リトドリン塩酸塩の副作用は、主にβ2受容体刺激作用によって引き起こされます。子宮筋を選択的に弛緩させる目的で使用されますが、心臓や血管系のβ2受容体にも作用し、副作用が発現します。
主要な副作用発現機序
日本の副作用データベース分析では、リトドリンによる副作用報告が妊婦症例で最多の128件を占め、「造血器系障害」35件(22%)、「筋・骨格の障害」26件(16%)、「呼吸器系障害」25件(16%)の順で報告されています。
循環器系への影響は、リトドリン使用時に最も頻繁に観察される副作用群です。
頻発する循環器系副作用
重篤な心血管合併症
2024年の症例報告では、リトドリンの長期点滴により頻脈性心筋症を発症した妊婦の事例が報告されており、脈拍数や呼吸変化の頻回な観察と、BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)測定による早期発見の重要性が示されています。
肺水腫は、リトドリンの最も重篤な副作用の一つで、母体生命に直接関わる合併症です。
肺水腫の発症機序
高リスク要因
肺水腫の予防には、輸液を5%ブドウ糖液や10%マルトース液に変更し、シリンジポンプを用いて輸液量を最小限に抑えることが推奨されています。症状として「息苦しさ」「喘鳴」「座位で呼吸が楽になる」などの特徴的な症状が現れた場合は、直ちに医師に報告する必要があります。
血液系の副作用は、長期投与により発現頻度が高くなる特徴があります。
造血器系への影響
代謝系への影響
血液系副作用の早期発見には、週1回以上の定期的な血液検査が必須です。白血球数が3,000以下に低下した場合は投与中止を検討する必要があります。
横紋筋融解症は、リトドリンの稀だが重篤な副作用として注目されています。
横紋筋融解症の特徴
肝機能障害の発現パターン
肝機能障害は比較的頻度が高い副作用であり、特に多胎妊娠での発現率が高いことが知られています。週1回の肝機能検査により早期発見し、異常値が認められた場合は直ちに減量または中止を検討する必要があります。
リトドリンの適正使用により、これらの副作用の多くは予防可能とされており、的確な監視体制と早期対応が母児の安全確保に重要です。
リトドリン誘発性横紋筋融解症と精神症状に関する症例報告と文献レビュー
日本産科婦人科学会によるリトドリン適正使用に関する詳細ガイドライン