筋固縮(筋強剛、固縮)とは、筋肉が「力が入って抜けない」ように見える状態のうち、他動的に関節を動かしたときに持続する抵抗として評価される筋緊張亢進です。
ここで重要なのは、筋固縮は「筋力低下」や「痛み」そのものではなく、神経学的には筋トーヌス(安静時の筋緊張)の上昇として捉える点です。
錐体外路症状は大脳皮質―大脳基底核ループの障害に由来し、その代表疾患としてパーキンソン病が挙げられます。
錐体外路症状は運動過少(固縮・無動など)と運動過多(振戦・舞踏運動など)に大別され、筋固縮は前者の中核所見です。
臨床で混乱しやすい言葉の整理もしておきます。
筋固縮は、頸部や四肢の関節を他動的に動かしたとき、抵抗が強く感じられることで判明します。
固縮は歯車様固縮と鉛管様固縮に分類され、歯車様固縮は関節屈伸でガタガタとした断続的抵抗を感じ、パーキンソン病に特徴的とされています。
鉛管様固縮は一様な抵抗として触れ、非特異的な固縮と説明されています。
医療従事者としては、「抵抗の質」を言語化して記録できると、経時変化の共有が一気に楽になります。例えばカルテでは、
のように書けると、チーム内で同じイメージを持ちやすいです。
また、固縮単独で患者が困ることもあれば、他の錐体外路症状とセットでADLを崩すこともあります。錐体外路症状の枠組みでは、固縮・無動・振戦はパーキンソン病の三大徴候とされ、2つ以上を有する場合をパーキンソニズムと呼ぶ整理が広く用いられます。
筋固縮は筋トーヌスの診察をしないと評価できないため、基本は他動運動で抵抗を取ります。
頸部や四肢の関節を他動で動かし、抵抗が「一様(鉛管様)」か「断続(歯車様)」かを確認します。
他動運動のコツ(臨床で効く細部)を、実務としてまとめます。
鑑別の要点(最低限、ここは外さない)
錐体外路症状は大脳皮質―大脳基底核ループの障害に由来し、代表的疾患としてパーキンソン病が挙げられます。
その中で固縮は、無動などと並ぶ運動過少症状として位置づけられます。
固縮・無動・振戦はパーキンソン病の三大徴候で、2つ以上を有する場合はパーキンソニズムと総称する整理があります。
臨床で役に立つのは「筋固縮=パーキンソン病」と短絡しないことです。歯車様固縮は“特徴的”ですが、鉛管様固縮は非特異的とされ、薬剤性や全身状態の影響、別病態でも同様の所見になり得ます。
したがって、筋固縮を見たら「いつから」「左右差」「他の錐体外路症状(振戦・無動)」「薬剤歴」「発熱や自律神経症状」を一度に束ねて評価すると、診断とトリアージが速くなります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9633511/
筋強剛(筋固縮)を“緊急サイン”として扱うべき代表が悪性症候群です。
悪性症候群は、主に精神神経用薬の服薬下で発熱・意識障害・錐体外路症状・自律神経症状を主徴とし、治療が遅れると死に至る可能性がある重篤な副作用です。
厚労省資料では、錐体外路症状として筋強剛、振戦、ジストニア、構音障害、嚥下障害、流涎などが挙げられ、筋強剛は程度の軽重も含めてほとんどの症例に認められるとされています。
ここが「独自視点」として、現場の運用に落とし込むポイントです。悪性症候群は“教科書的に高熱とCK高値が揃うまで待つ”と遅れます。
厚労省資料でも、初期症状は特異的でない一方で、精神神経用薬投与後に発熱・発汗、神経症状、自律神経系の急激な変動が複数あれば疑う必要があるとされ、血清CKは1000 IU以下でも稀ではないため診断基準に過度に固執しないよう明記されています。
つまり「筋固縮+発熱っぽい+いつもと違う自律神経(頻脈、血圧変動、発汗)+薬剤歴」が見えた時点で、早期対応に舵を切るのが安全側です。
対応の骨格(医療チームで共有しやすい形)
「意外に見逃される」観察ポイントも、厚労省資料の記述がそのまま武器になります。錐体外路症状は姿位や歩行、構語や摂食・飲水に現れるので、日頃の注意深い状態把握が早期診断に役立つとされています。
言い換えると、病棟や外来での“ちょっとした変化”──歩き方、食事の飲み込み、よだれ、発汗、話し方──が、筋固縮より先に拾えることがあります。
筋強剛は痛みとして自覚され訴えられることもあるため、「筋肉痛っぽい」「体が痛い」という訴えを、感染や整形外科疾患だけでなく薬剤性の可能性にも接続して問診すると見落としが減ります。
有用:悪性症候群の早期発見ポイント、診断基準、治療(ダントロレン等)のまとまった一次資料
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1j03.pdf
有用:錐体外路症状(固縮の定義、歯車様固縮と鉛管様固縮、パーキンソン病との関係)の基礎整理
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E9%8C%90%E4%BD%93%E5%A4%96%E8%B7%AF%E7%97%87%E7%8A%B6