「ゾシン」と「タゾピペ」は同じ成分なのに、実は用法用量が違う場合があり、誤認すると患者アウトカムに直結するリスクがあります。okusuri110+1
ピペラシリン・タゾバクタムの先発品は「ゾシン」(大鵬薬品工業)です。 後発品(ジェネリック)は「タゾピペ配合静注用」として複数メーカーから発売されており、第一三共エスファ(DSEP)、シオノギ(SN)、ニプロ、明治製菓ファルマなどが製造しています。kegg+1
薬価にも明確な差があります。
参考)http://www.okusuri110.jp/cgi-bin/yaka_search_p2.cgi?6139505
| 商品名 | 規格 | 薬価(1瓶) | 区分 | メーカー |
|---|---|---|---|---|
| ゾシン静注用2.25 | 2.25g | 923円 | 先発品 | 大鵬薬品 |
| タゾピペ配合静注用2.25 | 2.25g | 660円 | 後発品 | 各社 |
| ゾシン静注用4.5 | 4.5g | 1,144円 | 先発品 | 大鵬薬品 |
| タゾピペ配合静注用4.5 | 4.5g | 892円 | 後発品 | 各社 |
| ゾシン配合点滴静注用バッグ4.5 | 4.5g+生食100mL | 1,785円 | 先発品 | 大鵬薬品 |
| タゾピペ配合点滴バッグ4.5 | 4.5g+生食100mL | 1,722円 | 後発品 | 各社 |
先発品と後発品の薬価差は1バイアルあたり約250~300円で、頻回使用する病棟では薬剤費に無視できない影響が出ます。 ジェネリックへの切り替え時は規格・製剤形態(バイアルかキットか)の確認が必須です。
成分の正式な一般名は「タゾバクタム・ピペラシリン水和物」であり、略号は TAZ/PIPC または PIPC/TAZ と表記されます。 覚え方は「先に阻害薬(TAZ)、後に抗菌薬(PIPC)」が日本語一般名の順序です。
参考)ピペラシリン・タゾバクタム PIPC/TAZ(ゾシン、タソピ…
ゾシン(ピペラシリン・タゾバクタム)の抗菌力は、2段階のメカニズムで発揮されます。
参考)ゾシン(タゾバクタム/ピペラシリン水和物) – …
まず、タゾバクタムがβ-ラクタマーゼ(細菌が産生する抗生物質分解酵素)を阻害します。 これにより、ピペラシリン単独では分解されてしまう場面でも、薬剤が生き残って細菌に届きます。次に、ピペラシリンが細菌のペニシリン結合タンパク質(PBPs)と結合し、細胞壁合成を阻害して殺菌的に作用します。
特徴的なのは、同じβ-ラクタマーゼ阻害配合薬の中でも「緑膿菌」と「嫌気性菌」の両方をカバーできる点です。 グラム陽性球菌からグラム陰性桿菌まで非常に広域なスペクトラムを持ち、カルバペネムに匹敵する守備範囲と評価されています。kameda+1
成分配合比はTAZ:PIPCが力価比 1:8 です。 つまり4.5g製剤にはピペラシリン4g+タゾバクタム0.5gが含まれているということです。
参考)302 Found
これが基本です。阻害薬の量が少なすぎても多すぎても効果が変わるため、この配合比は臨床的に最適化された結果といえます。
「ゾシンはいつも4.5g 1日3回」と思っているなら、それは発熱性好中球減少症では命取りの誤りです。
参考)補遺(入院患者における抗微生物薬適正使用編) - AMR対策…
添付文書では、疾患ごとに用法用量が明確に異なります。 代表的な疾患の用量を以下に整理します。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00065858.pdf
| 疾患 | 成人用量(力価) | 投与回数 |
|---|---|---|
| 敗血症・肺炎・腹膜炎 | 1回4.5g | 1日2回(状況に応じ3回) |
| 深在性皮膚感染症・二次感染 | 1回4.5g | 1日3回 |
| 腎盂腎炎・複雑性膀胱炎 | 1回4.5g | 1日2回(3回まで増量可) |
