腎盂腎炎の症状と原因から治療法まで

腎盂腎炎は細菌が腎盂や腎臓に感染して起こる病気で、女性に多く発症します。症状、原因、診断方法から治療法まで詳しく解説し、再発防止のポイントも紹介。腎盂腎炎について正しく理解できているでしょうか?

腎盂腎炎の基本情報と診断

腎盂腎炎の概要と診断
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腎盂腎炎とは

腎臓の腎盂部分に細菌が感染して起こる上部尿路感染症

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主な検査方法

尿検査、血液検査(CRP・白血球数)、超音波検査

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重要なポイント

早期診断と適切な治療で重篤な合併症を予防

腎盂腎炎の症状と特徴

腎盂腎炎は、腎臓の腎盂という尿のたまる部分に細菌が感染して起こる上部尿路感染症です 。主な症状として、38℃以上の高熱、悪寒、腰背部痛、吐き気・嘔吐などが現れます 。特に感染が起きている側の背部に強い痛みを感じることが特徴的で、患者さんは体を動かすのも辛い状態になることがあります 。
参考)https://mymc.jp/clinicblog/169887/

 

急性腎盂腎炎では症状が急激に現れ、全身の倦怠感も伴います 。軽度の場合は外来治療が可能ですが、高熱が持続し重症化した場合は入院治療が必要となります 。一方、慢性腎盂腎炎では症状が軽微で、軽度の背部痛や発熱程度にとどまることが多く、時として無症状のこともあります 。
参考)https://imamoto-uro.com/%E8%85%8E%E7%9B%82%E8%85%8E%E7%82%8E

 

腎盂腎炎は男女比で1:30と圧倒的に女性に多く発症する疾患です 。これは女性の尿道が男性より短く、細菌が逆流しやすいことが主な理由です 。
参考)https://ubie.app/byoki_qa/clinical-questions/z6srdlwstuee

 

腎盂腎炎の原因菌と感染経路

腎盂腎炎の原因菌として最も頻度が高いのは大腸菌(Escherichia coli)で、全体の大半を占めています 。その他にもKlebsiella pneumoniaeやProteus mirabilisなどのグラム陰性桿菌がよく見られます 。患者の背景や医療への曝露歴によっては、腸球菌などのグラム陽性球菌や緑膿菌なども原因となることがあります 。
参考)https://www.kansensho.or.jp/ref/d32.html

 

感染経路については、膀胱炎などの下部尿路からの上行性感染が大半を占めています 。細菌が尿道から膀胱に入り、さらに尿管を逆流して腎盂に達することで感染が成立します 。頻度は少ないものの血行性感染もあり、特に黄色ブドウ球菌による菌血症では腎膿瘍を形成することがあります 。
近年問題となっているのは、キノロン系抗菌薬やスルファメトキサゾールトリメトプリムに耐性を持つ大腸菌や、基質特異性拡張型β-ラクタマーゼを産生する多剤耐性菌の増加です 。これらの耐性菌による感染では治療が困難になる場合があるため注意が必要です。

腎盂腎炎の診断検査方法

腎盂腎炎の診断には複数の検査を組み合わせて行います。まず最初に実施されるのが尿検査で、尿中の白血球数増加、血尿、細菌尿の有無を確認します 。尿検査は迅速に結果が得られるため、初期診断として非常に有効です 。
参考)https://www.blossom-clinic.site/pyelonephritis_blog/2911/

 

血液検査では、炎症の程度を評価するために白血球数とC反応性蛋白(CRP)値を測定します 。白血球数が12,000/μl以上の場合は中等症以上と判断され、入院を検討する指標となります 。CRP値は白血球数より1日遅れて上昇しますが、10mg/ml以上を入院の目安とします 。
参考)https://www.jslm.org/books/guideline/05_06/242.pdf

 

腹部超音波検査では、腎臓の形態や腫れ、水腎症の有無、尿路結石の確認を行います 。この検査は非侵襲的で、膿腎症や気腫性腎盂腎炎などの重篤な合併症の除外にも重要です 。さらに、尿培養検査により原因菌を特定し、抗菌薬感受性を調べることで、最適な治療方針を決定できます 。
参考)https://momozono-clinic.jp/%E8%85%8E%E7%9B%82%E8%85%8E%E7%82%8E

 

腎盂腎炎の抗菌薬治療と期間

腎盂腎炎の治療は抗菌薬の投与が主体となります 。原因菌に適した抗菌薬の選択が重要で、腎臓に効きやすいペニシリン系、セフェム系、ニューキノロン系抗菌薬が多く使用されます 。大腸菌をはじめとする腸内細菌に対して、β-ラクタム系薬、セフェム系薬、キノロン系薬の感受性が一般的に良好です 。
参考)https://ubie.app/byoki_qa/clinical-questions/94op91roz5e

 

急性単純性腎盂腎炎の場合、経口薬または注射薬から経口薬への切り替えを含めて全体で14日間の投与が推奨されています 。複雑性腎盂腎炎では、38℃以上の発熱がある場合、注射用抗菌薬を3~5日使用し、解熱・症状寛解が得られれば経口薬にスイッチして合計14日間の治療を行います 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/99/11/99_2729/_pdf

 

軽症例では外来での点滴による抗菌薬投与や内服治療で治癒しますが、高熱が持続する重症例では入院治療が必要です 。治療開始から3日程度で効果を確認し、必要に応じてより適切な抗菌薬に変更します 。症状が改善しても処方された薬は医師の指示に従って必ず飲み切ることが重要です 。

腎盂腎炎の合併症とカテーテル管理

腎盂腎炎を適切に治療しない場合、重篤な合併症が発生する可能性があります。最も危険なのは敗血症で、腎臓は血液が豊富に流れる臓器のため、細菌が血液中に侵入し全身に広がることがあります 。敗血症は生命に関わる状態であり、急激な血圧低下や多臓器不全を引き起こすことがあります 。
参考)https://www.okada-urology.com/pyelonephritis/

 

反復する腎盂腎炎により腎機能障害が進行し、最終的に慢性腎不全に移行する場合もあります 。腎不全が進行すると人工透析や腎移植が必要となるため、早期の適切な治療が不可欠です 。
尿道カテーテル留置中の患者では、カテーテルに付着した細菌が常に膀胱内に存在するため腎盂腎炎を発症しやすくなります 。カテーテルに付着した細菌はバイオフィルムを形成し、慢性感染症の原因となります 。尿路結石や前立腺肥大症による尿路閉塞を伴う場合は、カテーテルなどで閉塞を解除し膿の排出を行わなければ治癒しません 。
参考)https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1413101726

 

日本感染症学会による腎盂腎炎の病原体と治療に関する詳細な解説
日本臨床検査医学会による尿路感染症の診断ガイドライン