ふらつきの鑑別診断において、医療従事者が最初に理解すべきは症状の性状による分類です。回転性めまいと浮動性めまい(ふらつき)の区別は、診断の出発点となります。
回転性めまいは、自分や周囲が回転する感覚を伴い、主に内耳の異常や前庭神経炎などの耳鼻咽喉科的疾患が原因となります。しかし、安静にしていても症状が持続する場合は、脳卒中や脳腫瘍などの中枢性疾患を疑う必要があります。
**浮動性めまい(ふらつき)**は、地面が揺れているような感覚や足元の不安定感を特徴とし、体が左右前後に揺れて感じる視覚運動体験として定義されます。三半規管の障害でも生じますが、脳神経系や筋骨格系の異常でも発症するため、より広範囲な鑑別が必要です。
診察時の重要なポイントとして、両脚起立のRomberg検査は正常であることが多く、片足立ち検査が診断により有用とされています。左右のバランス機能維持ができなくなることがふらつきの本質的な病態です。
眼振(眼球振盪)の評価は、ふらつきの鑑別診断において極めて重要な所見です。患者の眼球が左右あるいは上下に無意識に動いている現象を「眼振」と呼び、この所見は内耳の前庭や三半規管、または脳のバランス中枢(小脳・脳幹)の障害を示します。
眼振を伴うふらつきは、器質的な病変の存在を強く示唆するため、診断において重要なサインとなります。「目は口ほどにものを言う」という表現通り、眼振の有無と性状により、病変部位の推定が可能です。
眼振評価のポイント
眼振が認められない場合でも、心因性のふらつきや筋骨格系の問題による症状の可能性があり、地震などの災害後にふらつきを訴える患者も存在します。このような症例では、心理的要因の評価も重要になります。
ふらつきの原因は大きく3つのカテゴリーに分類されます。
1. 内耳の異常
内耳は平衡感覚を司る器官であり、その異常によりふらつき症状が生じます。代表的な疾患として。
2. 脳の異常
脳は身体各部位のバランスをコントロールしており、その異常により症状が出現します。
3. 全身の異常
循環器系や代謝系の問題による症状。
診断の70~80%は問診により推測可能とされており、他の身体症状を併発していることが多いため、詳細な病歴聴取が重要です。
系統的な検査アプローチは、効率的な診断につながります。
基本検査項目
画像診断の役割
MRI検査は放射線や造影剤を使用せず安全性が高く、脳実質や血管、脊髄病変の詳細な描出が可能です。CTで異常が発見されなかった場合でも、MRIにより原因が判明することがあります。特に後頭蓋窩病変の検出にMRIは有用です。
専門的検査
現病歴の聴取では、めまいの性状を回転性と浮動性に分類し、発症時期と進展パターンを詳しく確認することが重要です。症状の経過により、急性発症か慢性進行性かを判断し、適切な鑑別診断につなげます。
従来の治療法に加えて、近年注目されているのが多角的治療アプローチです。特に40歳以上でふらつきが長引く場合、パーキンソン病や進行性核上性麻痺などの神経変性疾患の初期症状である可能性があります。
包括的治療戦略
革新的な治療視点
姿勢、関節、筋肉、神経、バイタルの5つの視点から現在の状態を可視化し、症状の原因を特定する手法が開発されています。この多角的評価により、従来見逃されがちな複合的要因を特定し、最短での改善を目指します。
心身ケアの統合
治療は「治す」ことだけでなく「癒す」視点も重要です。患者の生活全般をサポートするため、投薬による予防治療、心身のケア、家族サポート、社会復帰支援などの包括的アプローチが求められます。
予防的観点
ふらつきを放置すると転倒による骨折リスクが上昇し、特に高齢者では寝たきり状態に陥る可能性があります。活動量減少による筋力低下、社会的孤立、認知機能低下の悪循環を防ぐため、早期介入が重要です。
厚生労働省調査によると脳血管疾患患者は約189万人とされ、ふらつきを伴う症例も多数含まれています。平衡機能障害で悩む方は推定数百万人に上り、現代社会における重要な健康問題として認識されています。
診断から治療まで一貫した多職種連携により、患者の生活の質向上を目指す包括的医療が今後ますます重要になると考えられます。