メロペネムの略語MEPMは、国際的に統一された抗菌薬の標準的な表記方法です。この略語は、日米欧において共通して使用されており、医療現場でのコミュニケーションを円滑にする重要な役割を果たしています。
メロペネムの化学名は(4R,5S,6S)-3-[(3S,5S)-5-(Dimethylcarbamoyl)pyrrolidin-3-ylsulfanyl]-6-[(1R)-1-hydroxyethyl]-4-methyl-7-oxo-1-azabicyclo[3.2.0]hept-2-ene-2-carboxylic acid trihydrateであり、分子式はC17H25N3O5S・3H2Oです。カルバペネム骨格の4位にメチル基を導入したこの独特な構造により、ヒト腎デヒドロペプチダーゼ-Ⅰ(DHP-Ⅰ)に対して安定性を示します。
🔬 分子量は437.51で、三水和物として存在し、この水分子の存在が薬剤の安定性と溶解性に大きく寄与しています。
メロペネムの標準投与法は、成人では1日3g(力価)を3回に分割し、30分以上かけて点滴静注することです。小児においては1日120mg(力価)/kgを3回に分割して投与しますが、成人の1日用量3gを超えないよう注意が必要です。
薬物動態の特徴として、半減期(T1/2)は腎機能正常者で約1.0~1.5時間ですが、腎機能低下患者では大幅に延長します。クレアチニンクリアランス(Ccr)が50mL/min以下の患者では投与量調整が必須で、具体的には以下の通りです:
最近の研究では、重症敗血症患者において持続投与と間歇投与の比較が行われ、持続投与によりより安定した薬物濃度維持が可能であることが示されています。
メロペネム耐性の主要な機序は、β-ラクタム環の酵素的加水分解です。これらの酵素はクラスA、B、Dに分類され、クラスAとDはセリンβ-ラクタマーゼ、クラスBはメタロβ-ラクタマーゼに該当します。
特に注目すべきは、**汎薬剤耐性菌(pandrug-resistant)や広範囲薬剤耐性菌(extensively drug-resistant)**の出現です。これらの耐性菌対策として、以下の戦略が重要です:
小児の細菌性髄膜炎治療における研究では、腎クリアランス亢進(ARC)を併発した患者では、従来の推奨用量40mg/kg 8時間毎投与では血中濃度が不十分となる可能性が指摘されています。
メロペネムの副作用として、消化器症状(悪心・嘔吐)が20%以下の患者に認められ、痙攣発作は1.5%の頻度で発生します。特に興味深い副作用として、メロペネム誘発性顔面ミオクローヌスが報告されています。
この神経毒性は、治療開始から数時間から数日後に発症し、薬剤の中止または減量により完全に回復することが特徴です。文献では10例未満の稀な症例として記録されており、15歳男児の症例が詳細に報告されています。
その他の副作用として以下が挙げられます。
バルプロ酸ナトリウムとの併用により、バルプロ酸の血中濃度が低下し、てんかん発作が再発する重要な薬物相互作用も知られています。
メロペネムの特殊な投与状況として、小児の細菌性髄膜炎における血液脳関門通過性が重要な臨床課題です。メロペネムはStreptococcus pneumoniae、Haemophilus influenzae、Neisseria meningitidisなどの主要な髄膜炎起因菌に対して効果的で、血液脳関門を良好に通過します。
**腎クリアランス亢進(ARC)**を伴う小児患者では、標準的な投与量では最小発育阻止濃度(MIC)を上回る時間が50%に達するまでに3時間を要することが判明しており、投与量の調整が必要な場合があります。
MERCY臨床試験では、重症敗血症患者607名を対象とした無作為化比較試験において、持続投与群と間歇投与群の比較が実施されました。主要評価項目である死亡率と汎薬剤耐性菌出現の複合アウトカムにおいて、持続投与群で147名(48.5%)、間歇投与群で149名(49%)となり、統計学的有意差は認められませんでした(相対リスク0.96、95%信頼区間0.81-1.13、P=0.60)。
🏥 WHOエッセンシャル医薬品として位置づけられているメロペネムは、最後の切り札的抗菌薬としての役割を担っており、適正使用が極めて重要です。
UPLC-MS/MS法による血清および脳脊髄液中メロペネム濃度測定技術の発展により、より精密な薬物動態解析が可能となり、個別化医療への応用が期待されています。