「NRS2002を3点未満だから安心」と判断すると、入院7日以内の再入院リスクを無駄に増やしているかもしれません。
NRS2002(Nutritional Risk Screening 2002)は、欧州臨床栄養代謝学会(ESPEN)が入院患者向けに開発した栄養スクリーニングツールで、急性期病院での妥当性が検証されています。 rehabilitation-nutrition.hatenablog(https://rehabilitation-nutrition.hatenablog.com/entry/teieiyou-nrs2002)
BMI、過去3か月の体重減少、直近1週間の食事摂取量低下、重症疾患の有無という4項目からなる初期スクリーニングを行い、1項目でも該当すれば最終スクリーニングへ進みます。 hokuto(https://hokuto.app/calculator/HHw4lzMqtjEoO5XI6Vi0)
最終スクリーニングでは「栄養障害スコア(0〜3点)」「疾患重症度スコア(0〜3点)」に加え、70歳以上では1点加算し、合計3点以上で栄養リスクありと判定します。 geriatrics(https://geriatrics.jp/diagnosis-of-low-nutrition/%E6%A0%84%E9%A4%8A%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%81%82%E3%82%8C%E3%81%93%E3%82%8C/)
つまり、NRS2002は単なる低BMIチェックではなく、侵襲や加齢まで加味した入院患者用の包括的な「危険度フィルター」と言えます。
NRS2002がESPENガイドラインで推奨されていることからも、国際的にはRCTでもっとも多く採用されている入院患者向けスクリーニングの一つと位置づけられています。 geriatrics(https://geriatrics.jp/diagnosis-of-low-nutrition/%E4%BD%8E%E6%A0%84%E9%A4%8A%E3%81%AE%E4%B8%96%E7%95%8C%E5%9F%BA%E6%BA%96-glim%E5%9F%BA%E6%BA%96/)
NRS2002が基本です。
一方で、「入院時に一度だけ実施して終わり」という運用や、スコア3点以上だけを栄養治療の対象とみなす単純化が行われると、周術期やがん、フレイル高齢者など「動的に悪化する」患者が取りこぼされます。
つまりツールの採用だけでは不十分です。
NRS2002を「測定の仕組み」と「判定後の動線」の両方を設計した上で導入することが、医療従事者側の時間と患者のアウトカムの双方を守る条件です。
実務ではNRS2002の具体的なスコアリングを曖昧に覚えていて、「1点か2点か迷うからとりあえず1点」といった運用になりがちです。
公式の定義では、栄養障害スコアは体重減少量や摂取量低下の程度、BMIの組合せで0〜3点を付与します。 nutri.co(https://www.nutri.co.jp/nutrition/keywords/ch5-1/keyword5/)
例えば「3か月で5%超の体重減少」または「過去1週間の摂取量が通常必要量の50〜75%未満」の場合は+1点、「2か月で5%超の体重減少」や「摂取量25〜60%」などは+2点、「1か月で5%超(3か月で15%超)の体重減少」や「摂取量0〜25%」などは+3点というように、期間と割合がかなり細かく決められています。 hokuto(https://hokuto.app/calculator/HHw4lzMqtjEoO5XI6Vi0)
病室でぱっと見た印象だけでスコアを決めると、1点のはずが0点、3点のはずが2点といった「軽く見積もるバイアス」が入りやすくなります。
結論は数値基準を手元に置くことです。
疾患重症度スコアも同様で、肺炎や大手術、敗血症など侵襲の大きい疾患では+2〜3点、高熱を伴う慢性疾患の増悪などでは+1〜2点と定義されていますが、こちらも「なんとなく中等度」として1点に寄りがちです。 ocu-omu.repo.nii.ac(https://ocu-omu.repo.nii.ac.jp/record/2014491/files/111TDB2885.pdf)
70歳以上では一律+1点されるため、同じ病態でも高齢者は若年者より栄養リスクが高く見積もられる設計になっており、高齢者医療では特にNRS2002が有用な一方、「70歳以上はほとんど全員3点以上になるから意味がない」と誤解されることもあります。 ocu-omu.repo.nii.ac(https://ocu-omu.repo.nii.ac.jp/record/2014491/files/111TDB2885.pdf)
