MPO-ANCAが陽転したら、再発リスクは陰性患者の約26倍に跳ね上がります。

MPO-ANCAはすべてのANCA関連血管炎で陽性になるわけではありません。疾患ごとに陽性率と臨床像が大きく異なります。 aichi-med-u.ac(https://www.aichi-med-u.ac.jp/hospital/pages/anca_kekkan.html)
顕微鏡的多発血管炎(MPA)はANCA関連血管炎のなかで最も頻度が高く、ほとんどの症例でMPO-ANCAが検出されます。 腎・肺の2臓器病変が特徴的で、肉芽腫形成はみられません。 高齢者に多く発症する点も、診療現場で認識しておくべき特徴です。 anca-aav(https://www.anca-aav.com/overview/mpa.html)
多発血管炎性肉芽腫症(GPA、旧ウェゲナー肉芽腫症)は、上気道・下気道・腎臓の3徴候で知られますが、PR3-ANCAが主体であり、MPO-ANCAが陽性になるのは一部の例にとどまります。 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)のMPO-ANCA陽性率は約50%で、陽性例では末梢神経障害や腎障害が多く、陰性例では心障害・肺障害が多い傾向があります。 hospi.sakura.ne(http://hospi.sakura.ne.jp/wp/wp-content/themes/generalist/img/medical/jhn-cq-nara-210131.pdf)
| 疾患名 | MPO-ANCA陽性率 | 特徴的な病変 |
|---|---|---|
| 顕微鏡的多発血管炎(MPA) | 約80% | 壊死性腎炎・肺出血・間質性肺炎 |
| 多発血管炎性肉芽腫症(GPA) | 少数例 | 上気道・下気道肉芽腫・腎炎 |
| 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA) | 約50% | 好酸球増多・喘息・末梢神経障害 |
imed3.med.osaka-u.ac(http://www.imed3.med.osaka-u.ac.jp/disease/d-immu06-5.html)
MPA診断には、厚生労働省の診断基準に基づく体系的な評価が欠かせません。これが原則です。 med.kissei.co(https://med.kissei.co.jp/region/anca/c5/tavneos/aav/diagnosis/differential.html)
診断基準は「主要症候」「主要組織所見」「主要検査所見」の3軸で構成されます。 主要症候は①急速進行性糸球体腎炎、②肺出血または間質性肺炎、③腎・肺以外の臓器症状(紫斑・消化管出血・多発性単神経炎など)の3項目です。 MPO-ANCA陽性は主要検査所見のひとつとして位置づけられています。 nanbyou.or(https://www.nanbyou.or.jp/entry/245)
「確実(Definite)」の判定は以下の2パターンです。 nanbyou.or(https://www.nanbyou.or.jp/entry/245)
- 主要症候2項目以上+組織所見陽性
- 主要症候①②を含む2項目以上+MPO-ANCA陽性
「疑い(Probable)」は以下の2パターンです。 nanbyou.or(https://www.nanbyou.or.jp/entry/245)
- 主要症候3項目を満たす
- 主要症候1項目+MPO-ANCA陽性
つまり、MPO-ANCA単独陽性でも主要症候1項目があれば「疑い」として扱えます。 見逃しを防ぐためにも、症候が1つしかない段階でも積極的に血清検査を組み合わせる姿勢が重要です。
MPO-ANCA陽性が必ずしもANCA関連血管炎を意味するわけではなく、鑑別を要する状況があります。意外ですね。 zaitsu-naika(https://www.zaitsu-naika.com/kougen/p2046.html)
MPO-ANCAが偽陽性または陽性になりうる鑑別疾患には以下があります。 zaitsu-naika(https://www.zaitsu-naika.com/kougen/p2046.html)
- 感染性心内膜炎
- 結核
- HIV感染症
- EBウイルス感染症
- パルボウイルスB19感染症
- HBV(B型肝炎ウイルス)感染症
抗甲状腺薬(メルカゾール・PTU)の長期服用もMPO-ANCA産生を引き起こすことがあります。 この薬剤誘発性の場合、発熱・関節炎・間質性肺炎・ANCA関連腎炎など典型的なMPA様症状を呈するため、服薬歴の確認が診断上の重要なステップになります。 薬剤誘発性の場合は原因薬剤を中止することが第一の治療であり、通常の免疫抑制療法とアプローチが異なります。 nagasaki-clinic(https://www.nagasaki-clinic.com/mpoanca/)
服薬歴の見落としは診断の迷走につながります。初診時に必ず確認が必要です。
参考:抗甲状腺薬とMPO-ANCA関連血管炎の関係についての詳細
MPO-ANCA関連血管炎(抗甲状腺薬との関係)- 長崎クリニック
間質性肺炎(IP)のみを有する症例は「肺限局型血管炎(pulmonary limited vasculitis)」と呼ばれる病型に分類されます。 MPO-ANCA陽性の肺病変患者を検討した研究では、間質性肺炎が43.5%、肺胞出血が23.9%に認められたと報告されています。 肺病変を有する患者では再発率が有意に高く(17.9% vs 4.5%)、無病変群と比べて約4倍高いことがわかっています。 is.jrs.or(https://is.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/045080615j.pdf)
間質性肺炎が先行している場合、ANCA関連血管炎の診断が遅れるリスクがあります。 呼吸器科から紹介される間質性肺炎患者において、MPO-ANCA測定を標準的なワークアップに組み込む意識が求められます。これは使えそうです。
参考:間質性肺炎とMPO-ANCA・MPAの関係(日本呼吸器学会)
間質性肺炎が先行した顕微鏡的多発血管炎の1例 - 日本呼吸器学会誌
治療中のMPO-ANCAモニタリングは、単なる経過観察ではなく再発予防戦略そのものです。これが条件です。 amed.go(https://www.amed.go.jp/news/seika/kenkyu/20180713.html)
治療開始後、約70%の患者でMPO-ANCAが測定感度以下に低下します。 しかし薬剤を減量する過程で約30%の患者が再び陽転し、この陽転患者では陰性のままの患者と比較して再発が約26倍多いことが明らかになっています。 平均30カ月の観察期間で24%に再燃を認めたコホート研究もあり、長期フォローの重要性が示されています。 jsn.or(https://jsn.or.jp/journal/document/56_2/065-069.pdf)
再発のリスク因子として、肺病変(再発率17.9% vs 4.5%)と腎病変(15.5% vs 5%)の存在も確認されています。 5年生存率はステロイド単独投与では50〜60%と低く、免疫抑制薬を併用した場合でも約80%です。 感染症・脳出血・消化管出血・腎不全・心筋梗塞が主な死因として報告されています。 jsn.or(https://jsn.or.jp/journal/document/56_2/105-116.pdf)
再発率40%・5年生存率80%という数字が示すように、MPO-ANCA関連血管炎は「寛解=治癒」ではありません。 寛解後も一定間隔でのMPO-ANCA測定を継続することが、再発の早期察知と生命予後の改善につながります。 amed.go(https://www.amed.go.jp/news/seika/kenkyu/20180713.html)
参考:ANCA関連血管炎の再発予測に関するAMED研究成果
血液検査でANCA血管炎の再発が予測可能に - 国立研究開発法人AMED
参考:MPA診断基準と治療・予後の詳細(難病情報センター)
顕微鏡的多発血管炎(指定難病43)- 難病情報センター