滑膜切除術の点数は、術式ではなく「処置した関節の数」で決まります。
滑膜切除術は、診療報酬点数表(医科点数表)の「手術」区分に収載されており、部位ごとに個別の点数が設定されています。代表的なものを整理すると次のとおりです。
| 区分番号 | 術式・部位 | 点数(目安) |
|---|---|---|
| K036 | 関節滑膜切除術(肩・肘・手・股・膝・足関節等) | 部位により異なる |
| K036-2 | 関節鏡下滑膜切除術 | 部位により異なる |
| — | 膝関節(開放) | 約17,730点 |
| — | 膝関節(鏡視下) | 約19,530点 |
| — | 手関節・足関節(開放) | 約10,370点〜 |
| — | 手関節・足関節(鏡視下) | 約16,730点〜 |
点数は1点=10円換算です。たとえば膝関節の鏡視下滑膜切除術(約19,530点)は、患者負担3割で約58,590円の請求に相当します。つまり術式と部位の選択が、そのまま病院収益と患者負担額に直結するということです。
診療報酬点数の最新・確定値は必ず告示原文または厚生労働省の点数表で確認してください。点数は改定ごとに変更される可能性があります。これが原則です。
厚生労働省:診療報酬の算定方法(告示・通知)一覧ページ。点数表の最新改定内容を確認できます。
複数の関節に対して同一手術を行った場合の算定ルールは、実務上もっとも誤りが多いポイントです。重要なのかどうか迷う方も多いですね。
同一手術野・同一病巣における複数手術については、主たる手術の所定点数のみを算定し、従たる手術は所定点数の100分の50(50%)に相当する点数を加算するという原則があります。ただし、「同一手術野」の判断は部位の解剖学的な位置関係によって変わるため、たとえば右膝関節と左膝関節は「同一手術野ではない」と判断され、それぞれ独立して算定が可能です。
一方、同一の右膝関節内に対して複数の処置(たとえば滑膜切除術と半月板切除術)を同時に行った場合は「同一手術野」として扱われ、主たる手術のみ100%、従たるものは50%算定となります。つまり組み合わせ次第で請求額が数万円単位で変わります。
この判断を現場で素早く行うには、厚労省通知「同一手術野における複数手術の取り扱い」の一覧表を手元に置いておくことを強くお勧めします。レセコン入力前に術式の組み合わせを確認するひと手間が、後の返戻対応を防ぐことになります。
厚生労働省通知:同一手術野の複数手術に関する具体的な組み合わせ一覧を確認できます。
鏡視下手術(関節鏡下滑膜切除術)と開放手術(従来の切開による滑膜切除術)は、診療報酬上まったく別の区分として扱われます。これは使えそうです。
関節鏡下で実施した場合は「K036-2 関節鏡下滑膜切除術」で算定し、開放で実施した場合は「K036 関節滑膜切除術」で算定します。実際の手術アプローチと算定コードが一致していなければ、審査支払機関での査定対象になります。術者から手術記録(オペレコ)を受け取った際に、アプローチ方法を必ず確認することが条件です。
また、鏡視下手術の場合は内視鏡的手術加算や麻酔に関する別途算定も絡んでくることがあります。麻酔科医が介入している場合は麻酔料(L008 マスク又は気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔など)の算定漏れも発生しやすいため、手術関連の算定は必ずチェックリストを設けて確認する運用が理想的です。
手術件数が多い整形外科病棟では、月末のレセプト確認で滑膜切除術の術式区分誤りが発覚するケースが後を絶ちません。査定1件あたりの影響は小さく見えても、年間で積み上がると数十万円規模の損失になることもあります。厳しいところですね。
どれだけ正確な術式コードを使っていても、登録病名と手術の整合性が取れていなければ審査で弾かれます。これが条件です。
滑膜切除術の適応となる主な病名は、関節リウマチ(M05〜M06系)、色素性絨毛結節性滑膜炎(PVNS)、滑膜性骨軟骨腫症などです。これらの病名が主病名または副病名として正確に登録されていなければ、「手術の医学的必要性が不明」として査定される可能性があります。
特に注意が必要なのは、「関節炎」や「関節痛」といった曖昧な病名のみで滑膜切除術を算定しているケースです。審査支払機関は手術名と病名の組み合わせを自動的にチェックしており、対応関係が明確でないと返戻・査定の対象になります。
病名の確定診断がついているかどうかを術前に確認し、カルテおよびレセプトに明記することが実務上の鉄則です。主治医との連携を密にして、病名の整備を術前・術後の双方で行う体制を作ることをお勧めします。なお、関節リウマチに対する滑膜切除術については、生物学的製剤投与中の患者への適応判断も絡むため、薬剤管理指導記録との整合性も確認しておくと安全です。
社会保険診療報酬支払基金:機関誌・審査情報提供事例が閲覧可能。滑膜切除術を含む整形外科手術の査定事例を参照できます。
2024年(令和6年)の診療報酬改定において、整形外科領域の手術点数は全体的に見直しが行われました。鏡視下手術の評価が相対的に高くなる傾向が続いており、関節鏡下滑膜切除術もその流れの中で位置づけられています。
あまり語られない実務上の注意点として、同一入院期間中に滑膜切除術を複数回実施するケースがあります。たとえば最初の手術で関節リウマチの右膝に対して関節鏡下滑膜切除術を行い、その後同一入院中に左膝に対して再度手術する場合、DPC(診断群分類包括払い)対象病院では出来高算定と包括算定の切り替え判断が必要になります。DPC算定では手術点数が出来高とは異なる計算式に組み込まれるため、「点数が高い手術をすれば収益が上がる」という単純な発想が成立しないことがあります。
また、周術期口腔機能管理との連携加算(周術期等口腔機能管理料)が算定できる場合があります。これは見落とされがちですが、滑膜切除術を含む全身麻酔下の手術前後に歯科と連携して口腔管理を行った場合に算定可能な加算です。整形外科と歯科が同一病院内にある施設では、積極的に体制を整えることで算定機会を確保できます。
さらに、リウマチ患者の場合は生物学的製剤(例:トシリズマブ、アバタセプトなど)の周術期休薬管理もレセプト上の記録に影響を与えます。休薬期間の記録が不十分だと術後感染に関するリスク管理の記録が欠落し、後日のカルテ照会で問題になることがあります。これは算定点数の問題というよりリスク管理の問題ですが、請求業務と切り離せない実務上の課題です。
Mindsガイドラインライブラリ:関節リウマチの滑膜切除術に関するエビデンスと治療ガイドラインを参照できます。
💡 実務まとめ:滑膜切除術の点数算定チェックリスト