デエビゴ(一般名レンボレキサント)は主に薬物代謝酵素CYP3Aによって代謝されるため、CYP3Aを阻害する薬剤・誘導する薬剤で血中濃度が変動しやすい薬剤です。
この「代謝の入口がCYP3Aに寄っている」薬剤では、相互作用の多くが“眠気が強まる(過量に近づく)”か“効かなくなる(実質減量)”のどちらかに収束します。
医療現場で「併用禁忌」という言葉が検索される背景には、実際の添付文書の“禁忌”欄(絶対に投与しない)と、“併用注意”欄(注意しつつ使う)が混同されやすい事情があります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10753256/
デエビゴの添付文書では、相互作用は「併用注意」に整理され、CYP3A阻害薬では“併用の可否を慎重に判断し、併用するなら1日1回2.5mg”という具体的な用量調整が明記されています。
ここで重要なのは、併用禁忌リストを暗記するよりも、CYP3A阻害・誘導の方向性から「眠気リスクの増減」を予測し、患者背景(高齢、肝機能、転倒リスク、夜間トイレなど)まで含めて処方判断につなげることです。
特にデエビゴは半減期が長めで、阻害薬併用時には消失半減期も延びうるため、翌日以降の眠気・注意力低下の説明がより重要になります。
参考:添付文書(相互作用・用量調整・薬物動態の一次情報)
https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00068463.pdf
デエビゴの添付文書で「禁忌」に入っているのは、少なくとも“成分過敏症の既往”と“重度の肝機能障害”であり、相互作用そのものは原則「併用注意」に整理されています。
つまり、検索語として「デエビゴ併用禁忌」が使われても、実務では「相互作用で禁忌扱いにすべき状況はどれか?」を、添付文書の“用量調整”と“患者状態”から再構成する作業が必要です。
実臨床では、強いCYP3A阻害薬(例:アゾール系抗真菌薬、マクロライド系の一部、抗HIV薬のリトナビル等)を併用すると眠気などの副作用が増強し得るため、併用するなら2.5mgに減量し、患者状態を慎重に観察して可否判断する、と書かれている点が核になります。
この“2.5mgで運用できる”という設計は、薬剤部・病棟での実装(採用規格、疑義照会テンプレ、術前中止ルール、転倒スコア連携)にも直結します。
また、禁忌・併用注意とは別に、「服用して就寝した後に途中で起床して活動する可能性があるときは服用させない」という注意もあり、夜勤者・介護者・夜間の対応がある患者では相互作用以上に危険度が上がることがあります。
相互作用の議論をするときは、薬物動態(PK)だけでなく、こうした行動上のリスク(転倒・運転・夜間覚醒)をセットで評価するのが安全です。
添付文書には、CYP3Aを中程度または強力に阻害する薬剤(例としてフルコナゾール、エリスロマイシン、ベラパミル、イトラコナゾール、クラリスロマイシン等)との併用では、患者状態を慎重に観察して投与可否を判断し、併用する場合は1日1回2.5mgとする、と明記されています。
ここでのポイントは「併用するなら2.5mg」という“具体的な上限”が提示されていることで、処方監査・調剤監査でアラート化しやすい点です。
実際に薬物相互作用試験として、イトラコナゾール併用時にレンボレキサントのAUCが増加(幾何平均値の比で約3.70)したこと、フルコナゾール併用時にAUCが増加(幾何平均値の比で約4.17)したことが添付文書内に記載されています。
「2.5mg=通常の5mgの半量だから安全」ではなく、“阻害薬併用で曝露が数倍になりうる”前提で、2.5mg運用でも実質的に高用量に近づきうる点をチーム内で共有するのが実務的です。
阻害薬併用時に狙うべき観察項目は、単なる傾眠だけではありません。
添付文書の副作用には、傾眠のほか、浮動性めまい、睡眠時麻痺、異常な夢・悪夢なども挙がっており、患者が「変な夢を見た」「金縛りがあった」などの訴えをしたときに、精神症状ではなく薬剤性として拾える体制が重要です。
参考:併用時2.5mgの根拠になっている相互作用・薬物動態の記載(用量調整の一次情報)
https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00068463.pdf
CYP3Aを誘導する薬剤(例:リファンピシン、フェニトイン等)では、レンボレキサントの血漿中濃度が低下して作用が減弱するおそれがあり、添付文書の「併用注意」に記載されています。
重要なのは、このタイプの相互作用は「副作用が出て気づく」のではなく、「効かなくて増量される」「他剤が追加される」ことで問題が拡大しやすい点です。
添付文書には、リファンピシン併用によりレンボレキサントのCmaxが92%低下し、AUCが97%減少した、と具体的な数値が示されています。
このレベルの低下は、単なる“効き目が少し落ちる”ではなく、臨床的には「別薬に切り替える」「併用自体を避ける」判断が必要になりやすい強さです。
一方で、誘導薬は開始直後から最大効果が出るとは限らず、患者が「最初は効いたが、数日〜数週で効かなくなった」と訴える形で顕在化することもあります(誘導は酵素発現の変化として遅れて出るため)。
監査・服薬指導では、CYP3A誘導薬の併用開始・中止があった時点で、睡眠薬全般の効き方が変わる可能性を説明し、漫然増量を避ける導線(受診・相談)を用意するのが安全です。
医療従事者でも見落としがちなのが、デエビゴとアルコールの併用が「中枢抑制の相加(PD)」だけでなく、「レンボレキサント曝露量の上昇(PK)」も伴う点です。
添付文書では、健康成人でデエビゴ10mg単回投与時にアルコールを併用すると相加的な認知機能低下がみられ、さらにCmaxが35%上昇、AUC(0-72h)が70%増加したことが記載されています。
この情報が“意外に重要”なのは、患者側に「飲酒は眠れるからむしろ良い」という誤解が残りやすいからです。
実際には、デエビゴ+飲酒は「効き過ぎ(翌朝の眠気、ふらつき、注意力低下)」を増やし、夜間転倒や交通事故リスクを押し上げる方向に働き得るため、「飲酒は避ける」という指導を、相互作用の中でも優先度高く扱う価値があります。
加えて、デエビゴは就寝直前投与が原則であり、食後すぐの服用は避けるよう注意があります。
飲酒は食事とセットになりやすく、患者の生活パターンでは「夕食+飲酒+食後すぐ服用」という一連の行動になりやすいので、現場では“飲酒の有無”だけでなく“飲酒する時間帯と服薬の間隔”まで具体的に聞き取ると事故予防につながります。