月経周期は、視床下部-下垂体-卵巣系(HPG軸)という内分泌システムによって精密に調節されています。この調節機構は、視床下部から分泌されるゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)が起点となります。GnRHは下垂体に働きかけ、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)の分泌を促進します。ivf-kyono+5
FSHは卵巣に存在する卵胞の発育を促し、卵胞内の卵子を成熟させる役割を担っています。一方、LHは成熟した卵胞に作用して排卵を誘発し、排卵後には黄体の形成を促進します。これらのゴナドトロピンの作用により、卵巣からエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌されます。aska-pharma+4
興味深いことに、これらのホルモン分泌にはフィードバック機構が存在します。血中の女性ホルモン濃度が上昇すると、視床下部はGnRHの分泌量を減少させ、それに伴い下垂体からのゴナドトロピン分泌も抑制されます。このネガティブフィードバック機構により、ホルモン濃度が適切な範囲に維持されています。pmc.ncbi.nlm.nih+4
卵胞期は月経開始から排卵までの期間で、通常12〜16日程度続きます。この時期の特徴は、エストロゲンの分泌量が徐々に増加していくことです。月経終了後、下垂体から分泌されるFSHの刺激により、卵巣内の原始卵胞が発育を始めます。daiichisankyo-hc+3
発育する卵胞からはエストロゲン(特にエストラジオール)が分泌され、その濃度は卵胞期の後半、排卵直前にピークに達します。エストロゲンは子宮内膜に作用し、内膜を増殖させて厚くします。この子宮内膜の増殖は、将来の受精卵の着床に備えた重要な準備過程です。pmc.ncbi.nlm.nih+3
卵胞期においてエストロゲン濃度が最大に達すると、通常のネガティブフィードバックとは逆に、ポジティブフィードバックが働きます。高濃度のエストロゲンが視床下部と下垂体を刺激し、LHの急激な分泌増加(LHサージ)を引き起こします。このLHサージが排卵の引き金となり、成熟した卵胞から卵子が放出されます。pmc.ncbi.nlm.nih+4
卵胞期は基礎体温が低温期を示す時期でもあり、心身ともに安定しやすい期間とされています。エストロゲンの作用により、肌の調子や代謝状態も良好になりやすく、体調面で最も快適に過ごせる時期といえます。brand.taisho+2
黄体期は排卵後から次の月経が始まるまでの期間で、通常14日程度継続します。排卵後、卵子が放出された卵胞は黄体という組織に変化し、プロゲステロンの分泌を開始します。プロゲステロンは「妊娠維持ホルモン」とも呼ばれ、妊娠の成立と継続に不可欠な役割を果たします。mederi+3
この時期、プロゲステロンの分泌量は急激に増加し、黄体期中期にピークを迎えます。プロゲステロンは子宮内膜に作用し、卵胞期に増殖した内膜を分泌期内膜へと変化させます。この変化により、受精卵が着床しやすい環境が整えられます。academic.oup+3
プロゲステロンのもう一つの重要な作用は、基礎体温の上昇です。黄体期には基礎体温が約0.3〜0.5度上昇し、高温期を形成します。この体温上昇は、プロゲステロンが体温調節中枢に作用することで生じます。pmc.ncbi.nlm.nih+4
妊娠が成立しなかった場合、黄体は徐々に退縮し、プロゲステロンとエストロゲンの分泌が急激に低下します。このホルモン濃度の急激な低下により、厚くなった子宮内膜が剥離し、月経として体外に排出されます。この急激なホルモン変動が、月経前症候群(PMS)の原因の一つと考えられています。otsuka+4
黄体期には水分代謝が滞りやすくなるため、むくみや体重増加、イライラ、眠気などの症状を感じる方が多くなります。これらの症状は主にプロゲステロンの作用によるものです。fujiyaku-direct+2
医療従事者にとって、月経周期のホルモン動態を正確に把握することは、不妊症や月経異常の診断において極めて重要です。ホルモン検査では、月経周期のどの時期に採血するかによって、評価できる内容が異なります。nishitan-art
