患者の8割がDAS28を理解していません。 jmedj.co(https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_13203)
T2T(Treat to Target)は「目標達成に向けた治療」と訳され、関節リウマチ治療における標準的アプローチとして2010年に欧州リウマチ学会を中心に提唱されました。これは糖尿病や高血圧における治療目標値の設定と同様に、関節リウマチでも具体的な治療ゴールを定め、そこに到達するまで治療を積極的に調整していく戦略です。 koala-naika(https://koala-naika.jp/%E6%B2%BB%E7%99%82%E6%88%A6%E7%95%A5%E3%81%AE%E5%9F%BA%E6%9C%AC%EF%BC%9A%E3%80%8Ct2t%E7%9B%AE%E6%A8%99%E9%81%94%E6%88%90%E3%81%AB%E5%90%91%E3%81%91%E3%81%9F%E6%B2%BB%E7%99%82%E3%80%8D)
T2T戦略では臨床的寛解を第一の治療目標とします。臨床的寛解とは、炎症によって引き起こされる疾患の症状・徴候が全くない状態を指します。つまり、痛みや腫れなどの自覚症状を一時的に抑える対症療法ではなく、炎症そのものを完全にコントロールすることが目標です。 jyseleca-pt(https://www.jyseleca-pt.jp/ra/fil/t2t-05/)
この治療戦略が重視される背景には、関節リウマチの病態進行に関する重要な知見があります。関節の損傷の大部分は、病気がおさまっていない最初の2年間に起こる可能性があり、この初期の変形が生涯にわたって残ることになります。早期に適切な治療を開始し、寛解を達成することが、長期的な予後改善につながるということですね。 koala-naika(https://koala-naika.jp/%E6%B2%BB%E7%99%82%E6%88%A6%E7%95%A5%E3%81%AE%E5%9F%BA%E6%9C%AC%EF%BC%9A%E3%80%8Ct2t%E7%9B%AE%E6%A8%99%E9%81%94%E6%88%90%E3%81%AB%E5%90%91%E3%81%91%E3%81%9F%E6%B2%BB%E7%99%82%E3%80%8D)
T2T戦略には4つの基本的な考え方があります。第一に、関節リウマチの治療は患者とリウマチ医が共に決めるべきであること。第二に、最も重要な治療ゴールは長期にわたって生活の質(QOL)を良い状態に保つことです。第三に、炎症を取り除くことが治療ゴール達成のために最も重要であり、第四に、疾患活動性の評価とそれに基づく治療の適正化が不可欠とされています。 asunorinsho.aichi-hkn(http://asunorinsho.aichi-hkn.jp/wp-content/uploads/2015/08/2011_2302_021.pdf)
治療目標を患者と医療者が共有することがT2T実践の鍵です。患者自身が確かな知識を身につけ、医師と治療目標を共有し、積極的に治療に参加することが大切です。 rheuma-net.or(https://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/rheuma/t2t/)
日本リウマチ学会によるT2T戦略の詳細解説(T2Tの基本概念と4つの原則について)
関節リウマチ治療における寛解達成率は、過去20年間で劇的に向上しています。慶應義塾大学医学部の報告によれば、2001年時点ではわずか7.8%だった寛解率が、新しい薬剤の登場により2021年には60.8%まで急増しています。つまり、現在では半数以上の患者が症状のない「寛解」状態に到達できているということです。 chiken-japan.co(https://chiken-japan.co.jp/blog/rheumatism-healed-person/)
これは20年前には考えられなかった進歩です。生物学的製剤が関節リウマチの治療に利用される以前では、完全寛解率は10%、重度障害に陥る率は10%、残り80%には程度の差がありますが何らかの障害を有していました。現在の60%台という寛解率は、治療薬の進歩とT2T戦略の普及が相まって達成されたものと言えます。 jouhoku-rheumatism(https://jouhoku-rheumatism.com/images/200306/doctor.pdf)
一方で、薬剤フリー寛解(ドラッグフリー寛解)の達成率は限定的です。寛解導入後の薬剤中止試験では概ね薬剤フリー寛解達成率は20%前後であり、大部分(約80%)の患者は治療中止により再燃してしまうのが現状です。 rheumatology.co(https://rheumatology.co.jp/drug-free/)
オランダのBeSt試験では、発症2年以内の早期リウマチ患者を対象に、4年時点で13%が薬剤中止後も寛解を維持しました。5年時点では全体で14%が薬剤フリー寛解に達し、特に開始時からインフリキシマブ併用療法を受けた群では19%と最も高い割合でした。 rheumatology.co(https://rheumatology.co.jp/drug-free/)
近年の分析でも早期リウマチ患者全体の約20%が最終的にDMARDフリー寛解に到達し得ると報告されています。ただし、完全に薬剤を中止するよりも、段階的に減量した方が薬剤中止後の寛解維持率が高まる可能性が示唆されています。 rheumatology.co(https://rheumatology.co.jp/drug-free/)
寛解維持が治療の最終目標です。一度寛解を達成しても、薬剤調整には慎重な判断が求められます。
T2T戦略を実践するためには、疾患活動性を客観的に評価する指標が不可欠です。DAS28(Disease Activity Score)は、圧痛関節数、腫脹関節数、患者VAS、急性期反応物質(CRPまたはESR)によってリウマチの活動性を表す代表的な指標です。 yukawa-clinic(https://yukawa-clinic.jp/knowledge/evaluation/calculation-method.html)
