帯状疱疹ワクチンを「念のため」打つと、患者が重篤な感染症を発症するリスクがあります。
アニフロルマブ(商品名:サフネロー)は、2021年9月に日本で承認された、I型インターフェロン受容体サブユニット1(IFNAR-1)を選択的に阻害する完全ヒト型モノクローナル抗体です。 効能・効果は「既存治療で効果不十分な全身性エリテマトーデス(SLE)」に限定されており、ステロイドや免疫抑制薬による治療でも疾患活動性が残存する患者が対象となります。ryumachi-jp+1
原則として、投与対象は抗核抗体または抗dsDNA抗体が陽性のSLE患者です。 疾患活動性の指標はBICLA(BILAG-based Composite Lupus Assessment)スコアで評価され、承認根拠となったTULIP-2試験では52週時点のBICLA反応率がサフネロー群47.8%に対しプラセボ群31.5%と、両群差16.3%(P=0.001)の有意な改善が示されました。passmed.co+1
処方できる医師は限られています。 日本リウマチ学会の適正使用手引きでは、①リウマチ専門医または膠原病リウマチ内科専門医かつSLE治療経験あり、②難病指定医を取得しSLE治療経験あり、③上記の医師と連携の上でSLE治療を行っている、④上記の医師の直接指導下でSLE治療を行っている、のいずれかの条件を満たす医師のみが投与できると定められています。
参考)https://www.ryumachi-jp.com/publish/guide/anifrolumab/
なお、18歳未満の患者への投与は有効性・安全性が確立されていないため、現時点では推奨されません。 活動性かつ重症のループス腎炎、または中枢神経ループスを有するSLE患者に対する有効性・安全性も、臨床試験で検討されていない点に注意が必要です。
用量は固定です。 通常、成人にはアニフロルマブ(遺伝子組換え)として300mgを4週間ごとに1回、30分以上かけて点滴静注します。体重や腎機能による用量調整は不要であり、この「用量調整不要」という点が、従来の免疫抑制療法と大きく異なる特徴の一つです。carenet+1
投与時間が30分「以上」という点は厳守が必要です。 投与速度を速めると注入に伴う反応(infusion reaction)のリスクが高まります。添付文書では、10%以上の頻度で注入に伴う反応が発現すると記載されています。 点滴開始後は患者の状態を継続的にモニタリングすることが実臨床では重要です。ubie+1
2026年2月19日、アストラゼネカはサフネロー皮下注オートインジェクター(120mg)の日本での承認取得を発表しました。 皮下注の用法は1回120mgを1週間ごとに皮下注射する形式で、点滴静注に加えた新たな選択肢となります。 通院回数が月4回(皮下注)から月1回(点滴静注)相当に変わる可能性があり、患者の治療継続性に大きく影響します。iyakutsushinsha+1
皮下注の承認により、将来的には在宅自己注射への道も開かれつつあります。 海外では既に在宅自己注射が可能となっており、日本の臨床現場でも患者のQOL向上と社会生活維持へのさらなる貢献が期待されています。passmed.co+1
以下の表に点滴静注と皮下注の違いをまとめます。
| 項目 | 点滴静注 | 皮下注 |
|---|---|---|
| 用量 |
300mg/回 |
120mg/回 |
| 投与間隔 | 4週ごと | 1週ごと |
| 投与時間 |
30分以上 |
短時間(皮下) |
| 承認時期 | 2021年9月 |
2026年2月 |
| 自己注射 | 不可 | 将来的に可能性あり |
禁忌は3つが原則です。 ①本剤の成分に対し過敏症の既往歴がある患者、②重篤な感染症の患者、③活動性結核の患者、のいずれかに該当する場合は絶対に投与してはいけません。
意外に思われるかもしれませんが、重篤な感染症が「ある」状態での投与は禁忌であり、単に感染症リスクが高い患者は「慎重投与」の区分になります。 慎重投与の対象には、感染症が疑われる患者、結核既往歴を有する患者、HBV感染者(キャリアおよび既往感染者)が含まれます。 特にHBVキャリアへの投与では、B型肝炎ウイルス再活性化による肝炎が起きるおそれがあり、日本リウマチ学会の「B型肝炎ウイルス感染リウマチ性疾患患者への免疫抑制療法に関する提言」および日本肝臓学会の「B型肝炎治療ガイドライン」を参考に対処することが求められます。
他の生物製剤との併用は禁止です。 安全性が検討されていないため、ベリムマブなど他の生物製剤と組み合わせることは避けなければなりません。また、タクロリムスまたはシクロホスファミドとの併用についても、有効性・安全性が確立されていないと明記されています。
