ジェネリックに切り替えても、先発品より患者負担が増えるケースがあります。

ウラリット配合散(正式名称:ウラリット−U配合散)の後発品として現在流通しているのは、主にクエンメット配合散(日本薬品工業)です。かつて東和薬品が「ポトレンド配合散」を販売していましたが、現在は終売となっており、実質的にクエンメット配合散が唯一の選択肢となっています。
散剤(配合散)だけでなく錠剤(配合錠)系統もあるため、まず剤形ごとの薬価を整理しておきましょう。
| 販売名 | 区分 | 剤形 | 薬価(2025年度改定後) | メーカー |
|---|---|---|---|---|
| ウラリット−U配合散 | 先発品(長期収載品) | 散 | 10.9円/g | 日本ケミファ |
| クエンメット配合散 | 後発品 | 散 | 9.7円/g | 日本薬品工業(日本薬工) |
| ウラリット配合錠 | 先発品(長期収載品) | 錠(素錠) | 6.5円/錠 | 日本ケミファ |
| クエンメット配合錠 | 後発品 | フィルムコーティング錠 | 6.1円/錠 | 日本薬品工業(日本薬工) |
クエンメットにはとりわけ注目すべき経緯があります。もともと沢井製薬がウラリットのGE薬を製造・販売していましたが、日本薬品工業(日本ケミファの子会社)がその事業を承継し、製造方法をウラリット先発品と同一の原薬・同一の製造ラインに変更したうえで「クエンメット」として新たに上市しました。
薬事日報の報道(2018年)によれば、日本ケミファの山口社長自身が「事実上のオーソライズド・ジェネリック(AG)かもしれない」と発言しており、品質面では先発品との同等性が極めて高いとされています。つまり「品質は先発品と同水準の後発品」という整理です。
なお、この変更はPMDA(医薬品医療機器総合機構)への申請に基づくものであり、販売名変更も含む正式な承認プロセスを経ています。ジェネリックだからと品質を懸念する必要はありません。
採用検討の際は「散 vs 錠」の剤形選択を先に決め、次に薬価・安定供給性を確認する流れが基本です。
参考:薬事日報「【日本ケミファ】高尿酸血症領域で差別化−クエンメットは"事実上のオーソライズド・ジェネリック"」
https://www.yakuji.co.jp/entry66041.html
有効成分(クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物)はまったく同一です。ただし「添加物」と「剤形の特性」には無視できない差異があり、患者への切り替え説明の前に必ず確認しておく必要があります。
クエンメット配合散の添加物は黄色5号・無水クエン酸・レモン油の3つです。一方、先発品のウラリット−U配合散はレモン香料を使用していますが、具体的な添加物の構成はメーカー資料(インタビューフォーム)で確認するのが原則です。特に黄色5号(タートラジン)は一部の患者でアレルギー反応・過敏症を引き起こすことがあるため、既往歴のある患者へ切り替える際には注意が必要になります。
錠剤については、先発品のウラリット配合錠が素錠であるのに対し、クエンメット配合錠はフィルムコーティング錠です。高齢患者や素錠の飲み込みに抵抗感がある患者には、かえって後発品のほうが受け入れやすいケースもあります。これは使えそうです。
⚠️ 粉砕処理には特別な注意が必要です。クエンメット配合錠は吸湿性が高く、日本薬品工業のインタビューフォームによると、25℃・75%RHの高湿度環境下では開始1日目から膨張・亀裂・刻印埋もれが発生し、3日目には性状変化、2ヵ月目には潮解が確認されています。質量増加率は7日目で約16%、1ヵ月では30%超という数値も出ており、粉砕は基本的に推奨されません。
粉砕が避けられない場合は以下の対応が求められます。
服薬指導の内容は先発品と後発品で共通です。液体への溶解については、スポーツドリンクやジュースへの溶解は問題ありませんが、牛乳・乳酸菌飲料(クエン酸がカゼインを凝集させ沈殿が発生)や炭酸飲料(発泡)への溶解は避けるよう伝えることが重要です。切り替えのタイミングで改めて伝えると、コンプライアンス向上につながります。
簡易懸濁法については、クエンメット配合散が「適1」(10分以内に崩壊・懸濁し8Fr.チューブを通過)、クエンメット配合錠が「適2」(コーティング破壊後10分以内に崩壊・8Fr.チューブを通過)という判定が取得されています。在宅・施設患者への処方でも対応可能です。
参考:日本薬品工業「クエンメット配合錠・配合散に関するQ&A(医薬品インタビューフォーム)」
https://www.npi-inc.co.jp/medical/info/file/451
