プロスタンディン軟膏0.003%は、有効成分アルプロスタジル(PGE1)を外用で届け、褥瘡・皮膚潰瘍の「病変局所の循環障害」を改善することで創傷治癒過程を賦活する薬剤です。
添付情報では、本剤は循環障害の改善に加えて「血管新生作用」と「表皮角化細胞増殖作用」により、肉芽形成および表皮形成を促進すると整理されています。
臨床の感覚としては、壊死や感染を“直接片付ける薬”ではなく、「治癒が進むための環境(血流・酸素・細胞増殖の土台)を整える薬」と捉えると誤解が減ります。
参考)https://www.gifu-upharm.jp/di/mdoc/iform/2g/i2713002406.pdf
実際に適用上の注意として、本剤には抗菌作用はなく、潰瘍面を消毒・清拭後に貼付/塗布すること、感染が出たら抗菌薬など適切な処置を行うことが明記されています。
また、壊死組織を積極的に融解する作用はないため、必要に応じて使用前に壊死組織を除去することも注意点です。
意外に見落とされがちなのが「全身影響の可能性」です。角質剥離ラットでは経皮投与後に血漿中濃度が検出され、濃度に応じてCmaxやAUCが増加したことが示されています。
つまり局所薬ではあるものの、“塗る量・皮膚状態・病変面積”によっては系統的作用が理屈上ゼロではない、という前提で安全域を考える必要があります。
効能又は効果は「褥瘡、皮膚潰瘍(熱傷潰瘍、糖尿病性潰瘍、下腿潰瘍、術後潰瘍)」です。
ここで重要なのは、“皮膚潰瘍”の中に原因が異なる複数病態(糖尿病、血管障害、熱傷後など)が混在している点で、創部の評価と並行して原因因子(圧迫、虚血、浮腫、栄養、血糖、感染など)を外さないことがアウトカムを左右します。
熱傷潰瘍については、対象が「熱傷後の二次損傷により生じた熱傷潰瘍」であり、新鮮熱傷に対しては他の適切な療法を考慮するよう注意が記載されています。
理由として、新鮮熱傷に使用すると出血、炎症などが出現するおそれがあるため、と添付情報内で説明されています。
現場では「熱傷」と「熱傷潰瘍」が言葉として混ざりやすいので、いつから潰瘍として扱うか(上皮化遅延・二次損傷の評価)をチームで共有しておくと安全です。
臨床成績の記載では、褥瘡・皮膚潰瘍患者を対象にした二重盲検比較試験で総合効果の有効率が示され、プラセボ群より有効率が高い群があったことが記録されています。
また市販後の使用成績調査では、症例収集数や疾患別の改善率、そして副作用発現率がまとめられています。
研究デザインや評価項目は時代背景の影響も受けるため、現代の創傷管理(デブリードマン、感染制御、オフローディング、圧迫療法、血行再建など)の“どこに本剤を位置付けるか”を言語化すると、医師・看護師・薬剤師間のズレが減ります。
用法及び用量は「症状および病巣の大きさに応じて適量を使用」し、潰瘍周囲から潰瘍部にかけて消毒・清拭後に、1日2回、ガーゼにのばして貼付するか、潰瘍部に直接塗布してガーゼなどで保護します。
ここでの“適量”は現場に委ねられますが、インタビューフォームには使用量分布の考察があり、疾患別に中央値を勘案した「目安」が記載されています(例:褥瘡は1回2〜2.5gなど)。
ただし、同資料でも「潰瘍の大きさは経時的に変化するため、使用量は一定ではない」とされ、増減は病巣サイズと創状態の変化に合わせて行う前提です。
用法用量に関連する注意として、本剤は保存的治療であり「約8週間以上使用しても改善が認められない場合は外科的療法等を考慮する」とされています。
この“8週”は、臨床試験で8週投与の改善率が維持されていたことを根拠として説明されています。
創傷は「ある日突然よくなる」より「指標がじわじわ動く」ことが多いので、医療者同士で共有しやすい評価軸(潰瘍面積、肉芽の質、滲出液量、疼痛、臭気、周囲皮膚、出血しやすさ)を決め、2週ごとに“効いているサイン”を確認する運用が有効です。
また、配合変化(他剤と混合)について、インタビューフォームには複数製剤との混合時の定量低下などが示され、「併用を推奨するものではない」と注意書きがあります。
現場でよくある「同じガーゼ上で2剤を混ぜて塗る」運用は、安定性や効果減弱の観点で説明が必要になり得るため、原則は“混ぜない・順番を分ける・指示を明確化”が安全です。
副作用としては、使用部位の疼痛・刺激感が1%以上、接触性皮膚炎・瘙痒・熱感・落屑・浮腫が1%未満、頻度不明として出血・発赤・滲出液増加などが挙げられています。
さらに重要な基本的注意として「新生肉芽は軽微な刺激で新生血管が損傷し出血しうるので、ガーゼ交換等は十分注意」と明記されています。
そして、褥瘡・皮膚潰瘍の創部では出血傾向があり得るため、本剤で出血傾向が増強した場合は使用中止とされています。
出血の“原因”は2種類に分けて考えると実務が整理しやすいです。
接触性皮膚炎(かぶれ)と、血流改善に伴う発赤・熱感・刺激感は、症状が似る場面があります。
見分けの実務ポイントは「塗布部位の境界が薬剤接触部に一致するか」「周囲皮膚に湿疹様変化や強い痒みが出ているか」「休薬で速やかに改善するか」を短いサイクルで確認することです。
副作用が疑われるときは漫然継続せず、創評価(感染・壊死・摩擦・圧迫・ドレッシング選択)とセットで原因を切り分けると、患者説明も通しやすくなります。
本剤は原則として「大量投与(1日塗布量として10gを超える)を避ける」ことが注意として明記されています。
理由として、経皮吸収が起こり得るため、10g(アルプロスタジルとして300μg)を塗布した場合に吸収量が注射剤の最大用量を超える可能性がある、という計算に基づく説明が示されています。
この記載は、巨大褥瘡や多発潰瘍で“面で塗る”ケースほど刺さるポイントで、病棟や在宅の現場では「1回量」より「1日総量」を記録・共有する運用が安全です。
禁忌には、重篤な心不全、出血している患者、妊婦(妊娠の可能性含む)、成分過敏症既往が挙げられます。
また、併用注意として抗血小板薬(アスピリン等)、血栓溶解薬(ウロキナーゼ)、抗凝固薬(ヘパリン、ワルファリン)などが示され、出血傾向増強のおそれがあるため観察と用量調整に注意するよう記載されています。
“独自視点”として、実務で効くのは「処方監査の言い方」をテンプレ化することです。たとえば、
参考:公式情報(添付文書・IF等へ到達できる入口、改訂日の確認に有用)
PMDA:プロスタンディン軟膏0.003%(医療関係者向け情報の入口)