| 発熱性好中球減少症(成人) | 1回4.5g | 1日4回 |
発熱性好中球減少症(FN)では1日4回投与が原則です。 6時間ごとの投与間隔を維持することで、PK-PDパラメータである %TAM(time above MIC) を最大化し、殺菌効果を引き出します。chemotherapy.or+1
小児の場合は1回112.5mg(力価)/kgを1日2回から開始します。 小児への適応があるのはピペラシリン・タゾバクタムの特徴のひとつで、同じタゾバクタム配合薬でも「ザバクサ」は小児適応を持ちません。med.nipro.co+1
腎機能低下時は調整が必要です。 クレアチニンクリアランス(Ccr)が50以下に低下した患者では減量を検討し、透析患者では投与設計に専門的な知識が求められます。 「腎機能が落ちているなら少なめに」という感覚的な判断ではなく、PK-PD解析に基づく個別設計が重要です。kusuripro+1
「感受性あり=使ってOK」は、ESBL産生菌の血流感染症では危険な判断です。
参考)http://hospitalist.jp/wp/wp-content/themes/generalist/img/medical/jc_20170426_02.pdf
ピペラシリン・タゾバクタムはin vitroでESBL産生菌に感受性を示すことがあります。 しかし、重症患者では死亡率が上昇するという報告が複数存在し、一般的には血流感染症への使用は推奨されていません。amr.jihs+1
この現象の背景のひとつとして、ESBL産生菌がさらにOXA-1などの別のβ-ラクタマーゼを共産生するケースが挙げられています。 特に国際的に行われたMERINO試験に含まれたESBL産生菌の約7割がOXA-1産生株だったことが判明しており、タゾバクタムの阻害が追いつかなかった可能性が指摘されています。
意外ですね。感受性ディスクが「S」を示しても、それが治療成功を保証しない状況が存在するということです。
亀田感染症ガイドラインでも、ESBL産生菌が関与する場合の治療はメロペネム(カルバペネム系)を第一選択とするよう記載されています。 検査結果の解釈と臨床判断を切り離さないことが、感染症治療の核心です。
参考)亀田感染症ガイドライン:発熱性好中球減少症 - 亀田総合病院…
各施設の抗菌薬ガイドライン(アンチバイオグラム)との照合が最終判断の根拠となります。自施設のICTやASP(抗菌薬適正使用支援チーム)との連携を常に確認しておくことが、医療従事者としてのリスク回避につながります。
参考:日本AMR臨床リファレンスセンター(JIACRA)補遺資料(ESBL産生菌の治療判断に関する詳細な解説あり)
補遺(入院患者における抗微生物薬適正使用編) - AMR対策…
「タゾバクタム入りなら同じ」と思って選んでいると、緑膿菌治療で選択を誤るリスクがあります。
ゾシンとザバクサはどちらもタゾバクタムを配合していますが、組み合わせる抗菌薬が異なります。
現場での重要な違いは「嫌気性菌カバーの有無」です。 腹腔内感染や好中球減少性腸炎など、嫌気性菌の関与が大きい病態ではゾシンが優位です。 一方でザバクサは嫌気性菌カバーが弱く、腹腔内感染への単独使用時はメトロニダゾール(MNZ)の併用が必要とされています。kameda+1
コスト面でも違いがあります。 ゾシンはやや安価、ザバクサは高価な部類に入り、費用対効果の観点からも使い分けの判断が求められます。
これは使えそうです。薬剤師や研修医がゾシンかザバクサかを迷う場面では、まず「嫌気性菌をカバーする必要があるか」「緑膿菌の中でも難治性か」の2点で分岐できます。
参考:ゾシンとザバクサの詳細な違い解説(薬剤師向けレビュー)
ザバクサとゾシンの違い【6つのポイント】
参考:亀田感染症ガイドライン(ピペラシリン・タゾバクタムの使い方)
https://www.kameda.com/pr/infectious_disease/post_82.html