甘草とりすぎで最も重要なのは、偽アルドステロン症(pseudoaldosteronism)という「アルドステロンが増えていないのに、アルドステロン症のような所見を示す」病態です。主に甘草またはその主成分グリチルリチンを含む医薬品(漢方薬、かぜ薬、胃腸薬、肝疾患領域の薬など)でみられ、一般用医薬品でも起こり得ます。特に、低カリウム血症を伴う高血圧・むくみという組み合わせで疑う視点が重要です。重症化すると、低カリウム血症の進行に伴い致死性不整脈や横紋筋融解に至ることがあります。
病態生理の要点は「腎尿細管などの標的組織で、コルチゾールがミネラルコルチコイド受容体(MR)に結合してしまう状況が生じる」ことです。通常は11β-HSD2がコルチゾールをコルチゾンへ変換し、MRがコルチゾールに占拠されないように守っています。ところが甘草(グリチルリチンの代謝産物であるグリチルレチン酸など)が11β-HSD2活性を抑制すると、過剰となったコルチゾールがMRを介してミネラルコルチコイド様作用を発揮します。その結果、ナトリウム・水の貯留(血圧上昇、浮腫、体重増加)とカリウム喪失(低カリウム血症、代謝性アルカローシス、筋力低下)が起こります。
臨床では「低レニン・低アルドステロン」が特徴的です。鑑別の流れとして、低カリウム血症があればまず尿中カリウム排泄を確認し、腎性喪失(例:30 mEq/日以上)ならPRAとPACを測定して「低PRA・低PAC」を確認し、原因薬剤(甘草含有)を探索する、という整理が実務的です。なお、血圧上昇は必発ではないため、「血圧が高くないから否定」とはしない点も落とし穴です。
甘草とりすぎは、患者が「副作用だと気づきにくい」「筋症状が徐々に進行する」ことが多く、見逃しやすいのが怖いところです。典型的な初期症状として、手足のだるさ、しびれ、つっぱり感、こわばりが挙げられ、これに「力が抜ける感じ」「こむら返り」「筋肉痛」が加わって強くなる場合は要注意です。患者側が自覚しやすい症状としては、徐々に進行する四肢脱力・筋肉痛が重要で、加えて血圧上昇や浮腫が手掛かりになります。
医療者側の観察ポイントは、筋症状の程度(歩行困難、起立不能まで進むか)、血圧、浮腫、体重増加、不整脈症状(動悸)です。心電図では低カリウムに関連する変化(T波平低化、U波出現、ST低下など)が示され得るため、症状が軽くても検査で拾う姿勢が安全です。また、低カリウムによるインスリン分泌不全で糖尿病が悪化することもあるため、糖尿病患者では「血糖が上がった理由」の鑑別にも入れておくと拾いやすくなります。
意外に臨床で効くのは「家庭血圧の推移」です。患者が家庭血圧を測定している場合、いつもより上がってきたタイミングと、漢方・市販薬の開始/増量/併用開始が一致しないかを、時間軸で並べて確認すると原因に辿りつきやすくなります。筋症状は加齢や整形外科的問題に紛れやすいので、血圧とKの組み合わせで“内科的に一本つながる”かを意識すると見落としが減ります。
参考:偽アルドステロン症の初期症状、検査、機序、対応(中止後も数週間残存し得る等)の公的まとめ
厚生労働省「偽アルドステロン症」マニュアル(PDF)
甘草とりすぎが“とりすぎ”として問題化する背景には、患者側リスクと投薬上リスクの掛け算があります。患者側では、高齢、体表面積が小さい(低身長・低体重)、女性に多いという国内統計が整理されています。さらに、症状が出るまでの期間は一定せず、開始後10日以内の早期から数年以上後まで幅があるため、「長く飲んでいるから今さら副作用はない」という思い込みは危険です(むしろ慢性内服ほど聴取が雑になりがちです)。
投薬上の重要なリスクは、低カリウムを悪化させる併用です。具体的には、サイアザイド系・ループ利尿薬の併用、インスリン投与中、そして副腎皮質ステロイドや甲状腺ホルモン薬など低カリウムを惹起し得る薬剤が併用されている場合は重篤化しやすいと整理されています。現場感としては、利尿薬+甘草含有漢方+高齢、の3点セットは特に危険域に入りやすく、軽い筋症状でも血清Kの確認を前倒しした方が安全です。
もう一つ、見落としやすいのが「複数の甘草含有製剤の同時使用」です。例えば、医療用漢方を処方されている患者が、市販のかぜ薬・胃腸薬も併用していたり、別医療機関で別の漢方が追加されていたりすると、本人は「全部“漢方”だから大丈夫」「同じ生薬が重なる発想がない」となりやすいです。問診では、薬剤名の丸暗記を患者に求めるより、「漢方を2種類以上飲んでいないか」「こむら返り目的の漢方、便秘目的の健康食品、のど飴・お菓子など甘草っぽい味の製品を増やしていないか」といった“用途ベース”で掘ると回収率が上がります。
検査の基本は「血清K」と「心電図」です。自覚症状が乏しくても血液検査で低カリウム血症が見つかって診断に至る例が少なくないため、甘草含有薬を内服する患者では、投与開始時や用量変更時は1か月以内、維持期でも3〜6か月に1回程度の定期的な血清Kチェックと心電図測定が重要と整理されています。特に、既に利尿薬、ステロイド、インスリンなどが絡む患者では、頻度を増やす判断が実務的です。
診断の芯は「服薬歴(一般用医薬品を含む)+低レニン低アルドステロン+中止で改善」です。低Kを伴う高血圧の鑑別では、尿中カリウム排泄、PRA/PACの組み合わせで枝分かれし、低PRA・低PACに入ってきたら“薬剤性(甘草等)”の確認を最優先に置くと迷いにくいです。副腎偶発腫瘍があると原発性アルドステロン症と紛れることがあるため、画像だけで結論を出さず、内分泌データと経過で整合させます。
対応の第一は推定原因薬剤の中止です。低カリウムに対するカリウム製剤投与は行われますが、尿中排泄を増やして効果が乏しいとされ、抗アルドステロン薬(スピロノラクトン)の通常量投与が有効とされています。中止後も数週間は症状と検査値異常が残存することがあるため、患者には「やめたのにすぐ完全に戻らないことがある」点を説明し、フォローの採血計画を具体化すると安心につながります。
独自視点として強調したいのは「中止後の“観察期間”こそ医療安全の山場」だという点です。現場では、原因薬剤を止めた時点で安心してしまいがちですが、低カリウムが続いている間は不整脈リスクが残り、筋症状が続くと転倒リスクも残ります。高齢者では“筋力低下→転倒→骨折→ADL低下”の連鎖が短期間に起こり得るため、電解質の是正と同時に、立ち上がりや歩行の安全評価(必要ならリハ・環境調整)まで含めて設計すると、単なる副作用対応を越えてアウトカムに直結します。
参考:偽アルドステロン症の治療(原因薬中止が第一、スピロノラクトンが有効、甘草中止後に数週間で改善することが多い等)
厚生労働省「偽アルドステロン症」マニュアル(治療・経過の章)

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