こうした混乱を避けるには、電子カルテやHOKUTOアプリなどに実装されたスコア計算ツールを活用し、「質問に答えるだけでスコアが出る」形にしておくのが現実的です。 hokuto(https://hokuto.app/calculator/HHw4lzMqtjEoO5XI6Vi0)
NRS2002はツール化すれば問題ありません。
浮腫や腹水のある患者では、入院時の体重が「むしろ過大評価」になり、本来の体重減少を過小評価してしまうリスクがあります。
この場面では、過去の外来体重や家族からの聞き取り、過去の入院記録などを総合して「おおよその通常体重」を把握し、それを基準に減少率を見積もる工夫が必要です。
つまり体重情報の収集が原則です。
手計算の負担を減らす意味でも、部署内で共通のチェックシートや電子フォームを整えると、スコアのばらつきと時間コストの両方を抑えられます。
NRS2002を丁寧に運用していても、「スコア3点未満だから大丈夫」と判断した患者が、数日後に急激に摂食低下していた、という経験は少なくありません。
代表的な例外は、がん化学療法開始直前や、手術前後の患者です。
つまり「入院時のみNRS2002」は危険ということですね。
高齢者では、NRS2002スコアが3点未満でも、認知症や嚥下障害、独居など社会的背景のために、在院中に低栄養へ進行したり、退院後に短期間で再入院したりするリスクが高いと報告されています。 geriatrics(https://geriatrics.jp/diagnosis-of-low-nutrition/%E6%A0%84%E9%A4%8A%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%81%82%E3%82%8C%E3%81%93%E3%82%8C/)
特に、70歳以上で体重減少が「ぎりぎり5%未満」だった患者は、1〜2週間の入院中に5%を超えることもあり、入院時スクリーニングだけでは将来のリスクを過小評価している可能性があります。
このような「境界例」は、NRS2002スコアに加えて、GLIM基準による低栄養診断の視点(筋肉量低下や炎症の有無)も併用すると、介入のタイミングを逃しにくくなります。 meiji.co(https://www.meiji.co.jp/meiji-nutrition-info/pdf/science/info/nutrition_qa22.pdf)
GLIMとの併用が条件です。
もう一つの落とし穴は、「NRS2002が栄養不足だけを見ている」と誤解されやすい点です。
実際には、肥満であっても摂取量低下や急激な体重減少がある場合は栄養リスクと判定されますが、見た目が「大柄・ふくよか」な患者ほど、体重減少の深刻さを軽く見てしまうバイアスがあります。 nutri.co(https://www.nutri.co.jp/nutrition/keywords/ch5-1/keyword5/)
例えば、体重80kgの患者が3か月で4kg(5%)減少した場合、数値としては明確な栄養リスクですが、「80kgだからまだ余裕がある」と感じてしまうわけです。
このギャップを埋めるには、「何kg減ったか」ではなく「何%減ったか」で考える習慣をチーム全体で共有することが重要です。
%で考えることが基本です。
周術期の独自の落とし穴としては、術前に絶食時間が長く、術後も麻酔やせん妄で経口摂取が遅れ、実質的に5〜7日以上ほぼ摂取できていない患者が、NRS2002では「術前評価のまま更新されていない」ということもあります。 ocu-omu.repo.nii.ac(https://ocu-omu.repo.nii.ac.jp/record/2014491/files/111TDB2885.pdf)
この場合、術後3〜5日目に再評価を行い、「過去1週間の摂取量」として再スコアリングするだけで、3点以上に切り替わるケースが多くなります。
再評価のタイミングをプロトコールで決めておくと、「忙しくて誰も更新していない」という事態を減らせます。
再評価のルール化が原則です。
NRS2002は入院患者向けの代表的ツールですが、外来や高齢者施設では必ずしもベストとは限りません。
英国静脈経腸栄養学会が開発したMUSTは、外来から入院まで広く使用され、体重減少・BMI・急性疾患による摂取不能の3項目で低栄養リスクを判定します。 geriatrics(https://geriatrics.jp/diagnosis-of-low-nutrition/%E4%BD%8E%E6%A0%84%E9%A4%8A%E3%81%AE%E4%B8%96%E7%95%8C%E5%9F%BA%E6%BA%96-glim%E5%9F%BA%E6%BA%96/)
一方、高齢者ではMNA-SFが特に有用で、食事摂取量変化、体重減少、移動能力、ストレス、認知機能、BMI(または下腿周囲長)の6項目で評価し、短時間で網羅的にリスクを拾える設計です。 geriatrics(https://geriatrics.jp/diagnosis-of-low-nutrition/%E4%BD%8E%E6%A0%84%E9%A4%8A%E3%81%AE%E4%B8%96%E7%95%8C%E5%9F%BA%E6%BA%96-glim%E5%9F%BA%E6%BA%96/)
