母乳育児の赤ちゃんの75%がビタミンD不足——これを見落とすと「健康的な育て方」がリスクになります。
ビタミンDが不足すると、カルシウムの腸管吸収が著しく低下し、骨の石灰化が不十分になります。これが小児期の骨変形・くる病(Rickets)の主因です。
日本国内のデータでは、1〜15歳におけるビタミンD欠乏性くる病の年有病率が、2005年の1.1(人口10万対)から2014年には12.3(人口10万対)と、約11倍に増加したことが報告されています。 これはほぼ10年で、くる病と診断される子供が10倍以上に増えたことを意味します。 danone-institute.or(https://www.danone-institute.or.jp/mailmagazine/2977/)
典型的な骨・運動系の症状は以下のとおりです。 jspe.umin(https://jspe.umin.jp/public/kuru.html)
O脚はかつて「生理的なもの」と見なされてきました。しかし近年、O脚の多くがビタミンD欠乏に起因することが明らかになっています。 放置すると膝関節症に進行するリスクもあるため、早期評価が重要です。 f-clinic(https://f-clinic.jp/column/118)
骨密度への影響も深刻です。20年前と比較して、日本人の骨密度は10%程度低下しているというデータがあります。 これはビタミンD欠乏が長期的に蓄積した結果とも考えられています。 f-clinic(https://f-clinic.jp/column/118)
また、低カルシウム血症による痙攣は緊急対応が必要な場面です。血清25-OH-D濃度が極度に低い場合、テタニーや心電図異常(QT延長)を引き起こすこともあります。 痙攣の原因検索にはビタミンDも鑑別に加えることが原則です。 medicaldoc(https://medicaldoc.jp/m/nutrients/nu025/)
参考(くる病の臨床像):日本小児内分泌学会による公式解説ページです。診断基準・症状・治療について詳しく解説されています。
骨変形だけがビタミンD不足の症状ではありません。これは押さえておきたい重要な点です。
ビタミンDは自然免疫・獲得免疫の両方に関与するホルモン様物質です。VDR(ビタミンD受容体)はT細胞・B細胞・マクロファージなど免疫細胞の多くに発現しており、抗菌ペプチド(カテリシジン・β-ディフェンシン)の産生を促進します。この働きが不十分になると、感染を繰り返す子供になります。
実際に臨床現場で見られるのは以下のような訴えです。 ruriclinic(https://ruriclinic.com/blog/%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%A8%E6%80%96%E3%81%84%E3%80%82%E5%AD%90%E4%BE%9B%E3%81%AE%E3%83%93%E3%82%BF%E3%83%9F%E3%83%B3d%E4%B8%8D%E8%B6%B3%E3%80%82/)
つまり、「免疫が弱い子」の背景にビタミンD不足が潜んでいる可能性があるということです。
「反復性中耳炎」「扁桃炎を繰り返す」といった主訴で小児科を受診する子供も、ビタミンDの血中濃度を確認する価値があります。欧米の研究では、血清25(OH)D濃度が30ng/mL以上の小児は、20ng/mL未満の小児と比べて上気道感染のリスクが有意に低いと報告されています。
日本の国立環境研究所の調査では、女子の中高生において89.8%がビタミンD非充足(不十分または欠乏)状態にあることが判明しています。 繰り返す感染症の原因としてビタミンD不足が見落とされているケースは少なくないと考えられます。 nies.go(https://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/79/column2.html)
参考(ビタミンDと免疫の関係):メディカルドックによる監修記事で、不足症状全体を網羅的に解説しています。
骨と免疫に注目が集まりがちですが、神経発達・精神面への影響はまだ見過ごされやすいテーマです。意外ですね。
ビタミンDは脳の神経細胞の分化・成熟にも関与しています。VDRは脳内の前頭前野・海馬・小脳など広範に発現しており、神経栄養因子(NTF)の産生調節にも関わっています。妊娠中のビタミンD欠乏と子供のASDリスク上昇の関連を示す疫学研究も存在します。
