2020年4月に厚生労働省から重要な安全性情報が発出され、多くの統合失調症治療薬においてレビー小体型認知症患者への使用が新たに禁忌となりました。
具体的に禁忌となった薬剤は以下の通りです。
レビー小体型認知症患者では、ドパミン受容体拮抗作用を持つ抗精神病薬の使用により、パーキンソニズムの悪化、意識レベルの低下、嚥下障害などの重篤な副作用が報告されています。これらの症状は時として致命的となる可能性があるため、厳格な禁忌とされています。
代替療法としては、レビー小体型認知症の行動・心理症状(BPSD)に対しては以下のアプローチが推奨されます。
H2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)は、認知症患者において特に注意が必要な薬剤群の一つです。これらの薬剤は胃酸分泌抑制作用が主効果ですが、脳内のH2受容体にも作用し、せん妄や認知機能低下を引き起こす可能性があります。
H2ブロッカーによるせん妄の機序。
高リスク患者の特徴。
臨床症状。
代替療法の検討。
厚生労働省の「高齢者の医薬品適正使用の指針」では、H2受容体拮抗薬について「高齢者ではせん妄や認知機能低下のリスク上昇があり、可能な限り使用を控える」と明記されています。
抗コリン薬は認知症患者において最も注意すべき薬剤群の一つです。アセチルコリンは記憶・学習に重要な神経伝達物質であり、アルツハイマー型認知症では早期からアセチルコリン作動性神経の障害が起こることが知られています。
抗コリン作用を持つ主な薬剤。
認知機能への影響。
長期間の抗コリン薬使用により以下の認知機能障害が報告されています。
疫学的エビデンス。
2015年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された大規模研究では、抗コリン薬を3年以上服用した高齢者の認知症発症リスクが1.5倍に増加することが報告されました。この研究では3,434名の65歳以上の参加者を平均7.3年間追跡し、抗コリン負荷が高いほど認知症リスクが増加することが示されました。
代替療法と対策。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬・抗不安薬は、認知症患者において多面的なリスクを有する薬剤群です。これらの薬剤は中枢神経系を抑制し、認知機能低下、転倒リスク増加、依存形成などの問題を引き起こす可能性があります。
認知機能への長期的影響。
長期間の使用により以下の認知機能障害が報告されています。
高リスク因子。
代替療法の選択。
日本老年医学会の「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」では、75歳以上の高齢者において「特に慎重な投与を要する」薬剤として位置づけられています。
認知症患者への薬物療法では、画一的なアプローチではなく、患者個々の状況に応じた個別化医療が重要です。認知症のタイプ、進行度、併存疾患、身体機能、社会的背景を総合的に評価し、最適な治療戦略を構築する必要があります。
認知症タイプ別の薬物選択指針。
アルツハイマー型認知症。
レビー小体型認知症。
血管性認知症。
薬物動態学的考慮事項。
腎機能評価の重要性。
多くの薬剤が腎排泄されるため、クレアチニンクリアランスの正確な評価が必要です。
肝機能評価。
薬物相互作用の管理。
認知症患者では多剤併用が常態化しており、以下の相互作用に特に注意が必要です。
定期的なモニタリング体制。
認知症患者への薬物療法成功の鍵は、エビデンスに基づいた薬剤選択と継続的な評価・調整にあります。患者・家族との十分な話し合いを通じて、治療目標を明確化し、QOL向上を最優先とした治療方針の決定が重要です。
厚生労働省の認知症治療薬に関する詳細な安全性情報
リバスチグミン貼付剤の適正使用に関する詳細な添付文書情報
告白します、僕は多くの認知症患者を殺しました。 まちがいだらけの日本の認知症医療