月経期(月経開始から5日以内)の採血では、FSH、LH、エストラジオール(E2)、プロラクチン(PRL)などを測定します。この時期のFSH値は卵巣予備能の評価に有用で、高値であれば卵巣機能の低下が疑われます。LH/FSH比は多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の診断に役立ち、LH高値でFSH正常の場合はPCOSの可能性を考慮します。jaog+2
排卵期前後では、LHサージの確認が重要です。LHサージは通常、基礎体温が低温期から高温期に移行する直前に生じます。黄体期中期(排卵後7日目頃)には、プロゲステロン測定により排卵の有無と黄体機能を評価できます。pmc.ncbi.nlm.nih+4
基礎体温測定は、月経周期を自己管理する最も確実な方法です。基礎体温とは、朝目覚めた直後、体を動かす前の安静時の体温を指します。測定には婦人体温計を使用し、舌下で測定します。nittai+3
正常な月経周期では、基礎体温は低温期と高温期の二相性を示します。低温期は月経開始から排卵までの期間で、高温期は排卵後から次の月経までの期間です。低温期と高温期の温度差は通常0.3〜0.5度程度で、高温期は約14日間持続します。mypill+2
基礎体温グラフから、排卵日の予測、月経周期のパターン、黄体機能の評価が可能です。高温期が10日未満の場合は黄体機能不全、高温期が16日以上持続する場合は妊娠の可能性が考えられます。また、二相性が不明瞭な場合は無排卵周期の可能性があります。pmc.ncbi.nlm.nih+3
月経周期に伴うホルモン変動は、女性の全身に多様な影響を及ぼします。従来、月経周期の影響は生殖器系に限定されると考えられてきましたが、近年の研究により、代謝、心血管系、神経系、さらには眼科領域まで、幅広い臓器系統に影響することが明らかになっています。pmc.ncbi.nlm.nih+1
代謝面では、黄体期に糖代謝や脂質代謝の変化が生じることが報告されています。インスリン抵抗性は月経周期を通じて変動し、黄体期に増加する傾向があります。この代謝変動は、糖尿病患者における血糖コントロールの変動や、健常女性における体重変動の一因となっている可能性があります。pmc.ncbi.nlm.nih+2
睡眠の質も月経周期の影響を受けます。黄体期、特に月経前には睡眠の質が低下し、不眠を訴える女性が増加します。これは主にプロゲステロンの体温上昇作用と、エストロゲン・プロゲステロンの急激な低下によるものと考えられています。pmc.ncbi.nlm.nih
興味深いことに、網膜構造や脈絡膜厚も月経周期に伴い変動することが最近の研究で示されています。エストロゲンとプロゲステロンの受容体は神経網膜と網膜色素上皮に存在し、これらのホルモンが眼組織に直接作用している可能性が示唆されています。pmc.ncbi.nlm.nih+1
臨床現場において、月経周期とホルモン変動の理解は、様々な婦人科疾患の診断と治療に不可欠です。月経不順の原因として最も多いのは、過度なストレスや急激な体重変化によるホルモンバランスの乱れです。これらの要因により、視床下部-下垂体-卵巣系の調節機構が障害され、排卵障害や月経周期異常が生じます。nikkei+4
また、交替制勤務や夜勤は月経周期に悪影響を及ぼすことが複数の研究で示されています。夜勤を含む交替制勤務に従事する女性は、日勤のみの女性と比較して、不規則な月経周期や長周期月経のリスクが有意に高くなります。これは概日リズムの乱れが視床下部のGnRH分泌に影響し、結果として月経周期異常を引き起こすためと考えられています。jstage.jst+1
月経周期と経口避妊薬に関する生理学的レビュー
月経周期中のホルモン変動が様々な生理学的側面に与える影響について、システマティックな解説が記載されています。
日本産科婦人科学会:月経周期と女性ホルモンのメカニズム
月経周期における各種ホルモンの測定時期や臨床的意義について、医療従事者向けの詳細な情報が提供されています。
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