2024年10月1日施行の制度改正により、後発医薬品のある長期収載品(先発品)を患者が希望した場合、後発品との薬価差の4分の1に相当する金額が選定療養費として追加自己負担となりました。ウラリット−U配合散はこの選定療養の対象品目に指定されています。
具体的な患者負担の計算を確認しましょう。
1回投与量1g・1日3回・30日処方(90g/月)の場合、月あたりの追加負担は27円となります。金額だけを見れば小さな差ですが、制度の本質として重要なのは「保険給付外費用である」という点です。選定療養費は高額療養費の対象外であり、公費の対象にもなりません。長期慢性疾患の患者が数年にわたって先発品を希望し続けると、積み重なる負担は無視できなくなります。
なお、以下の場合は選定療養費が発生しない例外となります。
この判断は処方医と薬剤師の連携が条件です。患者から「なぜ追加料金がかかるの?」と聞かれた際に、医療従事者として正確に答えられるよう制度の理解を深めておくことが求められます。
さらに、厚生労働省は2025年11月の審議会において、選定療養費の患者負担割合を現行の「差額の1/4」からさらに引き上げる3案を提示しています。今後の改定次第では患者負担が増加する可能性もあり、最新動向を継続的に把握しておく必要があります。
参考:厚生労働省「後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_39830.html
後発品への切り替えを行った後も、処方目的である「尿pHのコントロール」は継続して管理する必要があります。有効成分が同じだからといって、切り替え後の尿pH確認を省略してよいわけではありません。
添付文書上の目標pHは6.2〜6.8です。この範囲が基本です。
尿路結石全体に占める尿酸結石の割合は約10%程度ですが、リン酸カルシウム結石もpHが高い環境で溶解度が低下することが知られています。過度なアルカリ化も避けるべきです。投与量の調整は尿pH測定に基づいて行い、切り替え直後は少なくとも1〜2週間後に尿pHを再確認することが推奨されます。
次に相互作用の確認も切り替えのたびに見直しましょう。クエン酸製剤として注意すべき薬剤の組み合わせは下記の通りです。
CKD(慢性腎臓病)患者への処方では、カリウム負荷の問題が特に重要になります。本剤1回1g中にはクエン酸カリウムが含まれており、1日3回投与でのカリウム摂取量は無視できません。腎機能が低下した患者では、ジェネリックへの切り替えとは別に、定期的な血清カリウム測定を組み込んだフォロー体制が求められます。電解質管理が原則です。
参考:ウラリット配合錠・U配合散の添付文書情報(KEGG医薬品情報)
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00057695
痛風・高尿酸血症における酸性尿改善がウラリット配合散の主な適応ですが、近年はCKD(慢性腎臓病)に伴う代謝性アシドーシスへの応用にも注目が集まっています。あまり知られていない側面です。
代謝性アシドーシスはCKD進行の独立したリスク因子とされており、クエン酸製剤によるアシドーシス補正が腎保護的に機能する可能性を示す臨床データが蓄積されています。日本ケミファと東北大学の連携研究でも、尿アルカリ化薬とCKD進行抑制の関連性を検証する試みが報告されています(薬事日報2018年記事)。ただし、CKDへの適応を目的とした処方はアシドーシスの改善という保険適応の範囲内で行われるものであり、適応外使用にならないよう正確な理解が必要です。
在宅医療・施設入居患者への処方では、剤形の選択が特に重要な判断ポイントになります。ジェネリックへの切り替えを検討する際の実践的なフローを整理すると、次のようになります。
医薬品の安定供給という観点からも、クエンメットは先発品と同じ製造ラインを持つという特徴が長所になります。製造トラブルや出荷調整が起きた際のリスクが先発品と連動しやすいという見方もある一方、独自の供給体制を持つという意味では一定の安定性が期待できます。長期処方における品質の安定性という面でも信頼性は高いといえるでしょう。
ジェネリックへの切り替えは、薬価削減だけを目的とするものではありません。患者の状態・剤形の適性・添加物への懸念・在宅対応の可否を総合的に判断したうえで選択することが、医療の質を維持しながらコスト最適化を実現する正しいアプローチです。結論は「患者ごとの個別評価が原則」です。
参考:クエンメット配合散 医薬品インタビューフォーム(JAPIC)
https://pins.japic.or.jp/pdf/medical_interview/IF00001118.pdf