痛みを訴える患者の約6割は、実は手術より保存療法の方が長期成績が良いというデータがあります。
整形外科的治療とは、運動器(骨・関節・筋肉・腱・靭帯・神経)の障害や疾患に対して行われる医療的介入の総称です。対象となる疾患は非常に広く、骨折・脱臼・腰椎椎間板ヘルニア・変形性関節症・脊柱管狭窄症・スポーツ障害など、日常診療で頻繁に遭遇するものばかりです。
日本整形外科学会の定義では、整形外科は「運動器の機能的改善を目的とした診療科」とされています。つまり「痛みをとる」だけでなく、「動ける身体を取り戻す」ことが本質です。これが基本です。
治療の対象となる患者層も幅広く、小児の先天性疾患から高齢者の変性疾患まで、年齢を問いません。特に65歳以上の高齢者では、変形性膝関節症の有病率が女性で約60%、男性で約40%とされており(日本整形外科学会調査)、外来患者の大多数を占めます。この数字は意外に大きいですね。
| 分類 | 代表疾患 | 主な治療方針 |
|---|---|---|
| 外傷性 | 骨折・脱臼・靭帯損傷 | 固定・手術・リハビリ |
| 変性疾患 | 変形性関節症・椎間板ヘルニア | 保存療法→手術 |
| 炎症性 | 関節リウマチ・感染性関節炎 | 薬物療法・手術 |
| 腫瘍性 | 骨腫瘍・軟部腫瘍 | 切除・化学療法 |
| 先天性 | 側弯症・先天性股関節脱臼 | 装具・手術 |
医療従事者として、この分類を頭に入れておくだけで、初診時のトリアージ精度が大きく変わります。これは使えそうです。
保存療法とは、手術を行わずに症状の改善・機能回復を目指す治療法の総称です。大きく分けると「薬物療法」「物理療法」「装具療法」「運動療法(リハビリ)」の4種類があります。4つが基本です。
薬物療法では、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)が第一選択となることが多いですが、腎機能や消化管への副作用リスクを常に念頭に置く必要があります。特に高齢者では、NSAIDsによる消化管出血リスクが若年者の約3倍とされており、プロトンポンプ阻害薬との併用が推奨されています。厳しいところですね。
物理療法には温熱療法・冷却療法・牽引療法・電気刺激療法などがあります。急性期(受傷後48時間以内)はRICE処置(Rest・Ice・Compression・Elevation)が原則で、慢性期には温熱が適応となります。急性期に温熱を当てると炎症が悪化することもあるため、時期の判断が重要です。
装具療法は、コルセット・膝装具・足底板などを用いて関節を安定させ、疼痛軽減と機能維持を図ります。腰椎椎間板ヘルニアでは、コルセット装着により約70%の患者が保存療法のみで症状改善するというデータがあります(日本脊椎脊髄病学会)。
日本整形外科学会|腰椎椎間板ヘルニアの診療ガイドライン(保存療法の適応と根拠)
手術療法の適応判断は、整形外科的治療の中で最も専門性が求められる部分です。「保存療法を何週間続けても改善しない」という基準は診療科・疾患によって異なり、腰椎椎間板ヘルニアでは通常6〜12週間の保存療法が先行するのが標準です。
手術が優先される緊急適応としては、①馬尾症候群(排尿・排便障害を伴う)、②進行性神経麻痺、③開放骨折・血管損傷の合併、④骨腫瘍の病的骨折リスク、これら4つが代表的です。つまり神経や血管への影響が判断基準です。
代表的な術式を以下に整理します。
術式の選択は患者の年齢・活動性・骨質・全身合併症を総合的に評価して決定します。これが条件です。医療従事者として術前評価の項目を把握しておくと、インフォームドコンセントの質が上がります。
日本整形外科学会|変形性膝関節症の治療(人工関節置換術の適応基準と術後成績)
リハビリテーションは整形外科的治療の「仕上げ」ではありません。治療の主軸です。この認識が医療の質を変えます。
理学療法士(PT)によるリハビリでは、関節可動域訓練・筋力強化・歩行訓練が中心となります。例えば、人工膝関節置換術(TKA)後のリハビリでは、術翌日から荷重訓練を開始するプロトコルが標準となっており、早期離床が深部静脈血栓症(DVT)のリスクを約40%低下させるという研究結果があります。早いほど良いということですね。
作業療法士(OT)は、ADL(日常生活動作)の再獲得を担います。特に上肢の骨折・腱板修復後の患者に対して、食事・更衣・入浴動作の訓練を段階的に進めます。職場復帰(RTW:Return to Work)支援まで見据えた介入が、現代の整形外科リハビリには求められています。
運動器リハビリテーション料の算定には、疾患ごとに標準的算定日数が設定されています。例えば脊椎損傷は150日、四肢の骨折・靭帯損傷は90日が上限の目安(医師の判断で延長可)です。この期限に注意すれば大丈夫です。
日本理学療法士協会|整形外科領域のリハビリテーション実践ガイドライン
一般的な整形外科的治療の解説ではあまり触れられませんが、「運動器連鎖(Kinetic Chain)」の概念は臨床現場で非常に重要です。意外ですね。
運動器連鎖とは、身体の各関節・筋肉・神経が相互に連動して動作を生み出すという考え方です。例えば、足首の底屈制限が膝関節の過負荷を引き起こし、最終的に腰痛につながるというパターンは臨床でよく見られます。「膝が痛い患者の原因が足首にある」ことは珍しくありません。
この概念を理解していると、局所だけ治療しても再発を繰り返す患者への対応が変わります。腰部脊柱管狭窄症の術後に腰痛が再発した患者の約30%で、股関節の可動域制限が原因となっているという報告もあります(整形外科リハビリ研究誌)。
医療従事者として、問診・身体診察の際に「痛みの部位だけでなく、上下の関節の状態を評価する」習慣をつけることが再発予防に直結します。全体を見ることが原則です。
具体的には以下のチェックが有用です。
この視点を持つ医療従事者とそうでない医療従事者では、患者の長期予後に明確な差が出ます。局所だけ見ていては不十分です。整形外科的治療を「部位の治療」ではなく「運動器全体の治療」と捉えることが、質の高いケアの出発点となります。
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