温脾湯を「ただの便秘漢方」だと判断すると、慢性腎不全患者のQOL改善機会を見逃します。
温脾湯(うんぴとう)は、唐代の医書『備急千金要方』に収載された歴史ある処方です。 ツムラの医療用漢方エキス製剤一覧には温脾湯単独の製品番号は設定されていませんが、大建中湯(TJ-100)や大黄甘草湯(TJ-84)など構成生薬の一部を含む製剤は多数存在します。medical.tsumura+1
温脾湯の基本構成は大黄・当帰・乾姜・附子・人参・芒硝・甘草の7生薬です。 これは「攻下(大黄・芒硝で便を排出する)」と「温補脾陽(附子・乾姜・人参で内臓を温める)」という、相反する二つの作用を1処方に組み込んだ「温下剤」と呼ばれる特殊な分類に属します。wikipedia+1
つまり「冷えながら便秘する」という逆説的な病態専用の処方です。
大黄単独の瀉下剤(大黄甘草湯など)では体をさらに冷やすリスクがある一方、温脾湯は附子・乾姜の温熱作用で冷えを補いながら排便を促します。 医療現場では、ツムラ製品をベースに温脾湯の概念を応用する場面が多いため、処方構成の理解が実践に直結します。
これは使えそうです。
参考:「温下剤」の概念と大黄の薬理作用についての詳細解説
温脾湯・大黄附子湯の解説(漢方坂本)
温脾湯の主な適応は「少陰病期の虚証で、冷えにより便秘を来たした状態」です。 具体的には、臍下の絞痛・便秘・手足の冷感・白苔・沈遅脈という漢方所見が揃った患者が対象になります。dentomed.toyama-wakan+1
ここが重要なポイントです。
西洋医学的には「慢性腎不全(CKD保存期)への応用」が注目されています。 1999年に日本腎臓学会誌に掲載された臨床研究では、保存期CKD患者に温脾湯を8週間投与した結果、血中尿素窒素(BUN)および尿毒症物質の低下、ならびに倦怠感・冷感などの自覚症状改善が報告されています。 特に、冷え性に傾きやすい陰証のCKD患者には温脾湯が適していると述べられています。jsn+1
大黄に含まれるセンノシドが腸内細菌叢を介して尿毒素の腸管排泄を促進するという機序が推定されており、これが腎機能保護に寄与する可能性があります。
参考)https://www.qlife-kampo.jp/study/effect/story278.html
参考:慢性腎不全保存期への温脾湯・大黄含有漢方の臨床評価(1999年、日本腎臓学会誌)
参考:大黄の薬理と腸内細菌叢への作用機序(QLife漢方)
成分(生薬)別の注意:大黄(だいおう)(QLife漢方)
温脾湯を構成する7生薬はそれぞれ明確な役割を持っています。
| 生薬 | 分類 | 主な薬理作用 |
|---|---|---|
| 大黄(だいおう) | 君薬 | 腸蠕動亢進・瀉下(センノシド) |
| 附子(ぶし) | 君薬 | 温陽去寒・鎮痛(アコニチン系) |
| 乾姜(かんきょう) | 臣薬 | 温中助陽・胃腸機能改善 |
| 人参(にんじん) | 臣薬 | 益気補脾・体力増強 |
| 当帰(とうき) | 佐薬 | 養血・腸を潤し通便 |
| 芒硝(ぼうしょう) | 佐薬 | 軟下・腸内の水分保持 |
| 甘草(かんぞう) | 使薬 | 調和・胃腸保護 |
附子の主成分アコニチン系アルカロイドは、過量投与で口唇・舌のしびれ、動悸、のぼせ、手足の麻痺・しびれ感、悪心・嘔吐、心悸亢進などの中毒症状を引き起こします。 附子中毒は服用後30分〜1時間以内に発現するため、初回処方時の患者への説明が特に重要です。mibyou-pharmacist+1
甘草が条件です。甘草を含む漢方薬(ツムラ製剤の約7割に含有)と温脾湯を併用する場合は、低カリウム血症・偽アルドステロン症のリスクが高まります。
参考)https://pha.medicalonline.jp/img/cat_desc/MPa_table2.html
