リーマスの軽度副作用は、承認時臨床試験及び製造販売後使用成績調査において、総症例4,993例中777例(15.6%)に認められています。
最も頻度の高い副作用として、以下が挙げられます。
精神神経系の症状
消化器系の症状
泌尿器系の症状
これらの軽度副作用の多くは、服用開始初期に現れることが多く、体が薬に慣れることで軽減される場合があります。特に手の振戦や下痢は比較的よく見られる副作用で、手の振戦が作業に支障をきたす場合にはβ遮断薬による対症療法も検討されます。
リーマスの最も注意すべき重篤副作用はリチウム中毒です。リチウムは効果を発揮する血中濃度と中毒症状が現れる濃度が近いため、血中濃度の管理が極めて重要となります。
リチウム中毒の初期症状:
進行期の重篤症状。
厚生労働省からもリチウム中毒を含む重篤副作用対応マニュアルが発行されており、医療現場でのリスク管理の重要性が強調されています。脱水(発汗、下痢、嘔吐)、腎機能低下、薬物相互作用などが血中濃度急上昇の要因となるため、これらの状況下では特に注意深い観察が必要です。
リーマスの長期服用では、内分泌系と腎機能への影響が重要な問題となります。
甲状腺機能への影響。
長期服用により甲状腺機能低下症が発症する可能性があります。全日本民主医療機関連合会からも甲状腺機能障害の報告があり、定期的な甲状腺機能検査(TSH、FT3、FT4)が必要です。甲状腺機能低下は疲労感、体重増加、抑うつ症状として現れる場合があり、双極性障害の症状と区別が困難な場合があります。
腎機能への影響。
腎性尿崩症に対しては、原則的にリーマスの減量・中止が必要となりますが、病状によっては継続が必要な場合もあり、水分摂取量の管理と定期的な電解質バランスのチェックが重要です。
適切な副作用モニタリングは、リーマス療法の安全性確保において不可欠です。
血中濃度測定の頻度と目標値。
定期検査項目。
検査項目 | 頻度 | 目的 |
---|---|---|
血中リチウム濃度 | 1-3か月ごと | 治療域維持・中毒予防 |
腎機能(Cr、BUN) | 3-6か月ごと | 腎障害早期発見 |
甲状腺機能(TSH、FT3、FT4) | 6-12か月ごと | 甲状腺機能低下症の検出 |
電解質(Na、K、Cl) | 3か月ごと | 電解質バランスの確認 |
心電図 | 年1回以上 | 不整脈の早期発見 |
患者教育のポイント。
リーマスは多くの薬剤と相互作用を示すため、併用薬の管理は副作用予防において極めて重要です。
血中濃度上昇を招く併用薬。
併用時の対応策。
意外な相互作用として注目すべき点。
カフェインはリチウムクリアランスを増加させるため、コーヒーや緑茶の摂取量変化により血中濃度が変動する可能性があります。また、食塩摂取量の大幅な変化も血中濃度に影響を与えるため、患者の食生活指導も重要な要素となります。
特に高齢者では腎機能低下により薬物代謝が遅延しやすく、より慎重な用量設定と頻回なモニタリングが必要です。医療従事者は、患者の年齢、腎機能、併用薬、生活習慣を総合的に評価し、個別化された安全管理を実践することが求められます。