筋固縮とは定義と症状と検査と治療

筋固縮とは何かを、定義・症状・診察(他動運動)・代表疾患(パーキンソン病や悪性症候群)まで医療者向けに整理します。現場で見逃しやすいポイントも押さえ、鑑別と対応ができるようになりますか?

筋固縮とは

筋固縮とは:医療者が最初に押さえる要点
🧠
定義(固縮・強剛)

錐体外路(大脳皮質―大脳基底核ループ)の障害で筋トーヌスが上昇し、関節を他動的に動かしたときの抵抗として評価される所見です。

🖐️
診察の核(他動運動)

本人の「こわばり」の訴えだけでは確定しません。頸部や四肢をゆっくり他動で動かし、抵抗の質(一様か、ガクガクするか)を取ります。

🚨
緊急度が高い状況

発熱・自律神経症状・意識障害を伴う筋強剛は悪性症候群を疑い、原因薬中止と全身管理、CKなどの評価を急ぎます。

筋固縮とは定義:錐体外路と筋トーヌス

筋固縮(筋強剛、固縮)とは、筋肉が「力が入って抜けない」ように見える状態のうち、他動的に関節を動かしたときに持続する抵抗として評価される筋緊張亢進です。
ここで重要なのは、筋固縮は「筋力低下」や「痛み」そのものではなく、神経学的には筋トーヌス(安静時の筋緊張)の上昇として捉える点です。
錐体外路症状は大脳皮質―大脳基底核ループの障害に由来し、その代表疾患としてパーキンソン病が挙げられます。
錐体外路症状は運動過少(固縮・無動など)と運動過多(振戦・舞踏運動など)に大別され、筋固縮は前者の中核所見です。
臨床で混乱しやすい言葉の整理もしておきます。


  • 「固縮(強剛)」は錐体外路の筋緊張亢進を指す用語で、診察で“抵抗”を取る所見です。

    参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12035714/

  • 「こわばり」は患者主観の表現で、筋固縮と一致しないことがあります(例:痛み・不安・過換気で「こわばる」)。
  • 痙縮」は錐体路障害で目立つ速度依存性の抵抗(速く動かすほど強い抵抗)で、固縮とは機序が異なります(鑑別で後述)。

筋固縮とは症状:鉛管様固縮と歯車様固縮

筋固縮は、頸部や四肢の関節を他動的に動かしたとき、抵抗が強く感じられることで判明します。
固縮は歯車様固縮と鉛管様固縮に分類され、歯車様固縮は関節屈伸でガタガタとした断続的抵抗を感じ、パーキンソン病に特徴的とされています。
鉛管様固縮は一様な抵抗として触れ、非特異的な固縮と説明されています。
医療従事者としては、「抵抗の質」を言語化して記録できると、経時変化の共有が一気に楽になります。例えばカルテでは、

  • 「右上肢>左上肢で固縮。手関節~肘で歯車様の断続抵抗」
  • 「四肢に鉛管様の一様抵抗、頸部も同様」

    のように書けると、チーム内で同じイメージを持ちやすいです。


また、固縮単独で患者が困ることもあれば、他の錐体外路症状とセットでADLを崩すこともあります。錐体外路症状の枠組みでは、固縮・無動・振戦はパーキンソン病の三大徴候とされ、2つ以上を有する場合をパーキンソニズムと呼ぶ整理が広く用いられます。

筋固縮とは検査:他動運動の診察と鑑別(痙縮との違い)

筋固縮は筋トーヌスの診察をしないと評価できないため、基本は他動運動で抵抗を取ります。
頸部や四肢の関節を他動で動かし、抵抗が「一様(鉛管様)」か「断続(歯車様)」かを確認します。
他動運動のコツ(臨床で効く細部)を、実務としてまとめます。


  • 速度を一定に:固縮は比較的一定の抵抗として出やすく、痙縮は速度依存性が強いので、まず“ゆっくり一定”で触れる。
  • 患者の随意収縮を外す:緊張・痛み・寒さで患者が力みやすいので、「力を抜いてください」を繰り返し、呼吸に合わせてゆっくり動かす。
  • 近位と遠位を分ける:肩・肘・手関節、股・膝・足関節で所見が違うことがあるため、どの関節で強いかを残す。
  • 左右差を必ず書く:パーキンソン病では左右差が診断・経過のヒントになりやすい(現場感として重要)。

