビアーズ基準では避けるべき医薬品として掲載されています。
ジフェンヒドラミンには明確な絶対禁忌があり、医療従事者は処方前に必ず確認する必要があります。
絶対禁忌 ❌
相対禁忌・慎重投与 ⚠️
妊婦への投与は望ましくなく、抗ヒスタミン剤投与により奇形を有する児の出生率が高いことを疑わせる疫学調査報告があります。授乳婦では母乳を通じて乳児の昏睡が報告されているため、授乳を避ける必要があります。
ジフェンヒドラミンは多くの薬剤と相互作用を示すため、併用薬の確認は極めて重要です。
中枢神経抑制作用の増強 😴
抗コリン作用の増強 🔄
これらの相互作用により、併用時には定期的な臨床症状観察と用量調整が必要です。特にアルコールとの併用では、飲酒により相互に作用が増強されるため、患者への指導が重要です。
日本睡眠学会のガイドラインでは、不眠症、特に慢性の場合にジフェンヒドラミンなどの第一世代抗ヒスタミン薬は推奨されておらず、眠気や精神運動機能低下の説明が必要とされています。
特定の患者群では、ジフェンヒドラミンの使用に際して特別な配慮が必要です。
小児患者での注意点 👶
小児では中枢神経系の興奮後に抑制状態が発現することが知られています。50~100mg以上の服用で中毒症状のリスクがあります。筋肉内注射時は、低出生体重児、新生児、乳児、幼児では同一部位への反復注射を避け、特に慎重な投与が必要です。
高齢者での注意点 👴
高齢者は抗コリン作用による副作用が増強されやすく、認知機能への影響が懸念されます。ビアーズ基準では高齢者に避けたほうがよい医薬品として掲載されており、処方時は特に慎重な判断が求められます。
妊娠・授乳期での注意点 🤱
妊婦または妊娠可能性のある女性への投与は望ましくありません。授乳婦では母乳移行により乳児の昏睡が報告されているため、授乳を避ける必要があります。
運転・機械操作への影響 🚗
眠気を催すことがあるため、投与中の患者には自動車運転等危険を伴う機械操作に従事させないよう十分な注意が必要です。この点は患者への十分な説明と理解が重要です。
ジフェンヒドラミンの過量投与は致命的となる可能性があり、迅速な対応が求められます。
致死量と中毒症状 ⚠️
ヒト推定致死量は20~40mg/kgとされています。成人では100~150mg以上、小児では50~100mg以上で中毒症状のリスクがあります。
中毒症状の特徴 🚨
救急処置のポイント 🏥
服用後4時間以内であれば以下の処置を行います。
重要なのは、抗コリン作用により消化管蠕動運動が抑制され、胃内容排泄時間が延長するため、多少時間が遅れても胃洗浄を行う価値があることです。分布容積が大きく蛋白結合率が高いため、血液透析による薬物除去は期待できません。
急性毒性では心血管虚脱等により2~18時間で死亡に至る可能性があり、一般的に対症療法で治療されますが、早期の適切な処置が患者の予後を大きく左右します。
福岡県薬剤師会の情報提供ページ
https://www.fpa.or.jp/johocenter/yakuji-main/_1635.html
医薬品医療機器総合機構(PMDA)の添付文書情報
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00065651