つまり場面ごとの最適ツールを選ぶということですね。
最近注目されているGLIM基準は、スクリーニングツールでリスクありとされた患者に対して用いる「低栄養の世界基準」であり、NRS2002はその入り口の一つです。 meiji.co(https://www.meiji.co.jp/meiji-nutrition-info/pdf/science/info/nutrition_qa22.pdf)
GLIMでは「体重減少・低BMI・筋肉量減少」といった表現型基準と、「摂取量低下・炎症・侵襲」といった原因基準を組み合わせて低栄養診断を行うため、NRS2002と親和性が高く設計されています。 meiji.co(https://www.meiji.co.jp/meiji-nutrition-info/pdf/science/info/nutrition_qa22.pdf)
たとえば、NRS2002が3点以上だった65歳以上の患者には、MNA-SFまたはGLIMを追加する、外来ではまずMUSTでスクリーニングし、入院時にはNRS2002へ切り替えるなど、プロセスで役割分担させると整理しやすくなります。 geriatrics(https://geriatrics.jp/diagnosis-of-low-nutrition/%E6%A0%84%E9%A4%8A%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%81%82%E3%82%8C%E3%81%93%E3%82%8C/)
ツールの連携運用が条件です。
医療従事者側の時間と負担を考えると、「全部やる」のは現実的ではありません。
院内のNSTや栄養サポートチームと連携し、どの部署で何を使うかをあらかじめ決めておけば、担当者が変わっても評価の質を保ちやすくなります。
つまり院内標準化が原則です。
ここでは、検索上位にはあまり書かれていない、現場での運用上の工夫をいくつか紹介します。
一つ目は「NRS2002をベッドサイド会話に組み込む」方法です。
例えば訪室時のルーチンとして、「この1週間で食べられたのはいつもの何割くらいですか?」と必ず聞くようにしておくと、体感では「半分以下」という返答が意外に多く、スコア2〜3点の患者を早期に拾いやすくなります。 hokuto(https://hokuto.app/calculator/HHw4lzMqtjEoO5XI6Vi0)
こうした質問は、看護記録の「食事摂取量欄」と連動させておくと記録漏れも防ぎやすくなります。
結論は質問を習慣化することです。
二つ目は、病棟カンファレンス時に「NRS2002スコア3点以上の患者リスト」を用意し、担当者が一言ずつコメントするスタイルです。
リハビリ職や薬剤師が同席していれば、「食欲低下の背景にオピオイド増量がないか」「嚥下機能評価を前倒しすべきか」といった多角的な介入案が自然と出てきます。
これは使えそうです。
三つ目は、電子カルテのアラート設定です。
たとえば「NRS2002が3点以上なのに栄養介入オーダーがない患者」を自動抽出してNSTへ通知する、あるいは「3日連続で摂取量が50%未満なら再評価を促す」アラートを出すなど、単純なルールでも大きな見逃し防止効果があります。 meiji.co(https://www.meiji.co.jp/meiji-nutrition-info/pdf/science/info/nutrition_qa22.pdf)
こうした仕組みを作っておくと、夜勤帯や休日でも、システムが最低限の「見張り役」として働いてくれます。
アラートに注意すれば大丈夫です。
四つ目は、患者・家族向けの説明用シートを簡単に作っておくことです。
「体重が5%減ると、感染症や転倒のリスクが上がる」「摂取量が1週間で半分以下になると、点滴や経腸栄養が必要になることがある」といった情報を、はがき1枚分ほどの紙にイラスト付きでまとめるだけでも、栄養介入への理解と協力が得やすくなります。 nutri.co(https://www.nutri.co.jp/nutrition/keywords/ch5-1/keyword5/)
このようなシートは、製薬企業や栄養剤メーカーが提供しているリーフレットを参考にしつつ、自施設の方針に合わせてアレンジすると作成負担を減らせます。
情報提供は必須です。
この一行があるだけで、在宅側が「どこまで介入してよいのか」を迷いにくくなり、再入院や栄養状態悪化のリスクを抑えられます。
つまり継続ケアの視点が原則です。
高齢入院患者に対する栄養サポートの重要性や、入院時スクリーニング徹底の意義についての詳細な背景は、以下の総説が参考になります(入院時スクリーニング体制の構築部分の参考リンクです)。