DAS28による活動性評価では、寛解の基準はDAS28(CRP)で2.3未満、DAS28(ESR)で2.6未満とされています。低疾患活動性はDAS28(CRP)で2.3以上2.7未満、中等度疾患活動性は2.7以上4.1以下、高疾患活動性は4.1を超える値と定義されます。 yukawa-clinic(https://yukawa-clinic.jp/knowledge/evaluation/calculation-method.html)
DAS28の計算式は少し複雑です。DAS28(CRP)は、0.56×√(圧痛関節数)+ 0.28×√(腫脹関節数)+ 0.36×Ln((CRP)×10+1)+0.014 ×患者による全般評価(100mmVAS)+0.96で算出されます。実際の臨床現場では、計算ツールやアプリを活用することが推奨されます。 knowledge.nurse-senka(https://knowledge.nurse-senka.jp/232289/)
DAS28以外にも、SDAI(Simplified Disease Activity Index)やCDAI(Clinical Disease Activity Index)などの評価指標があります。これらの指標を用いることで、治療効果を数値化して追跡でき、治療方針の決定に役立てることができます。 twmu-rheum-ior(https://twmu-rheum-ior.jp/diagnosis/ra/ra-target/remission.html)
しかし、課題も存在します。当院の調査では、必ずしもすべてのリウマチ医が総合的疾患活動性指標を患者に教えておらず、リウマチ専門医からの紹介患者も総合的疾患活動性指標を知っている患者は皆無でした。リウマチ友の会の講演でも、80人ほどの出席者中、総合的疾患活動性指標を理解していた人は3人でした。 jmedj.co(https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_13203)
患者教育が重要です。疾患活動性指標を患者と共有し、治療目標を明確にすることがT2T成功の鍵となります。
DAS28、SDAI、CDAIの詳しい算出方法と評価基準(東京リウマチ専門医による解説)
T2T戦略では、疾患活動性を定期的に評価し、目標が達成されていなければ治療内容を見直すことが推奨されています。具体的には、寛解または低疾患活動性を達成するまで疾患活動性を1~3ヵ月ごとに定期的に評価します。 yukawa-clinic(https://yukawa-clinic.jp/blog/treatment-strategy/post-603.html)
評価のタイミングは患者の状態によって異なります。中~高疾患活動性の患者では毎月評価を行い、低疾患活動性または寛解が維持されている患者では3~6ヶ月ごとに定期的な評価を実施します。 twmu-rheum-ior(https://twmu-rheum-ior.jp/diagnosis/ra/ra-target/remission.html)
抗リウマチ薬も生物学的製剤も治療効果発現まで、およそ1~3ヶ月間かかります。治療開始から治療効果が出るまで3か月間そのままで治療判定も行えますが、高疾患活動性状況が続く方や予後不良因子を有する方(RF陽性/ACPA陽性)などは、1か月毎に治療内容を見直すことが重要です。 yukawa-clinic(https://yukawa-clinic.jp/blog/treatment-strategy/post-603.html)
一刻も早く低疾患活動性~寛解を目指すことが、その後の薬剤休薬を目指す上で重要と考えられます。目標が達成できるまでは、定期的に疾患活動性のチェックを行い、3ヶ月毎に治療の見直しを行うことが標準的なアプローチです。 nagoya.hosp.go(https://nagoya.hosp.go.jp/LORA-registry/registry/)
治療調整のタイミングを逃さないことが大切です。定期的な評価により、早期に治療方針を修正し、寛解達成への最短ルートを見つけることができます。
T2T戦略の最終的な目標は、単なる症状のコントロールではなく、患者の長期的なQOLを最大限まで改善することです。具体的には、症状のコントロール、関節破壊などの構造的変化の抑制、身体機能の正常化、社会活動への参加を通じて、患者の生活の質を向上させることを目指します。 twmu-rheum-ior(https://twmu-rheum-ior.jp/diagnosis/ra/ra-target/remission.html)
T2Tによって寛解は関節リウマチの治療における現実的なゴールとして設定されるようになりました。これに伴い、寛解の基準をはじめとする治療効果の評価もより詳細かつ厳格なものとなってきました。米国リウマチ学会(ACR)では、治療評価を明確に定めています。 ra-hotnet(https://www.ra-hotnet.jp/treatment/policy/)
治療目標には複数の側面があります。痛み、炎症、こわばり、疲労のような症状をコントロールすること、関節や骨に対する損傷を起こさないこと、身体機能を正常に戻し、再度社会活動に参加できるようにすることが含まれます。 rheuma-net.or(https://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/rheuma/t2t/)
寛解状態を維持すると、腫れや痛みのような症状がなく、日常生活を支障なく送ることができます。T2Tの考え方のもと、「寛解」の達成を治療目標とし、その状態を「維持」できるように治療を進めます。 motto-hanaso-riumachi(https://www.motto-hanaso-riumachi.jp/content/dam/abbvie-talkoverra-ous/jp/T2TGuide.pdf)
関節リウマチT2T治療の実践状況と課題について(日本医事新報社による調査報告)