テグレトール(カルバマゼピン)の臨床試験では、患者1,613例中614例(38.1%)に1,282件の副作用が確認されており、精神神経系の副作用が最も高頻度で発現します。
主要な精神神経系副作用の発現頻度:
これらの症状は、テグレトールが脳に直接働きかける鎮静作用を持つため発現しやすく、しばしば複数の症状を併発することがあります。特に眠気やめまいは服用初期に強く現れる傾向があり、患者によっては「頭がふわふわしたり、ボーっとする感じ」「物事をあまり考えられなくなる」といった症状を呈することがあります。
運動失調の症状では、ふらついて歩行が困難になったり、酩酊に近い状態となる場合もあり、日常生活への影響が大きい副作用として注意が必要です。
テグレトールの重篤な副作用として、致命的な皮膚症状が挙げられます。特に服用開始後10日頃に発疹が現れた場合は最大の注意を要します。
重篤皮膚副作用の種類:
これらの重篤皮膚副作用の発症には遺伝的要因が関与しており、TENとStevens-Johnson症候群の発症にはHLA-B1502が強く関連するとされています。ただし、日本人ではHLA1502の保有率は低く、HLA-A*3101が関連するとされている点が重要です。
初期症状として「発熱、眼充血、顔面の腫脹、口唇・口腔粘膜や陰部のびらん、皮膚や粘膜の水疱、多数の小膿疱、紅斑、咽頭痛、そう痒、全身倦怠感」等が認められた場合は、直ちに服用を中止し緊急対応が必要です。
テグレトールの重篤な副作用として血液系障害があり、定期的な血液検査による監視が不可欠です。
主要な血液系副作用:
これらの血液系副作用は頻度不明ではあるものの、発症すると生命に関わる可能性があるため、患者には「喉の痛み、出血傾向、貧血症状」といった初期症状について十分な説明と指導が必要です。
血液検査では特に白血球数、好中球数、血小板数の推移を注意深く観察し、異常値が認められた場合は速やかに減量または中止を検討する必要があります。また、感染症のリスクも高まるため、発熱や感染症状に対する迅速な対応も重要となります。
テグレトールは肝臓で代謝されるため、肝機能への影響と腎機能障害のリスクがあります。
肝機能への影響:
頻度5%以上の副作用として、肝臓のALT・ALP・γ-GTP値の上昇が報告されており、重篤な場合は「肝機能障害、黄疸」に進展する可能性があります。初期症状として「食欲不振、全身倦怠感、白目や皮膚が黄色くなる」といった症状が現れることがあります。
腎機能への影響:
定期的な肝機能検査(AST、ALT、ALP、γ-GTP、ビリルビン)と腎機能検査(クレアチニン、BUN、尿検査)による監視が必要であり、異常値が認められた場合は速やかな対応が求められます。
テグレトールには心血管系への重篤な副作用と、他の薬剤では見られない特殊な合併症があります。
心血管系副作用:
これらの症状では「めまい、失神、徐脈」が初期症状として現れることがあり、特に高齢者や既存の心疾患を有する患者では注意が必要です。
特殊な合併症:
SIADHでは低ナトリウム血症による意識障害や痙攣のリスクがあり、無菌性髄膜炎では発熱、頭痛、項部硬直等の髄膜刺激症状に注意が必要です。これらは比較的稀な副作用ですが、テグレトール特有の合併症として認識し、適切な監視体制を整えることが重要です。
また、悪性症候群という極めて重篤な副作用も報告されており、高熱、筋強剛、自律神経症状等が現れた場合は緊急対応が必要となります。