I型インターフェロン製剤との併用も禁忌に準じた扱いです。 アニフロルマブはI型インターフェロン受容体に結合して作用を阻害するため、I型インターフェロン製剤と組み合わせると両剤の効果が減弱するおそれがあります。 処方時に併用薬を必ず確認する習慣が重要です。
副作用で最も頻度が高いのは上気道感染です。 添付文書に基づき10%以上の頻度で報告されている副作用には、上気道感染(上咽頭炎・咽頭炎を含む)および注入に伴う反応があります。ubie+1
重大な副作用として添付文書が特記しているのは2項目です。
参考)アニフロルマブ(サフネローⓇ)では、どのような副作用がみられ…
帯状疱疹の発現リスクには特に注意が必要です。 臨床試験全体を通じて、帯状疱疹を含むヘルペスウイルス感染症が投与群で多く認められています。I型インターフェロンが本来、ウイルス感染の制御に関与しているため、これが阻害されることでウイルスの再活性化リスクが上昇すると考えられています。
悪性腫瘍との関係は現時点では不明です。 第II相・第III相試験の併合解析では、悪性腫瘍の発現率は300mg群0.7/100人・年、プラセボ群0.7/100人・年と差がなかったものの、投与患者への長期的な観察が引き続き求められます。
副作用管理の実践として、投与前スクリーニングで以下を確認しましょう。
投与中に生ワクチンを打つことは禁忌です。 帯状疱疹(水痘)・麻疹・風疹・おたふくかぜ・BCGなどの生ワクチンは、アニフロルマブ投与中に接種してはなりません。医療従事者の中には「帯状疱疹対策に弱毒生ワクチンを先に接種しておけば安心」と考える方もいますが、添付文書では投与中止後も「一定の間隔を空けることが望ましい」と明記されています。
不活化ワクチンは接種可能です。 帯状疱疹の不活化ワクチン(シングリックスなど)は生ワクチンに該当しないため、投与中でも検討の余地があります。ただし、接種に際しては併用薬剤・年齢・肝腎機能などの患者背景を考慮することが条件となります。
妊娠後期の投与にも注意が必要です。 妊娠後期にアニフロルマブを投与した場合、出生した乳児に生ワクチンを接種すると感染症のリスクが高まる可能性があります。これは免疫グロブリンが胎盤を通過し乳児に移行するためと考えられており、乳児への生ワクチン接種では本剤の投与からの間隔を十分に確保する必要があります。
妊婦・授乳婦については「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する」という原則を守ります。 SLE患者は妊娠可能年齢の女性が多く(男女比1:9)、このルールを把握することが妊娠管理上のリスク低減に直結します。passmed.co+1
1バイアルあたりの薬価は96,068円です。 点滴静注300mgを4週ごとに継続投与した場合、薬剤費だけで年間約125万円(96,068円×13回)に上る計算になります。これは東京都の最低賃金換算で約800時間分の労働に相当する規模であり、処方にあたっては医療費の自己負担や高額療養費制度の活用についても患者に情報提供することが臨床上の重要な役割となります。
参考)添付文書情報 検索結果(医療用医薬品)|iyakuSearc…
SLEは難病指定疾患(指定難病49番)であるため、患者は難病医療費助成制度を申請できます。 重症度分類によっては自己負担の上限が月額1万円以下に軽減されるケースもあり、適切な書類作成と難病指定医との連携が患者の経済的負担軽減につながります。これが知らないと損する大きなポイントです。
市販後調査として全例調査が義務付けられており、観察期間は52週間、対象は600例です。 全例調査の期間中は、投与対象患者全例の情報を製造販売後に収集・報告することが求められており、医療現場では症例報告書(CRF)の適切な記入と提出が必須です。
参考)SLEに待望の治療薬アニフロルマブが発売/アストラゼネカ|医…
つまり処方は「確認・記録・報告」の三点セットが条件です。 添付文書・適正使用手引き・全例調査の要件を把握した上で投与を行うことが、医療従事者としての責務と言えます。
アニフロルマブの添付文書に関する最新情報は以下の公式リソースで確認できます。
適正使用手引き(日本リウマチ学会):ワクチン制限・禁忌・有害事象管理の詳細が記載されています。
全例市販後調査のためのアニフロルマブ適正使用の手引き|日本リウマチ学会
サフネロー承認審査結果報告書(PMDA):薬価算定根拠や製造販売後調査の条件が記載されています。
サフネロー点滴静注300mg 審議結果報告書|PMDA
皮下注承認(2026年2月)に関するニュース:新投与経路の詳細と承認の背景が確認できます。
サフネロー皮下注 日本で全身性エリテマトーデスでの承認取得|医薬通信社