内視鏡検査は、先端に高性能カメラが搭載された細長い管状の医療機器を用いて、消化管内部を直接観察する検査方法です 。現代の内視鏡は、直径5~10mm程度の細さで、CCD(Charge-Coupled Device)や光ファイバー技術を活用し、鮮明な画像を医師に提供します 。検査の主な目的は、がんやポリープ、炎症などの病変を早期発見し、必要に応じて組織採取や治療的処置を同時に行うことです 。
参考)https://www.c-takinogawa.jp/feature/endoscopy.html
内視鏡検査は診断から治療までをシームレスに行えるため、医療技術の発達により応用範囲が著しく拡大しています 。特に日本では胃がんスクリーニングにおいて、2014年の改訂ガイドラインで内視鏡検査が人口ベースのスクリーニングに承認され、従来のX線検査と並行して実施されています 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9332545/
上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)は、口または鼻から内視鏡を挿入し、食道・胃・十二指腸を観察します 。適応症状には、ピロリ菌検査陽性、食べ物の飲み込みにくさ、タール便(黒色便)、胃部X線検査での要精密検査、胸やけ・胃酸逆流、吐き気・腹痛などがあります 。
参考)https://act-endoscopy-clinic.jp/endoscopy
下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)は、肛門から内視鏡を挿入し、大腸(結腸と直腸)および小腸の一部を観察します 。主な適応症状として、便潜血検査陽性、便秘や下痢の持続、血便、腹部膨満感などがあげられます 。
経鼻内視鏡検査は、鼻腔から挿入する方法で、経口法と比較して咽頭反射が少なく、検査中の会話も可能で心肺機能への影響もほとんどありません 。ただし、鼻腔が狭い場合は挿入困難な場合があり、鼻出血のリスクも存在します 。
内視鏡検査の診断精度は従来の検査方法と比較して格段に向上しており、特に早期がんの発見率が著しく高いことが特徴です。胃がんの原因の98%がヘリコバクター・ピロリ菌によるものとされており 、内視鏡検査時にピロリ菌感染を示唆する胃炎や粘膜萎縮が観察された場合、その場でピロリ菌検査を実施できます 。
内視鏡検査では、がんの早期発見だけでなく、逆流性食道炎、食道がん、十二指腸がんなど、検査経路上のすべての部位の疾患を同時に発見できるという包括的な診断価値があります 。特に経鼻法では、喉頭・咽頭の観察も可能で、稀に喉頭がんや咽頭がんの発見にもつながります 。
大腸内視鏡検査では、検査精度向上のため腸管の完全な洗浄が必要不可欠です 。前処置の目的は大腸内の便や汚れを完全に除去し、病変の見落としや診断ミスを防ぐことです 。前処置方法は検査前日までの食事制限と検査当日の下剤服用の二段階に分かれます 。
参考)https://www.anzukai.or.jp/colonoscopy/medicine/
検査前日までは消化の良い食品(白米、おかゆ、魚、鶏肉など)を摂取し、野菜、果物、乳製品、食物繊維の多い食品は避けます 。午後8時以降は絶食となります 。服薬に関しては、血液をサラサラにする薬物は出血リスクを高め、血糖降下薬は絶食により低血糖を引き起こす可能性があるため、事前の医師への相談が必須です 。
参考)https://lala-clinic.jp/staticpages/index.php/108-prep-yokohama-endoscopy
検査当日は指定された下剤を医師の指示通りに服用しますが、腸閉塞や腸管穿孔などの重篤な副作用のリスクがあるため 、特に高齢者や既往症のある患者では細心の注意が必要です 。
参考)https://odori-clinic.com/column/risk-2/
最新の内視鏡システムでは、AI診断支援機能「CAD EYE」が導入され、深層学習(Deep Learning)を活用した病変のリアルタイム検出と鑑別が可能になっています 。このシステムは膨大な臨床データから学習し、画像認識機能により胃がんや食道がんの病変部を高精度で検出します 。
参考)https://toku-cl.com/menu/medical10/
画像処理技術も大幅に進歩し、NBI(狭帯域光観察)では血管や表層の変化を強調表示し 、BLI(Blue Light Imaging)では がん細胞周囲に集まる毛細血管の分布を詳細に可視化できます 。LCI(Linked Color Imaging)技術では、胃粘膜の微妙な色調変化を強調処理し、赤色をより赤く、白色をより白く表示することで、粘膜の炎症や早期がんの発見率を向上させています 。
これらの先進技術は医師の経験を補完し、見落としリスクを大幅に軽減する強力なツールとなっており 、従来では困難だった微細病変の検出も可能にしています。FUJIFILM社の最新内視鏡システム「EP-8000」では、X線・超音波領域で培われた画像処理技術を応用し、遠景まで明るくノイズの少ない高画質画像を実現しています 。