ツムラ大建中湯(TJ-100)と比べると、大建中湯は「温熱のみ」のアプローチで附子も大黄も含みませんが、温脾湯は「温熱+瀉下」を同時に行う点で全く異なる処方設計です。
参考)https://www.shirasagi-hp.or.jp/goda/fmly/pdf/files/307.pdf
参考:附子・大黄含有漢方薬の副作用管理(医薬大学漢方薬表)
副作用に注意すべき生薬一覧(Pharma Online)
臨床で見落とされがちな注意点があります。
大黄の長期投与では、腸管上皮にアントラキノン色素が沈着する「大腸メラノーシス(大腸黒皮症)」が生じることがあります。 これは大腸内視鏡で容易に確認でき、同時に腸管神経へのダメージも懸念されます。長期投与症例には定期的な内視鏡的評価も検討に値します。soujinkai+1
痛いところですね。
附子含有製剤全般(ツムラ製剤では牛車腎気丸TJ-107、麻黄附子細辛湯TJ-127など)との重複処方にも注意が必要です。 附子の1日摂取量が増えると中毒リスクが高まるため、温脾湯を処方する際は既存の漢方処方の附子含有量を必ず確認する必要があります。matuyaku.or+1
腎不全患者ではカリウム排泄能が低下しているため、甘草による低カリウム血症リスクはさらに高まります。 定期的な血清カリウム値のモニタリングが原則です。
また、大黄の薬効は腸内細菌叢に大きく依存するため、個人差が非常に大きい点も臨床上の重要事項です。 少量から開始し、便通状況を患者から積極的に聴取する姿勢が求められます。
参考:大黄長期投与による大腸メラノーシスの解説
漢方薬で腸が黒くなる?|便秘と「大黄」についての注意点(塚口クリニック)
参考:附子を含む漢方薬の副作用と中毒症状の詳細
「麻黄」「附子」を含む漢方薬で注意すべきこと(いなかの薬剤師)
「温脾湯と他の便秘漢方、どう使い分けるのか」は臨床でよく問われます。
鍵は「冷えの有無」と「体力(虚実)」です。 下表に主要な下剤系漢方との比較を示します。
| 処方名(ツムラ番号) | 体力 | 冷えの有無 | 大黄含有 | 主な適応 |
|---|---|---|---|---|
| 大黄甘草湯(TJ-84) | 中〜実 | なし〜熱 | ✅ | 急性・単純便秘 |
| 麻子仁丸(TJ-126) | やや虚 | 乾燥傾向 | ✅ | 高齢者・硬便・皮膚乾燥 |
| 潤腸湯(TJ-51) | 中〜やや虚 | 乾燥傾向 | ✅ | 血虚・乾燥便秘 |
| 大建中湯(TJ-100) | 虚 | 強い冷え | ❌ | 腹部膨満・腹痛・術後腸閉塞予防 |
| 温脾湯(エキス製剤なし) | 虚 | 強い冷え | ✅ | 冷え性便秘・保存期CKD |
🌡️ 冷えが強く、かつ便秘がある虚証患者 → 温脾湯の適応を検討
🔥 熱感・口渇があり便秘がある実証患者 → 大黄甘草湯や桃核承気湯を検討
結論は「冷えの程度と体力で選ぶ」です。
実際の臨床では、ツムラ大建中湯(TJ-100)で冷えには対応できているが便秘が残る患者に対し、大黄を含む処方を少量追加・変更するアプローチが取られることがあります。 この際、患者の舌の色(淡白・白苔)、脈(沈遅)、腹診(冷感・軟弱)などの漢方診察所見が選択の根拠になります。kanpousakamoto+1
温脾湯はエキス製剤として単独製品がないため、煎じ薬または類似処方の組み合わせによる対応が現実的な選択肢となる場合もあります。 漢方専門医や薬剤師との連携が治療の質を高める近道です。
参考)便秘
参考:便秘漢方の使い分け詳細(薬剤師執筆)
【薬剤師執筆】漢方薬(便秘)の使い分け(こころセルフ)
参考:腎疾患・透析療法と漢方薬の臨床的活用(透析医学会)
腎疾患,透析療法と漢方薬(日本透析医学会誌)

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