小児期における具体的な精神・行動面の影響として以下が指摘されています。 ruriclinic(https://ruriclinic.com/blog/%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%A8%E6%80%96%E3%81%84%E3%80%82%E5%AD%90%E4%BE%9B%E3%81%AE%E3%83%93%E3%82%BF%E3%83%9F%E3%83%B3d%E4%B8%8D%E8%B6%B3%E3%80%82/)
「なんとなく元気がない」「怒りっぽい」という子供の主訴に対して、ビタミンDの血中測定を考慮することはまだ一般的ではありません。しかし医療従事者として、この視点を持つことは大きなアドバンテージになります。
北欧の研究では、血清25(OH)D濃度が低い小児ほど、気分障害のスコアが高い傾向が報告されています。日照時間が少ない冬季や、屋内活動が多い子供では特にリスクが高まります。
また、日本のコロナ禍(ステイホーム期間)に外遊びが制限されたことで、小児のビタミンD不足が一層深刻化したと専門家が警鐘を鳴らしています。 単なる「気分の問題」で片付けず、栄養面からのアプローチを検討することが求められます。 st.benesse.ne(https://st.benesse.ne.jp/ikuji/content/?id=88457)
「母乳は完全食」というイメージが根強くあります。しかし、ビタミンDに関しては例外です。
母乳中のビタミンD含有量は非常に少なく、通常25〜78 IU/L程度にすぎません。乳児の推奨ビタミンD摂取量(400IU/日)を母乳だけで満たすには、1日4〜8Lの授乳が必要になる計算です。現実的に不可能な量ですね。
実際のデータとして、順天堂大学の研究グループが東京・静岡の生後0〜6ヶ月の乳児49人を調査した結果、母乳育児の28人のうち75%がビタミンD不足と判定されました。 完全母乳育児が推奨される一方で、ビタミンD補充の必要性は十分に伝えられていないのが現状です。 st.benesse.ne(https://st.benesse.ne.jp/ikuji/content/?id=88457)
以下の条件が重なる場合、乳児のビタミンD欠乏リスクはさらに高まります。
医療従事者として重要なのは、乳幼児健診の場でビタミンD補充について積極的に親御さんへ情報提供することです。日本小児科学会は、母乳育児の乳児に対して400IU/日のビタミンD補充を推奨しています。 この情報は健診時の1アクションで子供の骨発育を守る可能性があります。 f-clinic(https://f-clinic.jp/column/118)
参考(母乳とビタミンDの関係):とみもと小児科クリニックによる詳細なQ&A形式の解説ページです。乳幼児のビタミンD不足の実態について数値データとともに解説されています。
症状に気づいたら、次は検査・診断のステップです。これが基本です。
血清25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)濃度の測定が第一選択となります。評価基準は以下のとおりです。
| 25(OH)D濃度 | 判定 | 臨床的意義 |
|---|---|---|
| 30 ng/mL以上 | ✅ 充足 | 骨・免疫機能に問題なし |
| 20〜30 ng/mL | ⚠️ 不十分(Insufficiency) | 長期的にリスクあり・食事・日光指導を検討 |
| 20 ng/mL未満 | ❌ 欠乏(Deficiency) | くる病・免疫低下リスク・補充療法を考慮 |
| 12 ng/mL未満 | 🚨 重度欠乏 | 症状性くる病・痙攣リスク・積極的治療 |
治療・補充においては、活性型ビタミンD3製剤(アルファカルシドール、カルシトリオールなど)の使用が検討されます。しかし過剰投与による高カルシウム血症にも注意が必要です。定期的な血清Ca・P・ALP・PTHのモニタリングが条件です。
日常的な予防対策として患者家族に伝えるポイントは以下です。
市販のビタミンDサプリメントを活用する場合、乳幼児向けには液体タイプ(例:DHCのベビービタミンD、Zymotic等)が使いやすく投与量の調節もしやすいため、外来での情報提供に役立ちます。1アクション(サプリの購入・使用)で長期的なリスクを大幅に下げられる可能性があります。これは使えそうです。
参考(くる病の診断と治療のガイドライン):日本小児内分泌学会の公式情報として、くる病の診断・治療基準が記載されています。
日本小児内分泌学会 – ビタミンD欠乏性くる病(診断と治療)
参考(厚生労働省研究班データ):小児ビタミンD欠乏症の発症率推定に関する研究報告です。医療従事者向けの実態データとして参照できます。
厚生労働省科学研究費補助事業 – 小児ビタミンD欠乏症の実態把握と発症率の推定
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