低用量経口避妊薬の種類と一覧:医療従事者向け

低用量経口避妊薬の世代別分類、相性、用途別の特徴を詳細に解説。最新のアリッサを含む17種類の薬剤一覧と臨床選択のポイントをまとめました。適切な処方判断に必要な情報とは?

低用量経口避妊薬種類と一覧

低用量経口避妊薬の基本分類
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世代別分類

プロゲスチンの種類により第一〜第四世代に分類され、それぞれ異なる特性を持つ

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相性による分類

ホルモン配合比により一相性と三相性に区分され、服薬コンプライアンスに影響

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用途別分類

避妊目的のOCと治療目的のLEPに分類され、保険適用の可否が異なる

低用量経口避妊薬の世代別分類と特徴

低用量経口避妊薬は、配合されているプロゲスチン(黄体ホルモン)の種類により第一世代から第四世代まで分類されます。各世代の特徴と臨床的意義について詳しく解説します。

 

第一世代(ノルエチステロン系)

  • シンフェーズ:三相性製剤で自然な月経周期に近い
  • オーソM-21、エリオット21、オーソ777-28
  • 特徴:出血量減少効果が高く、生理痛緩和に優れる
  • 副作用:アンドロゲン様作用がやや強い

第二世代(レボノルゲストレル系)

  • トリキュラー、アンジュ:先発品
  • ラベルフィーユ:後発品(ジェネリック)
  • 特徴:不正出血が起こりにくく、副作用が比較的少ない
  • 避妊効果:99.7%の高い有効性

第三世代(デソゲストレル系)

  • マーベロン:先発品
  • ファボワール:後発品(ジェネリック)
  • 特徴:男性ホルモン作用が最も弱く、肌荒れ・多毛症改善効果
  • 一相性製剤で服薬管理が簡便

第四世代(ドロスピレノン系)

  • ヤーズ:超低用量ピルとして分類
  • 特徴:抗ミネラルコルチコイド作用により浮腫軽減効果
  • 主に月経困難症治療に使用

低用量経口避妊薬の相性による違い

ホルモン配合パターンにより、低用量経口避妊薬は一相性と三相性に分類されます。この違いは臨床効果と患者コンプライアンスに重要な影響を与えます。

 

一相性製剤の特徴

  • 全錠でエストロゲン・プロゲスチン量が一定
  • 代表的製剤:マーベロン、ファボワール、ルナベル
  • メリット。
  • 服薬管理が簡単
  • 錠剤の順番を間違える心配がない
  • 月経移動の調整が容易

三相性製剤の特徴

  • 月経周期に合わせてホルモン量が段階的に変化
  • 代表的製剤:トリキュラー、アンジュ、シンフェーズ
  • メリット。
  • 自然な月経周期により近い
  • 不正出血の発生率が低い
  • 総ホルモン量が少ない

臨床選択の考慮点

  • 初回処方時は一相性が推奨される場合が多い
  • 不正出血の既往がある患者には三相性を検討
  • 月経移動の希望が多い患者には一相性が適している

低用量経口避妊薬の用途別分類(OC・LEP)

低用量経口避妊薬は添付文書の効能・効果により、OC(Oral Contraceptives)とLEP(Low dose Estrogen-Progestin)の2種類に分類されます。

 

OC(経口避妊薬)の特徴

  • 主目的:避妊
  • 保険適用:なし(自費診療)
  • 主な製剤。
  • トリキュラー、アンジュ、ラベルフィーユ
  • マーベロン、ファボワール
  • シンフェーズ
  • 避妊効果:正しく服用すれば99%以上の有効性

LEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合錠)の特徴

  • 主目的:月経困難症、子宮内膜症の治療
  • 保険適用:あり
  • 主な製剤。
  • ルナベル、フリウェルUCD(第一世代)
  • ジェミーナ(第二世代)
  • ヤーズ(第四世代)

処方時の注意点

  • OCとLEPは同一成分でも適応が異なる
  • 保険請求時は適応疾患の確認が必要
  • 避妊目的でのLEP処方は不適切

低用量経口避妊薬の新しい選択肢

2024年12月に新たに承認されたアリッサ®は、従来の低用量ピルとは異なるエストロゲン成分を含有する画期的な製剤です。

 

アリッサ®の革新的特徴

  • エステトロール配合:従来のエチニルエストラジオール(EE)に代わる新しいエストロゲン
  • 血栓症リスクの軽減:血液凝固への影響が少ない
  • 子宮内膜抑制効果:月経痛軽減、子宮内膜症への効果期待
  • 乳腺への影響軽減:乳がんリスクの低下可能性
  • 肝障害の軽減:肝臓への負担が少ない

従来製剤との比較
従来の低用量ピルは全てEE(エチニルエストラジオール)を含有していましたが、アリッサ®はエステトロールという天然型に近いエストロゲンを使用しています。これにより、従来の課題であった血栓症リスクや肝機能への影響を軽減できる可能性があります。

 

臨床応用への期待

  • 血栓症リスクの高い患者への新たな選択肢
  • より安全性の高い長期投与が可能
  • 子宮内膜症治療における効果向上の期待

低用量経口避妊薬選択における臨床的考慮点

適切な低用量経口避妊薬の選択には、患者の個別性を考慮した多角的な評価が必要です。

 

患者背景による選択基準

  • 年齢・喫煙歴:35歳以上の喫煙者では慎重投与
  • 既往歴:血栓症、肝疾患、乳がんの既往確認が必須
  • 併用薬:CYP3A4誘導薬との相互作用に注意
  • 生活習慣:服薬時間の一定性確保の可否

症状別の最適選択

  • ニキビ・多毛症:第三世代(マーベロン、ファボワール)
  • 月経過多:第一世代(シンフェーズ)
  • 不正出血の既往:三相性製剤を優先検討
  • 浮腫傾向:第四世代(ヤーズ)の検討

処方時のモニタリング項目

  • 血圧測定:処方前および定期的な確認
  • 体重変化:浮腫や体重増加の評価
  • 血液検査:肝機能、凝固能の定期チェック
  • 乳房・子宮頸部検診:年1回の実施推奨

服薬指導のポイント

  • 定時服薬の重要性:避妊効果維持のため
  • 飲み忘れ時の対応:24時間以内なら補完可能
  • 副作用の説明:初期の軽微な症状の経過観察
  • 緊急時の対応:血栓症症状の早期発見方法

低用量経口避妊薬の適切な選択と管理により、患者のQOL向上と安全な使用が実現できます。最新の知見を踏まえ、個々の患者に最適な製剤選択を行うことが重要です。

 

日本産科婦人科学会による低用量経口避妊薬の公式一覧表