「アクアチムクリーム ステロイド入ってる?」という検索が増える背景には、“赤みが引く=ステロイド”という連想と、「外用=とりあえず炎症を抑える薬」という一般のイメージが重なっていることが多いです。
しかしアクアチムクリーム1%は、ニューキノロン系外用抗菌剤であるナジフロキサシンを有効成分とする抗菌薬で、ステロイド(副腎皮質ホルモン)製剤ではありません。根拠として、添付文書の「組成」に有効成分としてナジフロキサシン10mg/gが明記されており、ステロイド成分の記載はありません。
医療者側の説明では、まず「炎症を抑える薬」ではなく「原因菌(アクネ菌やブドウ球菌属)の増殖を抑え、殺菌的に作用する薬」である点に焦点を当てると誤解が解けやすいです。添付文書でも、作用機序として「細菌のDNAジャイレースに作用しDNA複製を阻害、殺菌的に作用」と記載されています。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/31195c71df3581788638edc8c322e724269b511e
加えて、“ステロイドが入っていない=安全で無制限に使ってよい”という別の誤解も生まれがちです。抗菌薬である以上、耐性菌の観点からも「必要最小限の期間にとどめる」という発想が必須で、ここを外すと患者の自己判断継続につながります。添付文書にも耐性菌発現を防ぐための注意が明記されています。
患者が「ステロイドっぽい」と感じるのは、炎症性病変(赤ニキビ、膿疱、毛包炎など)で、数日~1週間程度で見た目が落ち着く経験があるからです。実際、アクアチムは「ざ瘡(化膿性炎症を伴うもの)」や表在性・深在性皮膚感染症に適応があり、原因菌をターゲットにすることで炎症が二次的に改善します。適応菌種としてアクネ菌・ブドウ球菌属、適応症としてざ瘡や皮膚感染症が添付文書に整理されています。
ここで医療者が押さえたいのは、ステロイドのように免疫反応を直接抑えるのではなく、「細菌量を落として炎症ドライバーを減らす」という構造です。たとえば炎症性ざ瘡の患者には、面皰(コメド)主体の病変には効きにくい可能性があり、抗菌薬単独で全要素を解決できない点を最初に合意しておくと、治療満足度が上がります。実際、添付文書の適応は「化膿性炎症を伴うざ瘡」であり、面皰主体の“詰まり”そのものを治す薬とは位置づけが異なります。
また、添付文書の臨床成績では、尋常性ざ瘡患者を対象とした国内試験で一定の有効率が示され、基剤との二重盲検比較でも差が確認されています。これは「効く・効かない」の二元論ではなく、適応に沿って使えば改善しやすい一方、適応外の病態では期待値調整が必要、という説明に使えます。
意外と見落とされがちなのは、アクアチムが「抗菌スペクトラムが広い」こと自体が、患者の“何にでも効く万能薬”という誤解につながる点です。添付文書は広い抗菌スペクトラムを述べつつも、適応菌種・適応症を限定しており、実臨床では“診断名と病変の性状”で適応判断する必要があります。
「ステロイドじゃないのに赤くなる・ヒリヒリするのはなぜ?」は患者から頻出です。添付文書では、皮膚の副作用として、そう痒感、刺激感、発赤、潮紅、丘疹、接触皮膚炎、皮膚乾燥などが挙げられています。ここを先に伝えておくと、患者は“悪化”と“副作用”の区別がつきやすくなります。
一方で、患者が最も恐れる副作用は「ステロイドの副作用(皮膚萎縮、酒さ様皮膚炎など)」であり、ここは明確に線を引く必要があります。アクアチムはステロイド外用薬ではないため、ステロイド特有の機序による副作用を前提に説明するのは適切ではありません(ただし別剤併用中なら話は別)。この説明をするときは、「この薬で注意するのは主に刺激感や接触皮膚炎、そして耐性菌」のように、リスクの種類を置き換えるのがコツです。副作用の列挙と、耐性菌予防の基本方針は添付文書に根拠があります。
“意外な情報”として現場で役立つのは、キノロン系の経口剤で光線過敏症が報告されている点が添付文書に触れられていることです。外用で同様の頻度・程度が直結するわけではありませんが、患者が日光曝露で不安を訴えた際に「添付文書上も関連情報があるので、強い異常があれば中止して相談」と説明しやすくなります。
さらに、添付文書には「眼科用として角膜・結膜には使用しない」と明記されており、目周囲のニキビ様皮疹に自己判断で塗り込む患者への注意喚起に使えます。患者は“クリーム=どこでも塗れる”と思いがちなので、部位禁忌に近い注意は早めに伝える価値があります。
用法用量は、添付文書で「1日2回、患部に塗布」「ざ瘡は洗顔後に塗布」と整理されています。医療者が指導で強調したいのは、回数よりも「終了条件」が明確に定められている点です。
具体的には、表在性・深在性皮膚感染症では「1週間で効果が認められない場合は使用中止」、ざ瘡では「4週間で効果が認められない場合は中止」「炎症性皮疹が消失した場合には継続使用しない」とされています。これは抗菌薬らしい“区切り”で、ステロイド外用薬のように“症状で増減しながら長期”という運用を患者が持ち込まないようにする重要ポイントです。
患者説明で有用なのは、次のような短いフレーズです(外来でそのまま使える形にしています)。
また、添付文書の「重要な基本的注意」には、耐性菌発現を防ぐため「原則として感受性を確認し、治療上必要な最小限の期間」と明記されています。外来では培養を常に行えるわけではありませんが、“原則”として書かれている以上、医療者は「漫然使用は避ける」というメッセージを患者に落とし込む責任があります。
検索上位の記事は「ステロイドか否か」のFAQで止まりがちですが、医療従事者向けに一段深掘りすると、実務上の主戦場は“耐性”と“再燃時の自己再開”です。抗菌外用薬は患者の手元に残りやすく、赤くなったら自己判断で再開しやすい一方で、その行動は耐性菌発現の観点から望ましくありません。添付文書でも、耐性菌防止のために必要最小限期間とすることが明記されています。
ここでの説明設計は、患者の価値観(早く治したい、通院を減らしたい)を否定せずに、行動だけ変えることがポイントです。たとえば「再発したら“同じ薬をまた塗る”より、いまの病変が細菌性炎症なのか、別の要因(刺激、毛包閉塞、接触皮膚炎など)なのかを一回確認した方が早く治る」という言い方は受け入れられやすいです。副作用として接触皮膚炎が挙げられているため、“赤い=菌”ではない可能性を示す根拠にもなります。
また、添付文書の薬物動態には、健康成人男性に背部へ塗布した際の血漿中濃度(ng/mLオーダー)や尿中排泄率が記載されており、「外用だから全身影響ゼロ」と言い切るのではなく、「全身移行は大きくはないが、添付文書上は血中濃度データがある薬」として妊婦等の慎重投与に話をつなげられます。妊婦への投与は有益性が危険性を上回る場合に限る旨も添付文書に明記されています。
最後に、医療者が患者へ渡す“言語化テンプレ”として、次の一文が便利です。
【参考リンク:アクアチムクリームの組成(有効成分・添加剤)、効能効果、用法用量、使用中止の目安、耐性菌への注意がまとまっている】
アクアチムクリーム1% 添付文書(JAPIC)