鑑別の要点(最低限、ここは外さない)

  • 痙縮:速度依存性、腱反射亢進や病的反射など錐体路徴候を伴いやすい。
  • 筋固縮:速度依存性が比較的乏しく、他の錐体外路症状(振戦、無動など)と並ぶことが多い。​
  • 関節由来の硬さ:変形性関節症、拘縮、疼痛性防御で「硬い」ことがあるため、可動域制限の終末感や圧痛、炎症所見も併せて評価する。

筋固縮とは原因:パーキンソン病と錐体外路症状

錐体外路症状は大脳皮質―大脳基底核ループの障害に由来し、代表的疾患としてパーキンソン病が挙げられます。
その中で固縮は、無動などと並ぶ運動過少症状として位置づけられます。
固縮・無動・振戦はパーキンソン病の三大徴候で、2つ以上を有する場合はパーキンソニズムと総称する整理があります。
臨床で役に立つのは「筋固縮=パーキンソン病」と短絡しないことです。歯車様固縮は“特徴的”ですが、鉛管様固縮は非特異的とされ、薬剤性や全身状態の影響、別病態でも同様の所見になり得ます。

したがって、筋固縮を見たら「いつから」「左右差」「他の錐体外路症状(振戦・無動)」「薬剤歴」「発熱や自律神経症状」を一度に束ねて評価すると、診断とトリアージが速くなります。


参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9633511/


筋固縮とは独自視点:悪性症候群の筋強剛と現場の見逃し

筋強剛(筋固縮)を“緊急サイン”として扱うべき代表が悪性症候群です。
悪性症候群は、主に精神神経用薬の服薬下で発熱・意識障害・錐体外路症状・自律神経症状を主徴とし、治療が遅れると死に至る可能性がある重篤な副作用です。
厚労省資料では、錐体外路症状として筋強剛、振戦、ジストニア、構音障害、嚥下障害、流涎などが挙げられ、筋強剛は程度の軽重も含めてほとんどの症例に認められるとされています。
ここが「独自視点」として、現場の運用に落とし込むポイントです。悪性症候群は“教科書的に高熱とCK高値が揃うまで待つ”と遅れます。


厚労省資料でも、初期症状は特異的でない一方で、精神神経用薬投与後に発熱・発汗、神経症状、自律神経系の急激な変動が複数あれば疑う必要があるとされ、血清CKは1000 IU以下でも稀ではないため診断基準に過度に固執しないよう明記されています。

つまり「筋固縮+発熱っぽい+いつもと違う自律神経(頻脈、血圧変動、発汗)+薬剤歴」が見えた時点で、早期対応に舵を切るのが安全側です。

対応の骨格(医療チームで共有しやすい形)

  • 原因医薬品を速やかに中止する(軽微なら段階的中止も選択肢)とされています。​
  • 可能な限り早期に血液・生化学的検査を実施し、CK高値や白血球増多などを含めて追跡します。​
  • 全身状態に合わせて循環・呼吸のモニタリング、体液・電解質補正、体表冷却などの全身管理を行います。​
  • 薬物療法として筋弛緩薬ダントロレンナトリウムが第一選択薬で、適応があるとされています。​

「意外に見逃される」観察ポイントも、厚労省資料の記述がそのまま武器になります。錐体外路症状は姿位や歩行、構語や摂食・飲水に現れるので、日頃の注意深い状態把握が早期診断に役立つとされています。

言い換えると、病棟や外来での“ちょっとした変化”──歩き方、食事の飲み込み、よだれ、発汗、話し方──が、筋固縮より先に拾えることがあります。

筋強剛は痛みとして自覚され訴えられることもあるため、「筋肉痛っぽい」「体が痛い」という訴えを、感染や整形外科疾患だけでなく薬剤性の可能性にも接続して問診すると見落としが減ります。

有用:悪性症候群の早期発見ポイント、診断基準、治療(ダントロレン等)のまとまった一次資料
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1j03.pdf
有用:錐体外路症状(固縮の定義、歯車様固縮と鉛管様固縮、パーキンソン病との関係)の基礎整理
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E9%8C%90%E4%BD%93%E5%A4%96%E8%B7%AF%E7%97%87%E7%8A%B6